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慶應MCCキャンパスの言葉

2017年08月08日

湯川 真理
慶應丸の内シティキャンパス ファシリテーター

皆さんの座右の銘はなんですか。
自分のなかで、ずっと大切にしている言葉。あるとき出会い、心に響いた名言。どなたもきっと、そんな言葉をお持ちではないでしょうか。

慶應MCCキャンパスの廊下に、8つの英文が書かれています。
廊下の黄色いガラスに、薄いグレーの文字で書かれているので、お気づきの方は少ないかもしれません。さりげなく、いつもそこにあり、皆さんの学びに寄り添っている、そんな存在です。足を止め改めて読んでみると、いまの私にも響くメッセージでもあります。
これからご紹介する8つは、いずれも日本語訳または日本語で広く知られている名言ですが、今回はあえて、いまの私、私たちに向けたメッセージという視点で意訳してご紹介したいと思います。

“Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow. The important thing is not to stop questioning.”
“The more I learn, the more I realize I don’t know. The more I realize I don’t know, the more I want to learn.”
―Albert Einstein

アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein,1879-1955)の名言です。偉業とともにたくさんの名言を残している偉人の一人でしょう。中でもこのラウンジ前の壁に並ぶ2文は、彼の弛みない探究心や好奇心をよく表していると感じます。

“Learn from yesterday”
昨日から学ぶ、とは自身の経験、また歴史から学ぶことです。
“hope for tomorrow.”
明日に希望をもつことは、未来をつくることでもあります。
そして、”live for today” いまを生きる。
そのためには、“The important thing is not to stop questioning.” 問い続け、考え続けることをやめてはいけない、諦めてはいけない。そんなメッセージだと感じます。次にもつながります。

“The more I learn, the more I realize I don’t know. The more I realize I don’t know, the more I want to learn.”
学べば学ぶほどに、自分がいかに無知であるかを思い知らされるのです。そして、自分の無知を思い知るほどに、より一層もっと学びたい、という思いがあふれてくるのです。

これは彼の姿勢、信念であり、自身の実感でもあったのではないでしょうか。

“You cannot teach a man anything; you can only help him to find it within himself.”
―Galileo Galilei

その隣は現代からルネサンスに遡り、物理学者、天文学者、哲学者として活躍した、ガリレオ・ガリレイ (Galileo Galilei, 1564-1642)の言葉として伝えられている名言です。
ガリレオの言葉から、私はこんな会話が聞こえるように感じます。

“You cannot teach a man anything.”
実はね、人に、教えることはできないんだ。
”you can only help him to find it within himself.”
本人が自分で気づくしかない。できるのはその手助けだけなんだ。

新たな知識は、理解するだけでなく咀嚼・解釈できてはじめて自分のものとなります。当人の腑に落ちていなければ身につきませんし、自身の経験や考えに結びつけられなければ実務にいかすことはできません。ましてや人を動かすことなどできません。
誰もが、部下や後輩、子どもに“教える・育てる”場面を経験します。心のどこかに、常にとどめておきたいメッセージではないでしょうか。

名言には作者や出典は不明ながら、多くの人々に響き、励ましや指針となってきた言葉もたくさんあります。次はそんなひとつです。

“The only way to avoid mistakes is to gain experience. The only way to gain experience is to make a mistake.”
―Unknown

失敗しない秘訣を知りたいでしょう?お教えしましょう。と、私たちに話しかけているようです。
できれば誰だって失敗したくありません。大人になり組織人となると一層、失敗しない無難なほうを選びたくなります。そうするとますます失敗が怖くなります。

“The only way to avoid mistakes is to gain experience.”
失敗しないためには経験をつむことです。それが唯一の方法です。
“The only way to gain experience is to make a mistake.”
そして経験をつむ唯一の方法は、失敗をすることなんです。

この言葉はアメリカの思想家、文筆家エルバート・ハバード(Elbert Hubbard,1856-1915)の名言につながります。

“The greatest mistake you can make in life is to be continually fearing you will make one.”
―Elbert Hubbard

