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ピックアップレポート

2012年06月12日

20代で大切にしておきたいこと

川上真史
ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授、慶應MCC客員コンサルタント

新しい働き方をする時代

何かがおかしい上司たち?

 仕事をしながら、「上司の言っていることは何かがおかしい」と疑問に感じたことはありませんか?それも、単に上司のポリシーや考え方だけでなく、実際の仕事のやり方やコミュニケーションのとり方、仕事とプライベートの時間配分、顧客との関係の作り方など、かなり具体的な点、一つひとつに疑問を感じないでしょうか?
 多くの人たちは、「長い経験を持っている上司が言うのだから。自分たちの考えが間違っているのではないか?」と思ってしまい、何となくしっくりこないまま、上司の指示にしたがっています。
 でも、このまま放っておくと、その疑問がどんどんとふくらんでしまい、「近いうちに爆発しそう」と限界にきている人も結構いるのではないでしょうか?
 それでも、「もうこれ以上、こんな上司の言うことは聞きたくない!」と思って転職してみても、やはりそこには、同じタイプの上司しかいません。

急激な変化が「おかしい」の原因

 今の上司をおかしいと思うその感覚は間違っていません。1995~2000年が、その境目だと考えてください。
 これ以前から、企業で働く人たちと、それ以降で社会人になった人たちでは、まったく仕事の仕方が違うのです。
 1995年、これはWindows95が発売された年です。
 つまり、それまでは研究の世界だけだったインターネットが、一般個人にも市販され、広く活用できるようになった年です。その後、数年であっという間に広がり、2000年頃には、会社でもパソコンが一人に1台、必ず与えられるようになって、パソコンの操作ができない人は仕事ができなくなりました。
 これと同じ時期に、携帯電話の普及も急速に進みました。95年では、まだ10%程度の普及率だったのが、2000年にはすでに約80%まで拡大しています。
 つまり、たったの5年間で、コミュニケーションのとり方、情報の集め方と発信方法など、仕事のやり方が根本から変わってしまったのです。
 この変化は、あまりに急速だったため、それ以前から働く人は、逆にそれほど強い印象を持っていません。
 電子メールにしても、今までの電話や直接訪問によるコミュニケーションのとり方を補うものだと考えています。インターネットも、単なる補助的なツールであって、むしろ世の中を混乱させる悪いものだととらえている人も多くいます。「隣に座っている人と、メールでコミュニケーションをとっているヤツがいる」というのは、上司の年代が、若い人たちを批判するときに使うフレーズです。「電子メールは、あくまでもコミュニケーションの補助的なツールなのに、それを使わないと話せないのは、よほど会話力のないヤツらだ」というのがその批判のポイントです。

ITに対する認識の差が「おかしい」を生んでいる

 また、「今の若いヤツらは、電車の中で携帯をかけて大声で話をしているから迷惑だ」と批判する人もいます。ですが、私自身、最近は電車で携帯をかけている若い人を見たことがありません。大声で話をしているのは、すべて中高年です。
 今の上司の年代は、これらの革新された技術を使いこなすことができていないのです。
 ある年代にとっては、携帯がどれだけ発達しても、今までの固定電話と同じ概念です。あくまでも「話し」をする道具なのです。それが、外にも持ち運びできるようになって便利というだけです。だから、若者は礼儀をわきまえないと考えているので、「必ずどこでも携帯で話をしているはずだ」と思い込み、一方で、自分たちがどこでも話をしてしまっているのです。
 電子メールもそうです。私は、隣に座っている秘書と、すべての会話をメールでやっています。今の上司の時代から見ると(私はそれよりもさらに上の年代ですが)、「おかしい」と判断される対象になります。でも、メールでコミュニケーションをとっていけば、「いつ、どのような指示を出したのか」がすべて証拠として残ります。また、会話ではなく、文書なので、いつでも何度でも読み返すことができ、間違いが減ります。
 残念ながら、メールに対して、このような見方をする人は、まだまだ少ないのが現状です。
 「コミュニケーションは直接行うべき」「それができない場合は電話で」、電話も通じないときに、初めてメールで送る。でもメールはやはり補助道具で、そのようなものを使ってのコミュニケーションは失礼だから、本来は手紙を送るべき。そう考えている人がかなり多く残っています。

働き方がすぐに変わり始める

 私が社会人になった80年代中頃は、40代以上の人がすべて戦前生まれでした。つまり管理職は、ほぼ全員が戦前生まれだったのです。
 この当時、上司の年代とそれ以下の年代で、どれくらい価値観にズレがあったかは、簡単に推測できるでしょう。
 ところが、少しずつ時代が進むにつれて、この比率が変化してきました。そうなると、自動的に働き方も変わってきます。今は、2000年以前と以降の年代が、まだまだ逆転していない状況です。しかも、それ以前に社会人になった人たちがマネジメントを行い、会社を経営しています。これでは、どうしても、旧世代の考えが会社の中に残ります。
 実際に、若い年代層が多い会社では、古い働き方を強調しているところはありません。新たな技術革新をうまく使いこなし、働き方そのものも柔軟に変化させています。
 そのような会社の人たちを見ていると、今までと比べて働き方を変えているのがわかります。

独自の働き方を持つ人が活躍する時代がやってきた

 このように、従来とは働き方が大きく変わってきています。みなさんは、「上司の言っていることは正しいのだろうか?」と疑問を感じている時間はありません。
 逆に、上司の働き方を見習い、それを身につけてしまうと、これから先、うまく仕事ができなくなってしまいます。
 在宅勤務は当たり前、会社に行かなくてもテレビ会議システムで十分対応可能、ネットを通じて知らない人とでもネットワークを作り情報をとる、いちいち英語を勉強しなくても自動翻訳機で簡単に会話ができる。 
 このような世の中は、もうすぐ目の前にきています。つまり、みなさんが管理職になる頃には、こんな環境ができ上がっているはずです。
 逆に、このように自由で柔軟な働き方になってくるわけですから、自分をコントロールし律する力も必要になってきます。今までは、「社会人とはこう働くべき」という固定的な概念があったので、それに合わせていればよかっただけでした。これはかえって楽です。言われたとおりにしていればよいわけですから。
 でも、これから先は違います。自分で自分を生きながら、柔軟な新たな働き方を見つけ出していく力が求められるのです。
 自分の働き方を見出し、実践できるようになった人が、これからは次々と成果を生み出すことができるようになります。
 新たな働き方ができるようになるために、どのような力を身につければよいか、以下10のポイントに分けています。
 今までの働き方にこだわらず、上司には昔のままで働いてもらいながら、一日も早く、新しい働き方に変えていってください。
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※2012年2月に出版された川上真史著『20代で大切にしておきたいこと』「はじめに」より著者および出版社の許可を得て転載。無断転載を禁ずる。

川上真史(かわかみ・しんじ)
川上真史

  • ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授
  • 慶應MCC客員コンサルタント
  • 京都大学教育学部教育心理学科卒。産業能率大学総合研究所研究員、ヘイコンサルティンググループコンサルタントを経て、1997年4月より現職。2003年4月~2009年3月まで早稲田大学文学学術院心理学教室非常勤講師。
    コンピテンシー理論に基づくコンサルティング・人材アセスメントの実践などの活動や、講演、セミナーなどでも活躍中。ビジネスブレークスルー大学院大学専任教授、株式会社ヒューマネージ顧問を兼任。日経ビデオ、PHP通信教育での著作や、ビジネス・ブレークスルーチャンネル(CS)へのレギュラー出演など、幅広い分野での活動を行なっている。
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