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ヨーロッパ・旧市街を歩く

2007年01月16日

お元気ですか?新しい年がはじまりましたね。あなたに、幸せがたくさん舞い降りる一年になりますように。
さて、年末年始をはじめ長期休暇には、旅に出かける方も多いのではないでしょうか。私もご他聞に漏れず、時間をみつけては出かけていきます。そんな私には、海外を旅する時のお約束があります。それは旧市街を歩くこと。石畳の続く未舗装の道路、地図にない通り道、せり出す土産物屋。迷路のような街を歩きながら、歴史と今が交差する感覚に魅了されます。今日はわたしのお気に入りの旧市街を3つご紹介します。


パリからTGVで6時間、フランス・ニースは絵具のパレットのような街。
ニースは、フランスのリビエラとも呼ばれ、コートダジュール観光の玄関口でもある。「イギリス人の遊歩道」という意味をもつ海岸通り“プロムナード・デ・ザングレ”から、紺碧の海を望む。そこから北側に一本路地を入った旧市街には、陽気なヨーロッパの日常がある。サレヤ市場の朝市には、色鮮やかな野菜達、ハーブ、ヤギの乳のチーズなどに雑じって、ブリキの花桶が並ぶ。潮の香りとみずみずしい花の香りに、あぁ、異国に来ているのだと太陽のまぶしさに目を細める。2月のカーニヴァルでは、ミモザの花がとびかう「花合戦」が、春を運んでくる。そしてニースの旅に欠かせないもの、それは自身が設計したといわれるシャガール美術館。晩年、彼が愛した街の高台に立つ白亜の美術館には、旧約聖書をモティーフにした作品を中心に400点を超える作品に出会うことができる。シャガール・ブルーのステンドグラスを前に、時がとまったような感覚を覚える。
ルネッサンス発祥の地、イタリア・フィレンツェは恋人たちの街。
街を流れるアルノ川の右岸には一際目立つドゥオモ(大聖堂)とジョットの鐘楼、市政庁の置かれるヴェッキオ宮・・・歴史とともに生き、歴史を守るために存在する古都である。迷い込んだ路地で、夏休みだけの語学留学に来ているという大学生達と知り合った。彼は日焼けした顔に幼さが残る、彼女のほうは、デコボコの石畳だというのに、ヒール靴でさっそうと闊歩している。「オレたち、付き合っているんっすよ」「違うって」とやりあう二人が、いつしかレンガ色の街並みに溶け込んでいく。どこからともなく聞こえてくる鐘の音は、ルネッサンス期の天才芸術家たちも耳にした音。映画「冷静と情熱のあいだ」で、かつての恋人たちが再会を約した場所も、ドゥオモであった。あぁ、やっぱりこの街には恋が似合うなと感じるのだ。一緒に旅するひとと、寄り添って歩きたくなる・・そんな街。いま恋をしているひとにも、ご無沙汰なひとにも、小さな魔法をかけてくれる。
チェコの首都・プラハは、歴史の息吹に包まれた街。
“プラハの春”と呼ばれた改革運動と弾圧。激動の歴史を経た市民生活を見守ってきたティーン教会が、陽の沈んだ街に幻想的に浮かび上がる。あぁ、なんて美しいのだろう、まるで満月に心乱れるようなざわつきを覚える。きらびやかさはないが、吸い込まれそうな夜景に、秘められた魔力が隠されているのだ。
旧市街の建物の壁には番地がわりの紋章、昼間から飲むチェコビール、霧がかかった石畳の街やモルダウ川の景色、そんな自分だけのプラハを探すことが楽しい。
チェコといえば、この国に生まれた画家、アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)を思い出す。アールヌーボーの代名詞ともいえる彼の描く女性も、凛としていて女神のようで、神秘的である。街もミュシャの絵画も、東の影を感じさせる佇まいが、不思議な魅力である。
旧市街の魅力とは何でしょうか。車一台が通るのがやっとの道幅で一歩進めば、肩と肩がふれあい、視線がぶつかり、会話がうまれます。目の色も違う言葉も違う、異文化が交差する瞬間です。地図を見ても迷う街を、自分の嗅覚だけを頼って歩いていく・・・時には迷子になることさえ楽しんで。歴史ある石畳を歩きながら、タイムスリップしたかのように中世に思いを馳せます。
最近、旅の楽しみ方は、人生の楽しみ方にも通じると思うようになってきました。風景や出会いの一瞬一瞬を、心のカメラに焼き付けていく。時に歩きにくい道でも、迷子になっても、自分なりの楽しみ方を見つけようと思うようになりました。
これから訪ねてみたい旧市街は?と聞かれたら、クロアチアのドブロブニクとモロッコのマラケシュと答えます。迷路と大きい空に出会えそうです。これからも、路地裏歩きを、気ままに楽しみたいと思います。
あなたは、旅を、そして人生を、どんな風に楽しみますか?
どうぞ素敵な一年を。
(中西真紀)

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