HOMEへ戻るMCCマガジン『研修開発入門 会社で「教える」、競争優位を「つくる」』

『研修開発入門 会社で「教える」、競争優位を「つくる」』

2014年07月08日

研修開発入門 会社で「教える」、競争優位を「つくる」』中原 淳 ; 出版社:ダイヤモンド社; 発行年月:2014年3月; ISBN:978-4478027257; 本体価格:3,800円

タイトル通り、企業における研修開発を扱うこの本は、300ページを超え、定価3,800円の大著ながら、わずか1カ月足らずで版を重ねているとのこと。企業研修において参考とできる書籍があまりない中、「待ってました!」という、研修担当者の期待感の表れかもしれません。
前書きによると、著者自らの専門領域である「経営学習論」の研究知見を紹介するとともに、研修実務を担当する実務家にたくさんのインタビューを行って記述したとあります。その記述が本の内容にリアリティをもたらしています。
本書は、まさに”入門書”として、前から順に読み進めていくことで、未経験の研修担当者でも、ひととおりの実務をこなすことができるよう、「これでもか」というほどに、微に入り細に入り記載されています。


一連の研修実施の流れのみならず、研修で使う細かなツールや、懇親会のおつり準備まで…そして、上位者への説明責任を果たす、「政治的目的」と著者が述べる要素にまで目配せされています。
私自身も、研修の企画、そして研修の運営を毎日のように行っている身として、じっくりと本書を読み込みました。全12章をできるだけ毎日1章ずつ、ブログにまとめなおし、要約を社内スタッフと共有するなかで、あらたに気づけたことが数多くありました。
著者の中原淳先生は、コーディネーターおよび講師として、慶應MCCで2009年より『ラーニングイノベーション論』という教育プログラムを提供していただいています。私は昨年より、このプログラムの事務局として運営サポートを務めています。中原先生からの高い、厳しい要求に応える中で、ぐっと育てていただいている日々です。
私は、研修の事務局はサッカーにおける「ボランチ」の役割と似ているな、と感じています。研修で学ぶ目的を定め、講師に何を話してもらい、どのように学習活動を設計するかという行為は、試合全体を思い描いて、攻撃の起点になり、広い視野でパスを供給する、サッカーのMF「ボランチ」のようだと感じていて、私自身は勝手にそのイメージを持って働いています。
ところが、私から見た中原先生は、なんでもできる”スーパーボランチ”なのです。試合を組み立てて、自分で点もとれるプレイヤー。具体的に言えば、研修全体の目標を定め、ゲスト講師を定め、ゲストに何を話してもらい、どのように活動を進めるかを決定できる力がある。さらには、ご自身も講師としてレクチャーすることができる。(ご専門なので当たり前なのですが)
本質的に、事務局を不要にする、事務局泣かせの存在…と言えるでしょう。私自身はその自覚を持っており、どのような点で、ご一緒している仕事にバリューがだせるか、ということを、いつも考えています。
この本のなかに、少しだけ、「事務局の役割」という項目があります。ここでは、「研修講師を支援することを通して高い付加価値を発揮すること」が事務局の役割と書かれています。4つのポイントとして、「ホスピタリティ(明るく元気にふるまう)」「ドキュメンテーション(記録に残す)」「ウィスパリング(講師への状況伝達)」「タイムコントロール(進行管理)」とあります。
私自身が、あえてここにつけくわえられることがあるとしたら、事務局の役割には「メディア」ということもあるのではないかと考えています。参加者同士、そして講師も含めた学びの場全体をつなぎあわせる媒介者=メディアとなることです。
学びの場が有機的に機能するために、講師-参加者の二者間をやわらかくつなぐ存在が必要となることも多いと、日々の仕事のなかで感じています。そのこともあって、私たち慶應MCCでは、ラーニングファシリテーターという呼称を用いて、事務局の仕事を広く捉えています。(http://www.keiomcc.com/keiomcc/index02.html
思いをもっているのに、なかなか発言できない学び手の後押しとして声がけをしたり、ワークショップなど特別な活動でなくとも、送付するメールの文章を工夫するなど、発言しやすい工夫を試したりします。場合によっては学ぶ内容にも立ち入って、講師の説明を補足したり、くだいて説明したりすることもあります。間違ったことを伝えてはいけないため、そのために事務局としても学ぶ大変さがあります。
ちょっとした疑問や、間違いかもしれないと感じていることを発言しても大丈夫ですよ、という学ぶための「安心する場」を形成するのに、講師よりも実は良い立ち位置にいるのが事務局ではないかと感じます。そういう場をつくることができて、嬉しそうにプログラムに通ってくださる方が増えていくことが、仕事のなかでたまらない喜びとなっています。
後書きには、この『研修開発入門』に記してある内容を唯一絶対の回答とすることなく、本の内容をたたき台として、さらに実務からの発見を加えていきながら役立てて欲しいとあります。この言葉を受け、自分なりに、この「事務局の役割」の記載が豊かになるように、日々の研修運営での実践知を高めていきたいと考えています。
いま現在も、一緒に取り組んでいる『ラーニングイノベーション論』は、まさに佳境に入ってきており、暑い、そして熱い夏を迎えようとしています。
(調 恵介)

研修開発入門 会社で「教える」、競争優位を「つくる」』中原 淳(ダイヤモンド社)

 

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