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『パパはウルトラセブン』

2007年02月13日

絵と文:みやにしたつや
出版社:学習研究社; 発行年月:1999年11月; ISBN:9784052011078; 本体価格:1,200円(税込価格1,260円)
書籍詳細

2006年11月29日午後11時45分、ウルトラシリーズや数々の映画の演出で知られる、実相寺昭雄監督が亡くなりました。
私は監督とは一面識もありませんでしたが、リアルタイムで初代ウルトラマンに熱狂し、現在もゴジラや仮面ライダーも含めた特撮ドラマに心を躍らせる“特撮オタク”ですし、また共通の知人を通してささやかな交流もありましたので、訃報には大変ショックを受けました。


おりしも、テレビでは昭和時代の“ウルトラ兄弟”の設定を復活させた『ウルトラマンメビウス』が放映されています。また、昨年公開された映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』でも、ウルトラマン・ウルトラセブン・ウルトラマンエース他昭和のウルトラマン達が大活躍を見せてくれました。(ちなみに変身するのは、ハヤタ役の黒部進氏をはじめ完全オリジナルキャストであり、まさにウルトラマンの同窓会です)
実相寺監督も前作『ウルトラマンマックス』に続き、監督としての依頼もあったようですが、健康上の理由と他の作品のスケジュールとの関係で、残念ながらメビウスでメガホンを取られることはありませんでした。
さて、ウルトラシリーズにおける実相寺監督といえば、皆さんはどの作品を思い出されるでしょうか。
ハヤタがカレースプーンで変身しようとして笑いを誘った、ウルトラマンの『空の贈り物』ですか?それともモロボシダンとメトロン星人がちゃぶ台を挟んで対峙した、ウルトラセブンの『狙われた街』かもしれませんね。また、「これは子供にはわからないのでは?」という議論を巻き起こした、ウルトラマンダイナの『怪獣戯曲』の映像美と不条理性も、特撮オタクとしては捨てがたいところです。
しかしこうして振り返ってみると、実相寺監督の映像作家としての凄さとともに、多くの監督の多様な作家性をすべて受け入れ、なおかつ子供番組として40年間も成立し続ける、ウルトラシリーズの偉大さに今さらながらに驚かされます。
そこで今回は、実相寺監督を偲ぶ意味も込めて、ウルトラシリーズから我々が学んだことを、絵本という媒体で再確認させてくれる『パパはウルトラセブン』をご紹介させてください。
作者(絵と文)である「みやにしたつや(宮西達也)」氏は、本作品の他にも『おとうさんはウルトラマン』等ウルトラシリーズを題材にした絵本を描いています。また、ティラノサウルスと子供のアンキロサウルスの交流が温かい涙を誘う、『おまえうまそうだな』も名作です。
この絵本を買ったのは数年前ですが、大人である私も笑わせて、そして泣かせてもらいました。この“ひとりムスメのいる(というオリジナル設定の)ウルトラセブン”は、まさに“私の分身”でした
ご多分に漏れず、私もムスメに甘い父親です。セブンと同様ムスメのワガママには弱いし、「わたしパパと結婚する」なんて言われれば目尻をだらしなく下げてウルウルしてしまいます(現在6年生なのでもう言ってはくれませんが)。
そして父親としての心配も絶えません。セブンも「いつまで手をつないで歩けるか」と少し悩んでいるようですが、ムスメが年頃になって彼を連れてきたりすることを考えると・・・しかもその彼が・・・これ以上はやめておきましょう(笑)
さて、私はさきほど「この絵本のセブンは私の分身だ」と言いました。しかし実はそれは正確ではありません。私はこんなに立派な人間(厳密にはセブンは人間ではありませんが)ではなく、ある意味このセブンは父親としての私の理想型なのです。
絵本の中でもセブンはいつも全力で戦い、そして逃げません。仲間(カプセル怪獣)達を思いやり、プロテ星人のウソもムスメの小さなウソも許しません。
それに比べて私は?
 本当に全力で戦っているか?
 何かから逃げようと思ったりしてないか?
 仕事の仲間や友人達を本当に大切にしているか?
 ウソやいい加減な言い逃れをしていないか?
これらの問いに私は、残念ながら100パーセント「大丈夫!」と胸を張ることはできません。
そして再び自問自答するのです。
 自分はセブンに、理想の父親にはなれないのか?
 いや、そんなことはない。まだ、時間はたっぷりあるのではないか?
この絵本はある意味私を打ちのめし、そして奮起させてくれました。
なんと調子のいい男だと思われるかもしれませんが、今からでも本当にムスメに胸を張れるパパになりたいと思ったのです。ムスメが皆に誇れるような父親に、セブンのような男になれるのだと信じながら。
なぜなら、セブンが戦い続けられる理由も、私が戦い続けられる理由も同じだからです。
そして天国の実相寺監督をはじめとして、ウルトラマンを創ってくれた人々も、この想いは同じだったと思うのです。
だからそれを思い出させてくれるこの絵本とウルトラシリーズ、及び制作関係者に感謝したいのです。
「特撮なんて卒業したよ」という皆さんも、もう一度ウルトラマンやウルトラセブンに思いをはせてください。この絵本を手に取ってみてください。
きっと私と同じ、たいせつな「戦い続ける理由」を思い出すはずです。
そう、この絵本は最後にこう結んでいます。

だって・・・まもらなくては いけない ひとが いるから。
パパは ウルトラセブン。

(桑畑幸博)

パパはウルトラセブン

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