夕学レポート
2005年11月16日
心のコップをたてる 原田隆史さん 「カリスマ教師が語る人材開発論」
きょうの原田先生の分かりやすいお話と対極にあるような理屈っぽい始まりで申し訳ないのですが、私の好きなコンセプトに「Reflective Practitioner(反省的実践家)」というのがあります。様々な領域の優れた実践者がどのように行動の中でその知識を発揮しているのかを説明する概念ですが、読んで字のごとく「優れた実践家は、ある行動の結果を自分自身で内省して、意味づけや再整理を行い、次の行動にあたっては新たな知識に再結晶することができる」という含意です。原田先生の講義を聴きながら「こういう人のことをReflective Practitioner(反省的実践家)と言うのだろうなあ」と考えていました。
原田先生の話には、自身の20年間の教師生活を通して培った「経験からの学び」と優れたスポーツ選手や多くの経営者から得た「他者からの学び」、書籍やセミナーを通しての「理論からの学び」の3つの学びを、自分が直面している問題状況と関連づけながら、自分のものにしてきた思考の変遷が見てとれたような気がしました。講演の中で、「人間の成長は経験の数ではなく、経験の乗り越え方で決まる」という言葉を紹介されましたが、社会人にとっての真の学びの見本を見せていただいたと思います。
個人的な成功体験に終わらない普遍性と机上の空論とは明らかに異なる説得力が一杯につまった、それでいてシンプルで分かりやすい講演でした。
個人的には「心のコップをたてる」という話が印象に残りました。つい先日も慶應MCCの受講者ネットワークの皆さんが開催した勉強会で、大学生を対象にしたキャリア教育についての議論がありました。ニートやフリーター問題を論じる際に、若者の就業意識の希薄化が問題になります。なんとか働くことに意欲を持って欲しいという思いを込めて、多くの大学でキャリア教育が開講されています。ところが、これに対する学生の反応は、就業意欲を明確に持った人は前向きに取り組み、意識が希薄な人はのれんに腕押し状態という二極化現象が顕著だとのこと。要は「心のコップがたっていない」と何をやっても反応しないということです。これと同じ現象は企業組織の中でも散見されることですよね。何を言っても馬耳東風、面従腹背の人達はいるものです。
原田先生は、「心のコップをたてる」には、ルールではなく、オーラやムードが必要であること。そしてオーラやムードは「主体変容」「率先垂範」「ハンズオン指導」「本気のすさみ除去」という4つのアプローチで作り上げることが出来ると喝破しました。自分自身が変わり、自らやってみせて、嫌がる仕事を引き受け、小さな障害をひとつひとつ取り除いていくこと、と書いてしまえば簡単でしょうが、汚物のついたトイレ掃除を毎日続けるのが至難の業であることは間違いありません。そしてそれを実践してきた原田先生に紛れもないオーラがあったことも会場にお越しの方にはよくおわかりだったと思います。
会場一杯にオーラを振りまきながら、新幹線の時間ギリギリまで皆様と名刺交換をされたあと、「また今度呼んでください」という有り難い言葉を残して、爽やかに去って行かれました。
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