キャリアコンサルタントは、2016年4月に国家資格となりました。資格の認知度や信頼度は飛躍的に高まり、国のキャリアコンサルタント名簿への登録者数は5万人を超えています。キャリアコンサルタントは、キャリア形成や職業能力開発などに関する相談・助言を行う専門家、すなわち、キャリア支援のプロフェッショナルです。激変する社会において、一人ひとりが生涯にわたり活き活きと「働き」「学び」「生きる」ことを支える人材として期待が高まっており、厚生労働省は2024年末までに10万人のキャリアコンサルタントを養成するとの数値目標を掲げています。

　キャリアコンサルタントのスキル向上は、しばしば自動車運転免許と比較して説明されます。キャリアコンサルタント国家試験合格は、運転免許の取得段階といえます。この時点ではまだ苦手とする運転スキルも多いことでしょう。しかし、最低限、交通ルールを守り、目的地まで安全に運転することはできるはずです。そして経験を重ねることで、どのような状況でも安全かつスムーズに運転できるようになっていきます。キャリアコンサルタントもそれと同様に、試験合格後に実務経験を積んでいくことで、より良い支援者となっていくのです。

　本書は、試験攻略のために最も重要な過去問のデータを徹底的に分析し、合格に必要な論点を「速習テキスト」と「練習問題」を軸に掲載したものです。受験段階で道に迷い、努力を無駄にしないための“ナビゲーションシステム”が、この『合格のトリセツ』です。試験合格はゴールではありません。しかし、まず合格しなければ、キャリア支援者としてのその後の成長もありません。

　キャリアコンサルタントに対する社会からの期待は、今後、ますます高まることが予想されます。本書を活用された方がキャリアコンサルタント国家試験に無事合格され、キャリア支援者として研鑽し、プロフェッショナルとしての一翼を担われることを心より祈念しております。

◆本書を手に取られた受験者の方へのメッセージ

　私（著者）は2003年に産業カウンセラーの資格を取り、カウンセリングの世界の門をたたきました。実はその資格に関心をもった出来事が知人のメンタル不調でした。

　職場に出社ができなくなってしまった本人の家へ行き、そこでお話を伺いました。最初は誰にも会いたくないと言っていましたが、私には会ってくれました。本人と話をしながら、自分も何かができる世界なのではないかと感じ、その後、講座に通って資格を取得し、会社勤務のかたわらカウンセリングの機会を得ることもできました。

　本書の制作を行うようになったきっかけは、自分自身のキャリアを考えるワークショップを通じてでした。

　法政大学の元教授で日本キャリア・カウンセリング学会の名誉会長を務める宮城まり子先生の「こころの旅」というセミナーに参加したときのこと。定年退職を数年後に控え「会社の名刺を持たなくなった自分」を想像し、自身の将来を「タイムマシン」に乗って見に行くワークがありました。

　以来、具体的な将来をイメージし、手帳に書いては毎日のように見ていました。不思議なことに小さなきっかけから希望が具体化していくことがあり、会社員のかたわら副業（セカンドキャリア）をいくつか、はじめることができました。そのうちのひとつが、キャリアコンサルタントの試験対策になったのです。

　本書を制作する思いも、いままで140を超える資格にチャレンジして獲得をしてきた中で得たノウハウを、キャリアコンサルタント試験の対策に活かし、チャレンジされる受験者の方々をサポートしたいという気持ちからです。

　さて、資格を取得したあとのことをご一緒に考えさせてください。心理支援のお仕事は継続した学びが重要といわれます。私の諸先輩を見ても、勉強会に出たり、個別の指導（スーパービジョンといいます）を受けたりされています。キャリアコンサルタントは更新講習もあり、それなりにオカネもかかる世界です。しかし、私はその投資は相談者のためになり、また自分にも戻ってくる投資だと思っています。本書をきっかけに、受験者のみなさまが資格を取り、プロフェッショナルの入り口に立つことができるようサポートをさせていただくことができれば嬉しく思います。

　最後に、宮城まり子先生に教えていただいた言葉を引用させていただきます。

「生涯学習　生涯育自」
※「育自」（自分を育てる意）

『国家資格キャリアコンサルタント・2級技能士 合格のトリセツ 学科試験 速習テキスト＆問題集【2022年版】』の2023年版（2023年2月出版予定）より「はしがき」を著者・出版社の許可を得て加筆のうえ転載。無断転載を禁じます。