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夕学レポート

2015年11月19日

人の心を動かす”テクニック”だけでない大事なこと|佐々木圭一さん

photo_instructor_785.jpeg2013年に発売されて話題となった『伝え方が9割』。コミュニケーションに悩む多くの人々同様、私も発売直後のこの本を手に取り、大いに勉強させてもらった1人だ。
「『ノー』を『イエス』に変える技術」というタイトルの本講演では一体どんなテクニックを授けていただけるのか、受講を申し込んだ数ヶ月前から、この日を楽しみにしていた。
開演時刻に颯爽とあらわれた佐々木圭一さんは、舞台中央までまっすぐ進み、まずは深々とおじぎしてから話を始めた。
夕学五十講を含め、多くの講演会やセミナーに参加しているが、こんなに丁寧なおじぎからはじまる講演には出会ったことがない。さらに、スリムな見た目にキビキビとした身のこなし。佐々木さんの第一印象は「すこぶる感じがいい人」だ。


そんな佐々木さんの第一声は、「忙しいなか集まってくださったみなさんの120分を、とても貴重だと思っています。この貴重な時間をいただいたからには、ただ『おもしろかった』ではなく、明日からでもすぐに使えるヒントをお伝えできるような講演にしようと思っています!」という熱い宣言。「これも『伝え方』のテクニックなのかしら?」という思いが一瞬頭をよぎるも、それ以上にワクワク感が高まる。

伝え方はセンスではない。技術だ

講演中、佐々木さんは何度も「『伝える力』は特別な人だけに与えられた才能ではない。いくつかのポイントをつかむことで、誰でも身につけられる。学ぶことができる」と語った。そして、「伝え方」によって相手に与える自分の印象が変わり、もしかしたら人生を左右する可能性がある、とも。
このメッセージを聴いて、以前、夕学五十講で受講した講演を思い出した。グッドデザインカンパニーの水野学さんだ。著書の『センスは知識からはじまる』をベースとした内容だったが、水野さんも「デザインはセンスではない」と繰り返し語っていらしたのが強く印象に残っている。
佐々木さんも水野さんも「センス」というあやふやな言葉に逃げることなく、「なぜそうなるのか」「どうしたら問題が解決するのか」を理論に落とし込むことで、自分の仕事や生活を向上させている。慌ただしい日常に流されてその場をしのぐだけでなく、時に立ち止まって知識を棚卸ししたり整理する姿勢に、あらためて感銘を受けた。

空気づくりの大切さ

今回の講演のうち、半分近い時間は受講生によるワークにあてられていた。最初は自己紹介タイム。自分の座席に近い人とペアを組んで自己紹介をしなさい、というお題が与えられた。
正直言うと、私はこういうワークが苦手だ。だが仕方ない。前に座っていた優しそうな女性とペアを組み、お題のままに自己紹介をおこない、さらに続けて「相手を褒める」というワークをこなす。
結局、講演終了までにいくつかのペアワークがおこなわれ、ワークとワークの合間には受講者の挙手による発表タイムが設けられた。発表タイムは最初こそ緊張感が漂っていたが、いつの間にか争うように手が挙がるようになった。また受講者のリアクションも積極的で、回答に対する感嘆の声や笑いも起こるなど、約300人の会場は一体化。最初は初対面の人とのやりとりに対する苦手意識が先立っていた私も「次の発表タイムには挙手してみようかな」と思い始める始末。完全に佐々木さんのペースにはまってしまった。
広い会場でワークがこれほど盛り上がったのは、佐々木さんの「空気づくり」が功を奏しているのは間違いない。でも、ここは「空気」などというあいまいな表現でごまかさず、「なぜワークが盛り上がったのか」具体的な理由を考えてみたい。
まずは、佐々木さんご自身が終始「ハキハキ」「キビキビ」という表現がピッタリの立ち居振舞いを続けておられたこと。発表者へのプレゼントを渡すのに、佐々木さん自らステージを下り、発表者の元まで走って向かわれるのには驚いた。プレゼントを渡すと、その場で「拍手!」と会場に呼びかける。登壇者(リーダー)が快活に振る舞うことで、会場もつられて元気になるのだ。これはちょっとした発見だった。

全ては相手の立場に立って

言葉による「伝え方」を期待して参加した本講演だったが、全編をとおして私がもっとも強く感じたのは佐々木さんのサービス精神であり、相手の気持ちを慮ることの大切さだった。相手の立場に立って振る舞い、相手を尊重する心がけこそが、「『ノー』を『イエス』に変える技術」の根底を支えているのだろう。
冒頭の宣言どおり、たくさんのテクニックが散りばめられた講演だったのは間違いなかったが、それ以上に、佐々木さんご自身をとおしてコミュニケーションの基本を教えていただいた2時間だった。

千貫 りこ

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