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アクティブ・コンシューマーの情報探索

2005年12月13日

濱岡 豊 慶應義塾大学商学部教授

1.能動化する消費者とアクティブ・コンシューマー

世界中のユーザーが共同で開発、サポートするLinuxなどのオープンソース・ソフトウエアなど、インターネット上を見回すと消費者による創造的な活動がみられる。このような現象はインターネット上に限定されるものではない。スリッパのかかとの部分を切り落とした「初恋ダイエットスリッパ」は、主婦が自らの腰痛、膝痛、肥満を解決するために開発したものである。広告などはしていないが、発売後10年間で30億円を超える売上だという[http://www.kiroro.com/]。

これらの例が示すように消費者は与えられた製品を選択するだけでなく、自ら創造する能力をもっている。しかし、これまで、マーケティングや消費者行動研究では、消費者による創造はほとんど取り上げられてこなかった。つまり、消費者というのは企業によって提供された製品について情報を収集して選択し、消費するという受動的な存在として扱われてきたのである。

これに対して筆者は、『(選択して消費するだけでなく)既存の製品・サービスを修正する(製品修正)、新しい製品・サービスをつくる(製品創造)、新しい用途を発見する(用途創造)といった「創造的消費」を行い、他者とコミュニケーションする能動的な消費者』[濱岡 (2001)]を「アクティブ・コンシューマー」と定義し、研究を進めている。

これに関して2001年と2004年に大規模な調査を行った(図表 1)。住民基本台帳に基づく代表性のあるサンプルを対象とした2001年調査では、37.5%の回答者が「創造的な消費」の経験があり、16.9%が「自分の創造した工夫やアイディアが周囲の友人などに広まった」経験をもっている。2004年の調査は、インターネット調査であり、代表性はないものの、創造的な消費を経験割合は48.1%、それが広まった経験を持つ者は30.2%と、全般的によりアクティブ・コンシューマー度が高くなっている。

2001年調査に関して、下記の5項目への回答の合計得点を「アクティブコンシューマ度指標」と定義し、その特徴を分析した。

  • 既存の製品・サービスを工夫して使うほうだ
  • 既存の製品・サービスの新しい使い方を見つけることがある
  • これまでにない新しい製品の・サービスをつくることがある
  • 自分の工夫やアイディアについて積極的に人に教えたり意見を求めたりする。
  • アイディアを企業に提案したことがある。

分析の結果、アクティブ・コンシューマーは、年齢や職業などのデモグラフィクスでは判別できないこと、早期採用者やオピニオン・リーダーである傾向があるが、それらとは異なった特性をもっていること、不満があった場合、その解決策をもった上で企業に接触する傾向があること、などを示した[濱岡(2002)]。

以下では、アクティブ・コンシューマーの情報探索に注目して、これら二つの調査結果を紹介する。

図表1 二つの調査

変数概要 単純集計 回帰分析の結果  
    回帰係数 有意水準
テレビの視聴時間(時間) 2.53 -0.35  ***
ラジオの聴取時間(時間) 0.89 0.07  
よく読む雑誌数(誌)/td>

2.71 0.30  ***
朝日新聞 40.8% 0.06  
毎日新聞 5.4% 0.51  
読売新聞 41.5% -0.53  
日本経済新聞 16.7% 1.27  **
サンケイ新聞 4.2% 0.19  
東京新聞 3.2% 0.76  
スポーツ新聞 16.8% -1.40  **
その他 11.0% 1.02  
定数項 —- 15.87  ***

注1)単純集計について、視聴時間は「時間」、新聞については選択した割合。
注2)*** 1%水準で有意。**5%水準で有意。*1%水準で有意。 空欄 10%水準で有意でない。
R2=0.050、修正R2=0.036
注)テレビ、ラジオについては平日の視聴、聴取時間の長さ。雑誌は、よく読む雑誌の数。新聞については、よく読む新聞を選ばせたもの。N=720

2)2004年:インターネット調査

近年のインターネットや携帯電話の急速な普及にともなって、企業から消費者への情報提供チャネルは多様化している。しかし、それらをどうミックスすればよいか、さらには消費者からの接触をどのように受け止めればよいのかは明らかではない。筆者は富士通総研と共同で、 2004年3月、企業とのコミュニケーションに注目して、インターネットユーザーに対してのアンケート調査を行った[濱岡、田中(2005)]。これは 2001年調査のようにランダムサンプリングではないため、代表性はないものの、創造的消費の経験率は48%と高く、いわば先進的なユーザー層が回答している。

この調査については、製品を購入するときに、「利用している情報源(いくつでも)」と「重視している情報源(3つまで)」を回答させた。図表2に示すように情報源としては、4大媒体を含めてインターネット、クチコミ、店頭などできる限り広い選択肢を挙げた。

図表3の横軸は「利用している情報源」、縦軸は「重視している情報源」の回答率である。まず目立つのが「店頭」の回答率の高さである。Web上での調査であることを考えると、店頭の重要性を再認識させられる。「店頭」に次いで重視度への解答率が高いのは、「新聞の折り込みチラシ」「友人、家族からのクチコミ」「印刷されたカタログ」「テレビ広告」「(自分の)過去の経験」「企業ホームページ」「雑誌の記事」「ショッピングサイト」「クチコミサイト」などである。この調査はインターネットユーザーを対象として行われたが、「店頭」をはじめとした伝統的なメディアも重視されていることがわかる。インターネット系の情報源に注目すると、「クチコミサイト」よりも「企業のホームページ」の方が利用、重視度とも高くなっている。まずは企業のホームページを利用し、クチコミサイトによってそれを補完する者もいるという使い方がされているものと考えられる。

