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高田 圭悟「論理思考(ロジカルシンキング)プラス1の思考手法を!」

2017年03月14日

高田 圭悟
株式会社プレイフル代表取締役、中央大学客員講師

研修や書籍等で論理思考(ロジカルシンキング)を学んだことがある方がたくさんいらっしゃると思います。論理思考には、習得すれば、いつでも良い考えを持てるようになり、また、いつでも良いコミュニケーションを取れるようにしてくれそうな魅力があります。論理思考が有効な思考手法であることは間違いありません。しかしながら、論理思考ではない、別の思考法を使用した方が良いタイミングもあるのです。そこで今回は、『ルール・オブ・スリー:「やるべきことは」、ここまで絞れ』(三笠書房)から、論理思考とあわせて持っておきたい、もうひとつの思考手法を紹介したいと思います。

以下の3点で触れていきます。

1. 論理思考は大事。でも・・・
2. 論理思考プラス1の思考ツール:ルール・オブ・スリー
3. ルール・オブ・スリーの使用例

1.論理思考は大事。でも・・・

『持っているのがトンカチだけだとすべてがクギに見える』という言葉があります。持っている道具がひとつだけだと、それをすべてのタイミングで使おうとする、という意味です。この言葉が示すように、思考ツールとして持っているのが論理思考だけだと、いつでも、どこでも、どんなことにでも、論理思考を適用しようとしてしまいがちです。気持ちは分かります。論理思考を使って考えさえすれば、たしかに、誰もが納得する正しいことを言えそうです。論理思考が多くの人を魅了する理由はまさにこの点にあるのだと思います。

しかし、たとえば、お客さまとの面談中、お客さまから質問を受けたときはどうでしょう。「すみません、5分くらい待ってください。今から論理思考を使って良い答えを用意しますので・・・」とは言っていられません。

ここで求められるのは“即興性”です。このときに使うべきなのは、論理思考ではなく、いわば、“スピード思考”です。これをふたつ目の道具として持っておけば、考える時間の長短によって、適した思考ツールを使い分けることができるようになります。そして、スピード思考を実現するための思考ツールが、今回紹介する『ルール・オブ・スリー』という思考法です。

2.論理思考プラス1の思考ツール:ルール・オブ・スリー

ルール・オブ・スリーとは、直訳すると、“3つの法則”。これは、“考えを3つで整理する”、また、“3つで相手に伝える”という極めてシンプルなコンセプトに基づく思考手法であり、コミュニケーション手法のことです。これまでに、どこかで、「物事をまとめるとき、伝えるときは3つくらいにすると良い」と聞いたことがあるのではないでしょうか。それがまさにルール・オブ・スリーです。難しい理論や複雑な手順などは何もありません。“3つ”で考え、“3つ”で伝える、たったこれだけです。

なぜ3つが良いのか、そのメリットを3つの理由とともに挙げてみます。

理由1:「3つ」が思考を自由にする
理由2: 考える分量、伝える分量として“ちょうど良い”
理由3: 聞き手の記憶に残りやすい話ができる

ひとつずつ見ていきましょう。

 

理由1:「3つ」が思考を自由にする

「自由に選んで良い」と聞くと、たくさんの選択肢の中から一番良いものを選べる気がして、とても良いことのように思えますが、実際のところ、私たちは、選択肢が多過ぎると、「こっちがいいか、いや待てよ、あっちの方がいいか」と目移りしてしまい、かえって選べなくなる傾向があるようです。これは、何かを考えるときも同じで、自由に考えようとすると、思考があちこちに飛び、かえってまとまらなくなるのです。ここでルール・オブ・スリー、つまり、3つで考えることをフレームワークとして考えを整理します。フレームワークを使用すると、窮屈な枠組みの中に考えを無理矢理押し込むような感じがするかもしれませんが、実はそれが良い効果をもたらしてくれます。“3つでまとめる”と、思考を良い意味で限定することになり、その範囲の中で自由に考えることができるようになるのです。

