2003年05月13日
片岡 勝 「コミュニティービジネスが創る新しい日本」
片岡 勝 市民バンク 代表 >>講師紹介
講演日時:2003年2月4日(火) PM6:30-PM8:30
片岡氏は、豊かな地域社会づくりに貢献できる、社会性のある様々な事業を支援されています。融資に当たって、担保も実績もいらない、「夢が担保だ」という名言(!)を生み出したのは10年くらい前だそうですが、いまだに貸し倒れはゼロ、片岡氏の支援を受けコミュニティーに根ざしたビジネスが、全国に根付きつつあります。
さて、今回の片岡氏の講演は相当に辛口でした。片岡氏は、「世界における、日本のレゾンデートル(存在意義)が見えない」とまで言い切ります。そんな憂慮の背景にあるのは、「過去の積み重ねや前例主義といった従来型の発想や、管理型社会・組織では、これからの時代に対応できない」という強い問題意識です。まず、最初のやり玉に上がったのが、「行政」でした。行政の対応は、左脳的(論理的)で一見筋が通っているように感じられます。しかし、それは内部の理論に過ぎず、外部では通用しない。
また、個別の利害関係に捉われ、ミッションやビジョンを創りだす力が失われている。そう片岡氏は感じてらっしゃるようです。「彼らはまじめにやっているから、かえって困る。まじめに足を引っ張っている、まじめに組織をダメにしている」のだそうです。そして、行政に限らず、「タテ型管理型社会の日本全体が、まるでシーラカンスやマンモスのように、変化に対応できなくなってきており、空白の10年と呼ばれた90年代のようなことを繰り返すだろう、そして、永遠の空白に向かって突き進んでいる。」との辛らつな意見に驚かされました。
そしてまた、片岡氏は、大学教育に対しても厳しい批判の目を向けています。「日本の大学に行かせる親はいなくなるだろう。」「大学には、何のために教えているのかというビジョンが欠けている。」現在、世界における日本の国としての競争力は大きく低下しており、順位で言えばブービーあたりにいるそうですが、その最大の要因が「教育の悪さ」だそうです。特に国立大学に見られるような「根拠のない権威主義」が元凶です。片岡氏自身、いくつかの大学の講師をやられており、現在の教育の問題点がよく見える立場にいらっしゃいます。
しかし、一方で教育ほど面白いものはないそうです。伸びると思った学生が伸びず、期待していなかった学生が大きく伸びる。片岡氏は、「知恵と勇気」を教えているそうですが、要は、知識を振り回さず、とにかく一歩踏み出してみること、リスクを取ること、失敗を恐れず、むしろ楽しむこと、といった、前例が通用しないこれからの時代に求められる基本的な姿勢を説いてらっしゃるようです。
ところで、片岡氏は、今後徐々に軸足をアジアに移していこうと考えているそうです。日本の存在意義が見えない中で、ではアジアの中で日本ができることは何か、を見出したいとのことでした。それは、コミュニティービジネスと基本的な考え方は同じかと思いますが、アジアにおける社会的な共通基盤(資本)を生み出すことのようです。コミュニティービジネスは、その地域に利害関係を持つ人たち(ステークホルダー)が自ら取り組むビジネスです。老人介護や給食サービスなど、行政主導ではもはや対応できない、様々な地域の問題を地域に関わりのある人たちが自ら解決するということです。
10年前は、こういったビジネスには誰もお金を貸さなかったそうですが、片岡氏は、なによりもビジョンを大切にし、事業を立ち上げようとする人そのものを真剣に見ることで、貸し倒れを起こさなかった。現在、片岡氏が関与する企業は、きちんと利益を上げ、相応の内部留保もあるそうで、事業を大きく展開する時期にあるとおっしゃっていました。アジアがその展開先ということでしょう。
片岡氏は、これまで右脳的発想で直感的に動いてきたそうです。確かに、片岡氏が取り組んできた事業は、どれも前例がなく、頼れる理論はありません。したがって、自分で考え、現場に出て実際にやってみるしかありません。出たとこ勝負で、とことん現場主義の片岡氏ですが、口先だけの批評家とは異なり、実際に明確な結果を出されてきた方だけに、なるほどと納得せざるを得ない力強いお話でした。
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劉 慶紅
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
日本経営倫理学会常任理事
稲盛経営哲学に学びながら、人間性を尊重し、利潤追求と社会貢献の統合をめざす経営学理論を構築する、新論が真論となり、不易流行の経営学として結実することを目指して。
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福澤 克雄
(株)TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部、演出家・映画監督
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