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あじさいに彩られる鎌倉

2009年06月09日

6月の鎌倉―――
これまで何度となく訪れた鎌倉ですが、印象に残っている風景の1つが雨に濡れるあじさいです。特に、この季節になると、あじさいが咲きほこる美しい景色を思い出します。今月は、鎌倉のあじさいに思いを馳せてみたいと思います。
皆さんは、鎌倉にどんなイメージを持っていますか?古都、大仏、寺社、海、文学など、さまざまなイメージがあることと思います。鎌倉は、私にとっては、人生の或る時期、最も足を運んだ、とても思い出深い街のひとつです。私は、鎌倉を訪れると、何か大きなものに包まれる感覚を感じます。それは、鎌倉の空気に触れると、観光地としての喧騒をも包み込む大きな静寂感を感じたり、はるか昔から脈々と流れる悠久の歴史の一幕にいることを感じたりするからです。ひとことでは表せない不思議な感覚になる街なのです。そんな感覚を感じながら、鎌倉の魅力に取りつかれた時期があったのです。


多くのお寺や神社を訪れたり、おしゃれな小町通りでお買物をしたり、さわやかなハイキングコースを歩いたり、風情のある江ノ電にゆられて青く広がる海を眺めたり、これまで、さまざまな鎌倉を五感を通して、楽しんできました。
そして、それらとともに、忘れてはならないのは、自然の美しさ、特に草花の美しさを楽しめる街であるということ。鎌倉には、花がよく似合います。
鎌倉は、四季折々に、さまざまな顔を見せてくれる街です。春には華やかな梅や桜が、初夏には花菖蒲やまぶしい若草が、夏には強い陽差しに映える青々と茂る木々が、秋には彩り豊かな紅葉が、冬には寒さに耐えるツバキや冬ボタンが、私たちの目を楽しませてくれます。そして、季節によって違った空気感があり、それぞれの季節には、色、臭い、音、味があるように感じます。
そんな四季折々に趣のある鎌倉ですが、私の好きな鎌倉の季節のひとつは、この6月の梅雨の時期です。雨が嫌いな私でも、6月の鎌倉の雨だけは別です。唯一好きな雨といっても過言ではありません。あじさいは、晴れ晴れとしたお天気よりも、シトシトとした雨が一番似合う花だからです。暗く沈んだ空の色に、雨に濡れたあじさいの赤や紫や青の色が、より際だつその姿が、とても美しいのです。
私のお気に入りの鎌倉のあじさいの名所を3つご紹介しましょう。
◆成就院
成就院は、極楽寺坂切通の途中の高台にある小さな寺院です。梅雨の季節になると、その参道は、あじさいに埋め尽くされます。青、赤、紫と、色とりどりに咲きほこり、その美しさに目を奪われます。参道を歩くと、両側から、人の背丈ほどもあるあじさいに木に囲まれ、どこか異空間に来たような錯覚を覚えます。
この参道の石段は、人間の煩悩の数とされる108段あり、その両側に植えられているあじさいは、般若心経の文字数と同じ262株が植栽されているそうです。なんとも鎌倉らしい深い意味を感じます。
石段を上って、門前から東側を見下ろすと、由比ヶ浜の海岸が、あじさいの向こうに拡がり、見事な景色を見ることもできます。
◆明月院
鎌倉のあじさいといえば、なんといっても、“アジサイ寺”として有名な「明月院」です。北鎌倉駅から徒歩10分ほどのところにある、普段は静かな寺院です。梅雨の季節には、約2500本のあじさいの花が境内を彩り、その静かなお寺が、多くの観光客で賑わいます。私の明月院のあじさいの印象は「青色」。何気ない記憶でしたが、調べてみると、それにも理由がありました。明月院のあじさいの9割が「ヒメアジサイ」という日本古来の品種で、花が小ぶりの青いあじさいなのだそうです。淡い青から雨が降るごとに青さを増す、そんなヒメアジサイを意図的に植栽しているとのことです。
明月院は、鎌倉有数の「花の寺」として、あじさいの他にも、境内には多彩な植物があり、四季を通して美しい草花を鑑賞できる場所でもあります。
◆長谷寺
巨大な十一面観音菩薩像で有名な長谷寺は、あじさいの名所でもあります。境内全体で2200株のあじさいがあるそうです。眺望散策路沿いの山の斜面には、特に多くのあじさいが植栽され、早咲きのものから遅咲きのものまで、色とりどりに、目を楽しませてくれます。山の上から見下ろせば、眼下には彩り豊かなあじさいと、その合間から、由比ガ浜の景色が広がっています。長谷寺では、かわいいリスもよく見かけ、豊かな自然に囲まれた趣ある寺院です。
その他、北鎌倉の東慶寺や円覚寺、長谷の光則寺、扇ガ谷の海蔵寺などでも、美しいあじさいを楽しむことができます。
いまがちょうど見頃です。ぜひ、雨にしっとり濡れるあじさいを、堪能しに鎌倉に出かけてみてはいかがでしょうか?鬱陶しい梅雨を楽しくさせる小さなイベントとして、私も久しぶりに、鎌倉に出かけてみたくなりました。
参考文献:『花紀行 鎌倉花の名所12ヵ月』(山と渓谷社)
(井草 真喜子)

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