生きるうえで、私たちがしうる最大の失敗は、何か失敗してしまうのではないか、いつか大きな失敗をしてしまうのではないか、と恐れ続けることです。失敗を恐がって何もしない、チャレンジせずにいる、そうして生きていくことこそ生き方の失敗なのだと言い切っているように感じて、思わず私もドキリとします。

続いて、慶應義塾の創設者、福澤諭吉の言葉の英語訳です。

“It is said that heaven does not create one man above or below another man.”
「天は人の上に人を造らず、人の下に造らずと云り」
“It aspires to be a fountain head from where flows the nobleness of character, and an intellectual light and moral glory.”
「気品の泉源、智徳の模範 以て全社会の先導者たらんことを欲するものなり」
―福澤諭吉

上は、著書『学問のすゝめ』の冒頭にある一文です。福澤の言葉の中でももっとも有名な一文といえるのではないでしょうか。福澤が説いた人間の自由・平等・権利の尊さを象徴する言葉として、現代に受け継がれています。
下は、「慶應義塾の目的」と呼ばれる一文です。これについては詳しく慶應義塾の理念にありますので関心ある方はお読みください。ちなみに『学問のすゝめ』の英文訳は、“An Encouragement of Learning”のタイトルでデヴィッド・A・ディルワース訳により出版されています。

さいごは、“The Serenity Prayer” として知られる祈りの言葉です。
作者は米国の自由主義神学者ラインホルド・ニーバー(Reinhold Niebuhr, 1892- 1971)とされ、日本では”ニーバーの祈り”の名で知られるようになりました。

“God, give us grace to accept with serenity the things that cannot be changed, courage to change the things that should be changed, and the wisdom to distinguish the one from the other.”
―Reinhold Niebuhr, The Serenity Prayer

来歴については議論があるそうですが、いずれにしても時代と社会を背景に、人々を励まし支えた、祈りというかたちをとったメッセージでした。そして、今回改めてじっくり読んでみると、いまの私たちにも響くメッセージであると感じました。

嫌なこと、腹のたつこと、不運なこと、誰にでもあります。社会や組織は不条理で、納得のいくことばかりではありません。しかし、怒りを持ち続けるだけでは問題は解決しません。憤りや憂いをまとめて抱え込んでしまえば、悩み、行き詰まってしまいます。

私も一時期、そうでした。すでにしてしまった失敗がいつまでも気になってくよくよし、これから起こる“かもしれない”ことが心配で、鬱々と悩んでいました。その状態を打破したのは、仕方のないことと、こだわるべきことを、しっかり切り分けたことでした。この名言にあるように。

“the wisdom to distinguish the one from the other.”
自分の意思やがんばりで変えうることと、自分ではいかようにもならないことが、あります。まず、そこを見極めることです。

そしてこの名言を現代の文脈に引き寄せるとこのように訳せると思います。
“the things that cannot be changed” 自分の力では変えることのできないことは、“grace to accept with serenity” おだやかに受け入れましょう。受け入れ難いならそれでもいいのです、諦め、手放してしまいましょう。
そして、“the things that should be changed“ 自分の意思やがんばりで変えうることに、“courage to change” 意思をもって、どんどんかかわり、変えていきましょう。多少難しくても、時間はかかっても、簡単に諦めることなく信じて、がんばっていきましょう。

私は、文中にある”give us grace”とは、そんな心持ちをめざしていきたい、という願いであり意思でもあると思います。そして”give us courage”とは、がんばり続ける勇気であると同時に、ときには諦める勇気、失敗を認める勇気、自分が変わる勇気でもあると感じています。

こうした名言たちが、慶應MCCに学びにいらしてくださる皆さんに、これからも寄り添い、見守っています。

湯川 真理(ゆかわ・まり)
  • 慶應丸の内シティキャンパス ファシリテーター

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