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廣政 愁一『勉強がしたくてたまらなくなる本』

2017年04月11日

勉強がしたくてたまらなくなる本
著:廣政愁一; 出版社:講談社 ; 発行年月:2014年9月; 本体価格:1,404円

「事前課題がカテナイんですが、どうしたらいいですかね?」
「カケナイ?難しかったですか?」
「ちがうのよ、事前課題が“カテナイ”んだよ」
「事前課題がカテナイ…?」

ある講座の終わりに、困った様子で話しかけてくださった方。
お話しを聴いていくと、「事前課題VS他の誘惑」の戦いにどうしても事前課題が勝てない。負けた事前課題は後回しになってしまい、授業の度に次回こそは時間に余裕をもって取り組もうと思うのに、どうしても前日まで手をつけられないとのこと。
課題のボリュームや内容については常々検討していますが、課題への取り組みにかける時間については参加されるみなさんにお任せしていますし、ましてや義務教育の初めから苦手項目に『勤勉』が常連だった私に解決策があるわけもなく。
話しかけてくださった方には「お忙しいですものね~」とお茶を濁してしまいました。

そんな時、書店で出会った本。真っ赤な表紙の右上には「ダメな大人用」、帯には「愚図」の文字。
これは私のためにある本なのでは?!と思い、すかさず手に取った一冊は『勉強がしたくてたまらなくなる本』。
著者の廣政愁一氏は、元予備校講師として活躍後、現在は数々の教育事業に携わる実業家であり、講師や教育現場で勉強法の指導を行う「先生の先生」とも言われる人物。たくさんの受験生を見てきた著者が、勉強がしたくなる方法について、学生ではなく大人目線で紹介しています。
ここではすぐに実践できる勉強したくなるポイントをご紹介いたします。

愚図を手なずけよう

著者の廣政氏は、ご自身も根っからの愚図であり、愚図のプロと著書で告白されています。そしてまず大切なことは、自分が愚図であることを認め、愚図を“手なずける”ことが必要と書かれています。
その仕掛けについて紹介されているひとつに、勉強する環境の作り方として「30秒鉛筆を握る」とあります。
「勉強」という重たい動きから「鉛筆を握る」という具体的で軽い動きへと意識を変換しておくことで、最初のひと転がりがスムーズに進み、その後順調に加速することができるのです。
勉強する!と思うと、気負ってしまいますが「今日も30秒鉛筆を握ろう」と思うと、鉛筆を握ったのだからノートも開こうか…開いたなら読もうか…という具合に自然に勉強につながっていくのです。(もし、握ってもその気にならなければその日はそれで終わってしまっても良いそうです。)

愚図を手なずけるということは、つまり「愚図である自分を自分でマネジメントする」ということなのだと考えます。闇雲に手をつけてできない自分に自信を失うのではなく、そんな自分を受け止めて、自分に対する創意工夫で乗り越えていくことなのです。

習慣のしくみ

「ある行動を習慣化しよう」というと、三日坊主で自分には…と考えられる方も多いのではないでしょうか?私自身三日坊主であり、ダイエットや日記など何度となく挫折しています。
廣政氏は行動を習慣化する際に大切なこととして「習慣の陣取り合戦に勝つ」と述べています。そもそも朝起きてから寝るまで、私たちの生活には多くの習慣が折り重なっていて、限られた環境、時間の中で、新たな習慣をはさみ込むのは大変な作業です。「事前課題が他の誘惑に勝てない」方はもしかすると、この習慣の陣取り合戦に事前課題が勝てなかったということかもしれませんし、私が三日坊主になるのは仕方のないことだったのかと、少し安心できます。

では、どのように今ある習慣に打ち勝つことができるか?そのひとつに、習慣を交換する、つまりすでにある習慣から何かを思いっきり捨てると書かれています。
「そんなことか」と思ってしまいがちですが、これまで毎日続けていたことですから、捨てる習慣は吟味しなければなりません。一見不要に感じる習慣でも自分にとっては大切であったり、その一方で大事だと思いこんでいただけかもしれない習慣もあります。
一日の行動を棚卸しし、思い切って捨ててしまうことで、新たな習慣を取り入れやすくなるそうです。
何かひとつ得るときは、何かひとつ捨てるという潔さと覚悟を持つことが、多忙極めるビジネスパーソンが新たなことを始める際に最も必要なのかもしれません。

勉強は無形固定資産

時代の変化や技術が進歩するスピードは加速度を増し、人間は100歳まで生きると言われていますし、今の仕事の多くはAIに変わるとも言われています。しかしどんなに時代が変化しても、人の一生の最初と最後は変わらないことは自明の理であります。人生の残された時間を悲観したり後悔するのではなく、いかにいきいきと能動的に過ごすことができるかはとても大切なことです。
勉強は思考の新陳代謝を助け、新しい世界や仲間との出会いによって多くの刺激をもたらしてくれます。
それは、まさに究極のアンチエイジングであると共に、「勉強の意欲=勉強し続ける力」は何歳になっても、どんなに時代が変化しても目減りすることのない資産価値となり、時代に流されない資源を獲得することになります。

ただ、意欲はあっても、継続することに自信がない私。しかし廣政氏は「継続する力は誰もが持っている」と説きます。つまり、1日の生活を振り返ると、そこには長い間継続している事柄がいくつもあります。例えば、ご飯を食べたら歯を磨く、仕事をする、晩酌をするなど、誰しも必ず1つ以上は長く継続している習慣があり、継続力がない人は誰もいないと言うのです。続けられるか否かは、その習慣がもたらしてくれる本当の効果や意義に気がつき、続けるためのちょっとした工夫があれば良いだけなのです。

私自身MCCに入社してからの1年を振り返ると、この本に書かれていることとまさに同じことを感じています。
日々、多くの参加者、先生、本に出会い“電撃”から“もみほぐし”まであらゆる刺激を受けてきました。
若輩な私が生意気ではありますが、この1年で感じたことは、学ぶことを前にしたとき、年齢や職歴は全く関係ないということです。自分よりも若い方、先輩方からもたくさんの気づきをいただきますし、30代の私が「古風だね」と言われ、自分の思考が凝り固まっていることに気づくこともあります。またラーニングファシリテーターとして、お仕事との両立で大変な中でも楽しそうにされている参加者の姿を日々目にしています。
この多様な出会いが私の学びの原動力になっていますし、私にとっての大きな無形固定資産となっていることは間違いありません。

最後にこの本を読んで私が実践していることをご紹介します。
先述の「30秒鉛筆を握る」をヒントに、つい後回しにしてしまいがちな業務や書類は、「メールで報告書を送る」「書類を作成する」と考えず、「送る相手の宛先をメールにセットする」「紙を印刷する」と考えます。すると、気分が乗らなければそのまま放置し、うまくいけば「ついでにやってしまうか」という気持ちになりスムーズに終わらせることができるのです。単純なように感じますが、効果てきめんです。

忙しい日々の生活の中で勉強を続けることは、容易なことではありません。でも、一度受けた刺激はクセになり、もっと続けたいと思えるようになれば、一生モノの財産です。

(小川久恵)

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