KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

今月の1冊

2012年10月09日

大人の思考力の高め方

皆さんは、「年齢とともに脳の働きが悪くなっている」「一生懸命考えても、良いアイディアが出なくなった」などと感じることはありませんか?
私も、これまでは自分の思考力不足を年齢のせいにしてきてしまいました。しかし、以前『夕学五十講』にご登壇いただいた東京大学・大学院薬学系研究科 池谷 裕二准教授の著書によれば、私たちの脳には一生かかっても使いきることができない数の細胞があり(数百億個とも言われています)、毎日様々なことを考え尽くしたとしても、脳細胞の大部分はその力を発揮することなく、死滅してしまうのだそうです。さらに、年齢を重ねても、脳の働きを衰えさせることなく、使い方によってはその才能を伸ばしていくことさえできると言います。
そこで、自分の思考力を高めることで、より楽しい人生を送ることができるのではという思いから、今回は「大人の思考力の高め方」をテーマに考えてみました。


自分の思考力を溯って考えてみると、子どもの頃から考えることが苦手で、どんな試験も教科書丸暗記で乗り越えてきたことを思い出します。新卒で入社した会社では、社内での報告や承認をA3 1枚にまとめて行うことが暗黙のルールとしてありましたので、常に情報をA3にどのようにまとめるかを考え、その思考に固執してしまっていたように感じます。そのため、社会人生活を重ねた今でも、当時身につけた思考がクセとなって根強く残り、自分の固定化した思考パターンを変えることができずにいます。最近は、同じ環境での生活や仕事が長くなるにつれて、限られたリソースで物事を考えてしまい、新たな発想が生まれにくくなっていることを日々痛感しています。
先月、慶應MCC 先端専門プログラム『実践M&A講座』にご登壇いただいたキャメル・ヤマモトさんの新著『「世界水準」の思考法』が発行されました。キャメル・ヤマモトさんはヨーロッパ、アメリカ、中国、中東、東南アジアと、幅広く世界で企業と人材を見てこられたコンサルタントの方です。本書は、昨年9月に発行された『「世界標準」の仕事術』の続編的な位置づけで、グローバル化する世界の中で活躍するための20の思考法が書かれています。例えば、構想力を高めるために「アウトライン」を書く、動きながら考える、対話を使って話しながら考えるなど、今すぐにできることばかりです。さまざまな業界で仕事をし、外資、日本企業など多様な企業に在籍した経験もある中央大学 中島豊先生の言葉から、すり合わせ型のローカル(日本的な)思考を「緑の思考」、モジュール型のグローバル思考を「青の思考」と呼び、わかりやすく対比させながら、「緑と青の思考をうまく組み合わせて使う二刀流思考」を紹介しています。
その中で、特に印象に残っているのは「動きながら考える」ということです。多くのビジネスパーソンの方は、重要な案件になればなるほど、自分一人の中に閉じこもって机の上で考えることが多いと思います。しかし、皆さんも、良いアイディアを出すために、環境を変えて立ってブレストを行ったり、ランチ後の散歩中にふと良いアイディアが思いついたなどのご経験があるのではないでしょうか。時には場所を変えて、からだ全体を使って考えることで、頭が働き思考が出やすくなるのです。まさに脳とからだの不思議な関係です。
少し前になりますが、5月~6月に慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 前野隆司教授らによる『世界をリ・デザインしたい人のためのワークショップ』(※開催終了)に参加し、正しいブレストのやり方から、意見の収束、分析検証までの一連のシステム思考・デザイン思考の手法を学びました。
日曜午前中の開催で、頭もフレッシュな状態。様々な業界のビジネスパーソンと学生のコラボレーションで、イノベーティブなアイディアが次から次へと湧き出てきます。毎回、最後には考え出したアイディアを寸劇やプロトタイプで表現します。粘土や折り紙で模型を作ったり、からだ全体を使って考えることで、アイディアが一段と研ぎ澄まされていきます。まさに、からだ全体で思考することが、思考力をはじめとする知的能力を高めることになると実感しました。
本ワークショップで学んだ思考法は、キャメル・ヤマモトさんの著書で登場する、まさにグローバルな「青の思考」です。緻密に設計され、誰でも簡単に身につけることが可能な思考です。日本人が持つ特有の「緑の思考」とうまく組み合わせて使うことで、グローバル化する社会の中で、生き残れる思考力を身につけることができると感じました。
もし、私のように、自分の思考力不足を年齢のせいにしてきた方がいらっしゃったら、この機会に、もう一度ご自身の思考力に磨きをかけてみませんか?私も、本書をきっかけに、少しずつ自分の思考パターンを変えてみようと心に決めました。
(石澤 夕貴子)

【講演情報】
前野隆司先生「思考脳力とイノベーションのデザイン」
11/20(火)18:30~20:30 於 丸ビルホール(JR東京駅丸の内口正面)
受講予約は『夕学五十講』』よりお申し込みください。

メルマガ
登録

メルマガ
登録