 

理由2: 考える分量、伝える分量として“ちょうど良い”

ルール・オブ・スリーを活用して、3つで考えていくことが持つメリットを実感できる簡単なエクササイズを紹介します。ぜひトライしてみてください。

次に書かれた10個の項目について、一度だけ読み、すべての項目を読むことができたら、一度画面から目を離し、書かれていたことを、1から10まで、順番を間違えずに、そして、項目を飛ばしてしまわないよう、やってみてください。

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1. 右手を握る
2. 顔を左側に向ける
3. 左手でじゃんけんのパーを作る
4. 左手で右ヒザを軽く叩く
5. 顔を右側に向ける
6. 右手を開く
7. 顔を上に向ける
8. 一度拍手する
9. 左手で左ヒザを軽く叩く
10. 二回拍手する
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さて、10個の項目を、順番を守ったうえで、飛ばしてしまうことなくやり切ることができましたか?

多くの方は10個の項目すべてはできなかったのではないかと思います。

では、いくつまでできましたか?おそらく、できた個数は、3個から5個までだったのではないでしょうか?

10個の項目を改めて眺めてみると、ひとつひとつの項目はすぐに理解できる簡単なものばかりです。それなのに、その簡単な10個が頭に入らない。このことから言えるのは、「どんなに理解しやすい項目でも10個は多過ぎて取り扱いにくい」ということです。コミュニケーションの場面で考えると、どれだけ丁寧に伝えても、10個伝えようとすると、相手にすべての項目をしっかり把握してもらえない可能性が高くなります。

では反対に、1個だけだったらどうでしょう?これだと、取り扱いに困ることはないでしょうが、常に「1つだけで考える、1つだけで伝えていく」だと、これはこれで、重要な点を押さえた思考整理ができなかったり、相手の理解を促進する伝え方ができなかったりなど、大きなデメリットに直面するタイミングが発生します。「1個だけだと少な過ぎる」のです。

10個だと多過ぎて、1個だけだと少な過ぎるのであれば、その間のどこかに“ちょうど良い個数”があるはずです。そして、そのちょうど良い個数が“3”である、これがルール・オブ・スリーの土台を形成しているコンセプトです。1つ、2つでは足りないが、4つ以上になると多過ぎて煩雑になる。そのちょうど間にある3つを軸にして考える、そして、何かを伝えるときも3つで伝えていく。そうすることで、過不足のない、ちょうど良い分量での思考とコミュニケーションが実現できるようになるのです。

 

理由3: 聞き手の記憶に残りやすい話ができる

ルール・オブ・スリーのようなフレームワークを使わずに、自由に話そうとすると、コミュニケーションの場面で特徴的に表れる傾向があります。ある人は発散思考全開で、発想力豊かにさまざまな角度から話そうとします。またある人は、論理的であろうとするがあまり、慎重に言葉を選び過ぎて、言葉足らずな話し方をします。場面や状況にもよりますが、ある人のコミュニケーションの傾向は「話し過ぎ」か、「話さな過ぎ」のいずれかに偏るものです。いずれも、「結局何が言いたいのか?」と相手に思われてしまい、伝えたいことが伝わりません。

ここで、ルール・オブ・スリーを活用します。「そのテーマについて、重要なことが3点あります。まず、一点目の○○についてですが~」というように、3つで伝えるようにするわけです。そうすることで、理由2でも挙げたように、分量的にちょうど良い、理解してもらいやすい話ができます。理解しやすいということは、記憶にも残りやすいということです。多種多様で大量の情報が溢れる時代を生きる私たちにとって、複雑なことをシンプルに(同時に、シンプルすぎずに)伝えられること、そして、記憶してもらえる伝え方ができることは非常に有用なことです。