図表3 情報源の利用率と重視度

図表3 情報源の利用率と重視度.gif

これら情報源の利用、重視度とアクティブ・コンシューマー度との関係を分析した(図表4)。結果の読み方は図表 2と同じである。例えば「利用している情報源」の列に注目すると、「新聞記事」の係数は正で有意である。つまりアクティブ・コンシューマーほど新聞記事を買い物をするときの情報源として利用していることになる。この他、「企業のホームページ」「展示会」「ショッピングサイト」「携帯電話」、そして「過去の経験」「その他の情報源」については正、「ダイレクトメール」「店頭」については負でそれぞれ有意となった。アクティブ・コンシューマーほど、新しいメディアを利用し、展示会にも出かけるなど積極的な情報探索をしている一方、ダイレクトメールのような受動的な情報源はあまり利用していないことになる。

「重視する情報源」については3つに制限したため有意となった変数は少ないが、「テレビ広告」「新聞広告」「新聞記事」「企業のホームページ」「ショッピングサイト」「その他」「過去の経験」が正で有意となった。調査1ではテレビの視聴時間とアクティブ・コンシューマー度との間には負の関係があったのにたいして、ここでの分析では、テレビ広告については正という結果となった。調査対象者やワーディングが異なるので明確な結論はだせないが、アクティブ・コンシューマーは、漫然とテレビを視聴するのではなく情報収集という目的をもってテレビの広告を視聴しているものと推察される。

図表4 アクティブ・コンシューマー度と情報源の利用、重視

  利用情報源   重視する情報源  
切片 15.174 *** 14.279 ***
テレビ広告 0.119   1.152 **
テレビ番組 -0.410   -0.261  
新聞広告 0.495   1.673 *
折り込みチラシ -0.619   0.194  
新聞記事 0.962 ** 2.321 ***
雑誌広告 -0.437   -0.328  
雑誌の記事 0.521   0.060  
ラジオ広告 0.249   2.721  
ラジオ番組 -0.313   -1.168  
屋外看板 0.481   -0.495  
車内広告 -0.002   1.715  
印刷カタログ -0.544   0.446  
通販のカタログ 0.095   -0.834  
ダイレクトメール -1.079 ** 0.207  
企業からのメール 0.288   -0.366  
企業ホームページ 1.121 *** 1.642 ***
クチコミサイト 0.230   0.943  
友人、家族からのクチコミ 0.107   0.565  
店頭で実際に -1.332 *** -0.064  
店員 -0.291   0.351  
展示会 1.778 *** 0.556  
ショッピングサイト 0.762 * 1.284 **
バナー広告 0.244   -0.738  
携帯電話 2.388 *** 4.190  
過去の経験 1.082 *** 2.365 ***
その他 2.100 ** 3.370 *

注1)数字はアクティブ・コンシューマー度を従属変数としたときの偏回帰係数。
注2)*** 10%水準で有意。**5%水準で有意。*1%水準で有意。 空欄 10%水準で有意でない。
R2はそれぞれ0.100および 0.067

3.終わりに

紙幅の制約から数表は割愛するが、この調査では企業から提供される情報への不満についても回答してもらった。「企業から提供される情報に不満はない」と回答したのは9.5%にすぎず、残りの90.5%は、企業からの情報に何かしらの不満をもっている。具体的には「企業に都合のいい情報しか提供されない54.0%」「情報を探すのに手間がかかる37.5%」「情報がどこにあるかわからない 31.6%」「意味がわからない言葉が多い 31.6%」の順に回答率が高くなった。

インターネットや携帯電話などの急速な普及にともなって、情報源は多様化してはいるが消費者全体としてみると、店頭をはじめとした旧来からのメディアが重視されていることがわかった。ただし、アクティブ・コンシューマーについては「企業のホームページ」「ショッピングサイト」といった新しいメディア、これとあわせて「新聞記事」という伝統的なメディアが重視されている。彼(女)に有効に情報を伝達するには、これら新旧のメディアを適切にミックスする必要がある。

参考文献

  1. 濱岡豊(2001)「アクティブコンシューマー」『未来市場開拓プロジェクト・ディスカッションペーパー』東京大学経済学部
  2. 濱岡豊(2001)「共進化マーケティング 消費者が開発する時代におけるマーケティング」『未来市場開拓プロジェクト・ディスカッションペーパー』東京大学経済学部
  3. 濱岡豊(2002)「アクティブ・コンシューマーを理解する」『一橋ビジネスレビュー』冬季号、東洋経済新報社
  4. 濱岡豊、田中秀樹(2005)「コミュニケーションインテグリティの確立にむけて あなたは消費者の声に応えているか?」『マーケティング・ジャーナル』掲載予定

濱岡 豊
慶應大学商学部教授
専門はマーケティング・サイエンス。1987年東北大学工学部応用物理学科卒業。1989年東京大学大学院工学系研究科 原子力工学専攻 修士課程修了。野村総合研究所勤務を経て、1995年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了[博士(学術)]。1996年慶應大学商学部専任講師、1998年助教授を経て2005年より現職。
主要著訳書:『デジタル放送産業の未来』東洋経済新報社(分担執筆)、『ネットワーク・ビジネスの研究』日経BP(同)、『クチコミはこうしてつくられる』日本経済新聞社(翻訳)。

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