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桑畑 幸博「ファシリテーションで会議は変わる」

2013年08月13日

桑畑 幸博
慶應MCCシニアコンサルタント

はじめに

「意味のない会議が多すぎる」
「脱線やどうどう巡りが多く、時間がかかる割によい結論が出ない」
「意見はたくさん出るが、全然まとまらない」
「頭数だけは多いが、発言する人はいつも一緒」
「『言った者負け』になるのを怖れて、なかなか発言しない」
「会議をひっかきまわす”問題児”に手を焼いている」
企業でのコンサルティングやセミナーでは、しばしばこんな声を耳にする。内容こそ違え、現状の会議に問題をかかえている組織は多い。
しかし、そもそも会議とは何のためにやるのだろう。

組織には会議が欠かせない

古今東西、会議や打合せを行わない組織はない。これは仕事を行う会社や役所などに限らず、大学のサークルから町内会に至るまで、とにかく複数の人間で構成される”組織”すべてに当てはまる。
では、なぜ組織には会議が必要なのか?
ヒトコトで言えば、それは組織の生産性を上げるためだ。ビジネス領域で言えば、「仕事を効果的・効率的に行うため」に会議という活動は存在する。

会議の効果と効率とは

その意味を端的に表したことわざを僕たちは知っている。そう、「三人寄れば文殊の知恵」だ。ひとりだけで考えても解決できないことは多い。能力には個人差があるし、全ての分野に精通した万能な人などいない。
だから僕たちは会議を開く。得意分野とパーソナリティの異なる人々を集め、知恵を出し合い、協力しながら問題を解決し、企画を練り上げる。こうして「効果的に仕事を行う」ために会議は必要不可欠な活動だ。

さて、もうひとつの会議の存在意義である『仕事の効率化』については、具体例で考えた方がわかりやすいだろう。
たとえば、週一や月一で行われるような情報共有会議。これは組織のメンバー間で個別に行うより、会議室に全員集めた方が一度に情報が共有できるから行われる。同様に方針説明や議案の承認なども、短時間で一度に複数の案件を済ませた方が効率的だから、会議という形態を取る。
時間やヒト・モノ・カネといった『経営資源』を無駄遣いしないためにも、会議は必要不可欠なのだ。

では、ここで考えてほしい。
あなたが参加する会議は、あなたの仕事、そして組織や社会に対して、どれほどの効果(定量的な成果)を上げているだろうか。
また、会議を行うことで、どれだけ仕事の効率(経営資源の無駄遣いの排除)は上がっているだろうか。

ファシリテーションスキルの必要性

考えてみれば、僕たちは担当領域のプロとして、それなりの訓練を積んでいる。営業マンであれば営業のイロハを、SEであればシステム開発の手順を、研修やOJTを通して体系的・経験的に学ぶことが当然になっている。

ところが、会議についてはどうだろう。日々多くの会議が開催されているにも関わらず、議論の仕切り方や意見のまとめ方などを、体系的に教えてくれる人はほとんどいない。また、先輩の見よう見まねで経験的に学ぶことはできても、そもそも冒頭で述べたような、問題だらけの会議から学べることなどたかが知れている。

本来、僕たちは担当領域のプロであるとともに、会議のプロでもあるべきなのだ。
だから、会議の参加メンバーの思考とコミュニケーションを「支援・促進する(Facilitate)」ファシリテーションスキルは、僕たち全てのビジネスパーソンに必要不可欠なスキルなのだ。

ファシリテーションスキルの身につけ方

ファシリテーションスキルが身につくと、今までの会議が劇的に変わる。
たとえば参加者が意見を考えやすい質問や、自由な発想を促す仕掛けを使うと、出てくる意見の質や量が以前の会議とは見違えるくらい変わる。参加者の目の色まで変わり、「会議って、こんなすごいアイデアが生まれる、面白い場だったんだ!」と実感できるようになる。
会議の本質である、仕事に対する効果と効率が、ファシリテーションによって実現するのだ。

では、どうやってこのファシリテーションスキルを身につけるのか。
書店にはさまざまなファシリテーション関連の本が並んでいる。そしてセミナーなども最近はかなり増えたので、これらから学ぶのが、その入り口としては適切だろう。

しかし、書籍の数からもわかるように、一口にファシリテーションスキルと言っても多岐に渡る。全ての本を読んで、全てのテクニックやツールを実践することなど不可能だ。

だからまずは『現状分析』から始めよう。
「自分はどのような会議に多く参加し、そこにはどのような問題があるのか、そしてその問題の原因は何か?」を考えよう。現状をしっかり認識することで初めて、自身、そして自身が参加する会議に必要な、テクニックやツールが見えてくる。

会議とファシリテーターの数だけ問題や課題はあり、たとえば「A社のXという会議には有効だが、B社のYという会議では使う必要がない」、そして「M君には向くがS君には向かない」テクニックやツールは当然存在する。

会議に限らず、商品開発であろうが営業活動であろうが、現状を正しく認識して初めて、次の一手を考えることができる。
そこで、今般上梓した『臨機応変!! 日本で一番使える会議ファシリテーションの本』では、この考え方に基づいて、「現状分析→実践項目の検討→実践→振り返り」ができるような構成にした。

本書が、一人でも多くのビジネスパーソンにとって、ファシリテーターという会議のプロとして成長するための、羅針盤となることを願ってやまない。
 

桑畑幸博著『臨機応変!! 日本で一番使える会議ファシリテーションの本』の「はじめに」および第1章より著者および出版社の許可を得て編集転載。無断転載を禁ずる。

桑畑幸博(くわはた・ゆきひろ)
桑畑幸博

大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應MCCでプログラム企画や講師を務める。
また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。
主な著書に、『すごい結果を出す人の「巻き込む」技術 なぜ皆があの人に動かされてしまうのか?』(大和出版)『日本で一番使える会議ファシリテーションの本』(大和出版)『論理思考のレシピ』(日本能率協会マネジメントセンター)などがある。

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