3. ルール・オブ・スリーの使用例

最後に、ルール・オブ・スリーの使用例をひとつ挙げてみたいと思います。

自分の業務にあたりつつ、なおかつ部下の育成も行う役割を担うプレイングマネジャーが増えています。部下とのコミュニケーションはメールや電話によるものがほとんどで、対面でのコミュニケーションの時間がなかなか取れない方もいるようです。部下指導・育成のためのまとまった時間を確保できないのが現状で、今後もこの傾向は続いていくものと思われます。短い時間しか取れないことが恒常化してしまうと、いざ時間が取れたときに、「せっかくの機会だから、このタイミングでできるかぎりのことを伝えておきたい」という思いで、あれでもか、これでもか、とばかりに情報を詰め込みたくなり、自分も混乱してしまいがちです。とにかく必要なことを全部伝える、というやり方だと、自分とでは「伝えるべきことをすべて伝えた」という満足感を持てるかもしれませんが、伝えられた情報を部下がうまく消化できなければ、せっかくの指導も活かされないことになります。

たとえば、新人営業担当者に営業の進め方について相談を持ちかけられたとします。本来であれば、同行営業を通じていろいろなことを指導してあげられると良いのですが、自分の業務の都合でなかなかそれがかないません。本人からのせっかくの相談、この機会に良いアドバイスをしてあげたいと思いました。伝えたいことは以下のように、たくさんあります。

・顧客についての情報収集の仕方
・顧客情報の整理(現状や課題、これまでの面談の流れなど)
・面談時の話題
・話し過ぎず、傾聴することが重要
・質問の仕方
・商品・サービスの紹介の仕方
・商品・サービス紹介後の顧客の反応が悪いときの対処
・面談の最後に宿題をもらうことの重要性
・次回アポの取り方
・顧客フォローのポイント

これらすべてを次から次へと伝えようとすると、上司自身も話のどこかで混乱しやすくなるし、部下も情報の洪水に見舞われるようで大変です。ここでルール・オブ・スリーを活用します。

たとえば、

1. 面談前にすべき準備
2. 面談中に注意すべきこと
3. 面談後にすべきこと

の3つを軸にして考えを整理してみます。そして、その後、軸として設定した3つのポイントに内容を肉付けしながら伝えていくようにします。これであれば、新人営業担当者は、伝えられたポイントをしっかり理解し、把握できます。ルール・オブ・スリーは、部下育成の場面でも双方にメリットをもたらすツールになるのです。

IT技術の進歩に伴い、世の中のありとあらゆるものが速くなっています。そのスピード化に合わせて、私たちもいろいろなことにスピーディーに対応することが求められています。世の中の変化のペースに合わせて人間の能力も高められれば良いのですが、実際のところ、私たちの情報処理の速度は昔も今もそれほど変わっていないのではないかと思います。そのような環境の中で焦点をあてるべきなのは、考えの「効率」と「効果」を高めることです。“3つ”で考えるということを念頭に置いておくだけで、闇雲に考える必要がなくなるので、考えの「効率」が高まります。そうしてできあがった考えには、「明確さ」と「簡潔さ」と「覚えやすさ」が備わっているはず。これが考えの「効果」を高めてくれます。

非常にシンプルなコンセプトに基づく「ルール・オブ・スリー」。ぜひ皆さまの業務に活用してみてください。

 

ルール・オブ・スリー 「やるべきこと」は、ここまで絞れ
著:高田 圭悟; 出版社:三笠書房 ; 発行年月:2017年4月; 本体価格:1,512円
高田 圭悟(たかだ・けいご)
高田 圭悟

  • 株式会社プレイフル代表取締役
  • 中央大学客員講師(海外インターンシップ・企業派遣コース担当中)
  • プレ・マネジメント』講師
英国ウォルヴァーハンプトン大学大学院卒(MBA)。インフィニトラベルインフォメーションではシステム開発のプロジェクトを担当。その後、マーケティングリサーチ会社、ラーニングマスターズの研修開発・講師を経て独立。中央大学客員講師(海外インターンシップ・企業派遣コース担当中)。マネジメント、コミュニケーション、EQ、リーダーシップ等の研修講師、さらにアセッサーとして企業内研修等で活躍中。

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