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夕学レポート

2013年07月05日

人生の北極星  宮本亜門さん

photo_instructor_658.jpg8年振りとなる宮本亜門さんの夕学。
パッション、ユーモア、温かさ、頭の回転の速さ どれをとっても超一流。講演者としても卓越したパフォーマーである。
規格外であることを強みに転化してきた人
亜門さんをひと言で表現するとしたら、そう言えるのではないか。
亜門さんのお話を聞くと、御両親もどちらかと言えば規格外の人であったようだ。 
慶應を卒業後、紆余曲折を経て新橋演舞場前で喫茶店を経営するお父上。
SKDダンサーとして舞台に立っていたというお母上。
ふたりとも子供愛もたっぷりで、亜門さんには、規格外のコップが溢れるくらいの愛情量を注いで育てたようだ。
父は、母校の慶應への入学を期待し、母は、3歳から藤間流の踊りを習わせた。
規格外の両親を受けて、亜門少年も規格外に育った。
子供の頃の趣味は毛虫採集。好きな昔話は楢山節考。
中学校では、お茶や仏像巡りに没頭した。
多感な高校時代は反動が訪れた。
自分が他人と違うことを過剰に意識し、引きこもりになった。
ただし、このままで終わってしまったら、普通の引きこもり少年である。
亜門少年の場合、立ち直り方も規格外だったようだ。
慶應病院の医師のカウンセリングをきっかけに自信を取り戻した亜門少年は、演劇の世界に飛び込む。
カウンセリングで気づいたことは、「新しいこと、面白いことを多くの人に伝えたい」という願望が自分の中にあるということだったようだ。演劇は、その願望を叶えるフィールドとして最高の場所だった。
出演者、振付師を経てロンドン、ニューヨークに留学し演出家としてデビューを果たす。
蛹が蝶に変わるように、劇的な変態を見せたということか。
以降の活躍は多くの人々が知るところである。


亜門さんが「人生の北極星」という表現を使って紹介してくれた人生の目的は、規格外で生きてきたことを強みに転化したから生まれたのではないか
「新しくて見たことのないワクワクを発見、創作し、多くの人に届けたい」
規格外であるということは、普通の人が見えないものが見える、気づかない面白さを発見できる、思いつかないような新たな組み合わせに挑戦できる、ということでもある。
それが亜門さんのクリエイティブの源泉になった。
規格外だからこそ、多様な人を受け入れることができる。さまざまな意見を引き出すことができる。眠っている可能性に気づいてあげることができる。
それが亜門さんのコミュニケーション哲学になった。
規格外を愛する亜門さんにとって、精神をリセットできる場所は「沖縄」だという。沖縄は、日本の風土と慣習にとらわれない規格外の土地である。
「沖縄は”ものさし”が違う! そこがたまらなくいい!」
亜門さんが、沖縄の魅力をそう表現する。
違いがあることを面白がり、ぶつけ合い、何かを作り出す。そのプロセスで起きる軋轢や衝突も丸ごと楽しんでしまう。
それでも疲れたら沖縄の”ものさし”に触れに行く。
宮本亜門さんは、そんな人のようだ。
世界の常識はこうだ、とスタンダードを押し付けてくる人には辟易とする。
日本は素晴らしい、と抽象的精神論を振りかざすだけの人は哀しい。
亜門さんが、世界で活躍できる所以がわかったように思う。

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