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夕学レポート

2016年12月13日

人生は感謝を見つける旅である

空前の落語ブームだと言われる。夏にはビジネス誌が落語特集を編むほどである。現在、落語家の人数は800人。過去最大の規模だという。
日本の伝統芸能は世襲制が中心なので、落語界も二世、三世が多いのかと思っていたが、柳家花緑師匠によれば、世襲落語家はせいぜい30人程度。実は実力主義の世界のようだ。
確かに、これまで夕学に登壇いただいた落語家(柳家喬太郎金原亭馬生春風亭一之輔)は世襲落語家ではなかった。
photo_instructor_840.jpgそんな中で、花緑師匠は、落語界初の人間国宝 五代目柳家小さんのお孫さんにあたる。飛びっ切りの血筋である。しかも入門からわずか7年、戦後最年少の22歳で真打ちに昇進したという超実力派でもある。
45歳にして芸歴30年。古典から新作までなんでもこなし、落語界を背負って立つ存在の一人といえるだろう。
講演のタイトルは「笑いと感謝」。それが、花緑師匠がいま思うことだという。
「笑い」というのは落語の効能と言っていいだろう。夕学にも登壇された筑波大名誉教授の村上和雄先生の研究を引き合いにだして話してくれた。
村上先生が吉本興業との共同研究で明らかにした「お笑いを聞くと糖尿病患者の血糖値が改善する」というユニークな研究結果である。
「笑い(落語)は身体に良い」のである。


「感謝」というキーワードは、花緑師匠の人生訓のようなものかもしれない。
どこまでも自分の心に素直になる。周囲を気にせずに、自分の好きなこと、やりたいことに目を向けて生きる。それをかなえてくれるあらゆる人、もの、ことに感謝する。そんな精神の順回転を心がけようとメッセージだと理解した。
慶應SDM教授の前野隆司先生は、幸福学研究の中で幸福になるための条件を次のように述べている。
「自己実現と成長」
「つながりと感謝」
「楽観性」
「人の目を気にしないこと」
私流に解釈すれば、自分を磨く、人とつながる、ポジティブに考える、他者に惑わされない。 ということだと思うが、花緑師匠の落語家人生と驚くほどシンクロしている。
落語は「笠碁」を披露していただいた。囲碁をテーマにした人情噺。古典落語の名作のひとつで、五代目小さんも得意としていたネタである。
以前、馬生師匠で聴いた演目だったが、ずいぶんと印象が違った。聞けば、中盤と最後のサゲは花緑バージョンに変更してるのだという。
古典落語の多くは、明治初めの江戸の風情を前提にしているので、現代では伝わりにくい部分もある。古典の良さを失わずに、いかに現代風にアレンジできるかが落語家の腕の見せ所、競い所で、落語ファンが楽しみにする部分だというが、それもよくわかって選んでいただいたのかもしれない。
楽しいひとときであった。
本筋からはずれるが、私は花緑師匠の物まねの上手さに舌を巻いた。
五代目小さん、談志、五代目円楽、黒柳徹子etc.。その人の話題のまくらで、さりげなく入れる口まねが、あまりに似ていて驚かされた。
このあたりも技量なのかもしれない。
古典落語はもとより、スーツに椅子スタイルでの公演や、全国47都道府県をご当地ネタの新作をもって回るという企画など、意欲的に新しいことにも挑戦している。
落語のみならず、俳優、ナビゲーター、アラビア語講座の生徒役まで、さまざまなことにチャレンジしている。
伝統を守ることと、新しいものを創造することは矛盾しない。
それを実践している文化人といえるだろう。
慶應MCC城取一成

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