夕学レポート
2012年06月18日
子供と一緒に夢を見ている。 石川勝美さん
開講前の控室、石川勝美氏に全米プロの話題を振ってみた。
石川遼選手は、初日1アンダー15位と健闘したが、2日目に崩れて、予選落ちに終わったばかりである。
「いまの遼は、あの程度ですよ、初日が良すぎただけです。」
勝美氏は、即座にそう返答された。それは達観というよりも、はるか遠くを見透したうえで、今はひたすら藻掻く時期だと割り切っているかのようだった。
石川遼選手は、1年半ツアーで勝っていない。最後の勝利は2010年11月の三井住友VISAマスターズのことだ。
勝美氏は、この勝利の後に、一冊の本を息子に渡したという。
森鴎外の『高瀬舟』。読んで欲しかったのは「高瀬舟」ではなく、その中に収められた「杯(さかずき)」という短編小説だった。
「わたくしの杯は大きくはございません。それでも、わたくしはわたくしの杯で戴(いただ)きます」
主人公の女性が、毅然とした態度で、そう述べる。
そのころの遼選手は、外国人選手のショットやスイングの真似ばかりしていたという。
真似をいくらしたところで遼はウッズやミケルソンにはなれない。勝美氏にはそう思えた。
しかし、言葉で言うのではなく、それまでもそうしてきたように、一冊の本を差し出すことで、思いを告げたのである。
人によって、能力に違いはある。しかし、持って生まれた能力を変えることも出来ない。
自分の能力(杯)でやっていくしかないのだ、と。
「やっぱり…」
読んで欲しかったのは、「杯」だと告げられた遼選手は、そう答えたという。
父は戒めを言葉にせずに、本に託した。
子は父の戒めをすぐに理解した。
何とも気持ちのよい親子である。
幼い頃の遼少年は、アトピー性のぜんそくに悩んだという。
夜になると激しく咳き込み、6種の薬を常用する時期もあった。
けっして器用な子供ではなかった。
プラモデルづくりも、野球も上手くはなかった。
水泳は得意だったが、県大会では最下位に終わる。
ゴルフだけは手を抜かなかった。
4歳で初めてクラブを握って以来、父子でのめり込んでいった。
ゴルフというスポーツは、運動神経が邪魔になることもあるという。教えるとすぐに出来るようになる子は、型が身につかない。
遼少年のように、憶えるのに苦労して、何度も練習して身につけた型は忘れない。
愚直な練習が財産になる
360日/年練習場通った。練習場は頼み込んでタダに、コースは子供料金(2千円~3千円)、勝美氏はプレーせずに付き添った。
塾通いと同じ程度の費用で、ゴルフに打ち込んだ。
初ラウンド(小学校二年)のスコアは132だったとのこと。今では、100を切る子供もいる中では目立つスコアではない。
しかし、愚直な練習を続け、めきめきと腕を上げた。
小学校四年でパープレー、小5で全国小学生大会で優勝、小6の連覇では、8アンダーで回った。
遼少年は、やがて「マスターズ優勝」という夢を口にし始めた。
勝美氏夫妻は、子供の夢を応援しつつも、子供をゴルフ馬鹿にはしなかった。
全てをゴルフに結びつけながら、勉強、礼儀作法、言葉使いの重要性を説いた。
英語も遼選手が自分の意志で始めたという。
遼選手には専属コーチはいない。
その代わり、ジャンボ尾崎、中島常幸らが、折にふれアドバイスをくれる。
素直な少年には誰だって応援したくなるものだ。
「子供を育てながら育てられている」
「子供と一緒に夢を見ている」
勝美氏は、何度かそんな言葉を口にした。
「50歳でマスターズに勝つと考えれば、20歳のいまは、まだ道程の半分にも来ていない」
「そう考えると私は幸せ者です」
改めて思う。
何とも気持ちのよい親子である、と。
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~稲盛経営哲学を出発点として~
劉 慶紅
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
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稲盛経営哲学に学びながら、人間性を尊重し、利潤追求と社会貢献の統合をめざす経営学理論を構築する、新論が真論となり、不易流行の経営学として結実することを目指して。
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『VIVANT』とテレビ局社員
福澤 克雄
(株)TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部、演出家・映画監督
私にとっての道は、TBSにありました。『VIVANT』は、同じような夢を持つ若者たちの道標になってほしい、そんな思いも込めてチャレンジした作品です。日本のドラマ界、映画界を目指す皆様、夢はあるけど方法がわからない皆様の一助になればと願っております。
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