学びの体験記
2003年10月14日
『ビジネスプロフェッショナルのための交渉学』を受講して
MCC「知的基盤能力」開発ワークショップ・プログラムの1つである『ビジネスプロフェッショナルのための交渉学』に参加された、現在NECメディアプロダクツ株式会社にて教育コンテンツや販促マテリアルの企画・製作をご担当されている宮奈樹理さんに、プログラムに参加された動機やご感想、そして、いま学んだ知識をどのように活用されているか、について書いていただきました。
ビジネスプロフェッショナルのための交渉学―”Win-Win” の相互発展を目指す
【講師】田村次朗 (慶應義塾大学法学部教授)
【日時】2003/6/17 – 7/29 全6回 3時間/回
皆さんは「交渉」という語から、どんなシーンを思い浮かべるでしょう? 価格交渉、労使交渉、示談交渉…自分の利益を確保するためのかけひき?
「ビジネスプロフェッショナルのための交渉学」では、交渉をこう定義しています。
“合意形成、相互の関係性の強化・発展のための、思考プロセスとコミュニケーション”
教育用コンテンツや販売促進マテリアルの企画・ライティングの業務において、“所詮、顧客には逆らえない立場だから”と提案に及び腰になったり、時には自分を守るために駆け引きも辞さない気持ちで顧客に接したりする、自分の交渉の不毛さや限界を感じていた私には新鮮な定義でした。プロセスに納得した上で、お互いにハッピーになれる合意形成に至れるなんて!(言葉としては美しいけれど、本当に実現可能?と懐疑しつつ…)
4月22日の『夕学五十講』「プロフェッショナルの交渉学」を受講して、交渉のファンダメンタルズ5原則(てらこやVol.04Learner’s Eye Vol.4参照)を学び、推薦図書として挙げられていた「ハーバード流交渉術」(Roger Fisher著) を読みました。理論に納得できても、実践できるかどうかは別問題です。そこで、「模擬交渉の実践を通じて、体験的に修得して」いくことを謳った本プログラムに参加しました。
「ビジネスプロフェッショナルのための交渉学」で学んだこと
私は、「ビジネスプロフェッショナルのための交渉学」のセッションを通じて、交渉学の基礎、小手先のテクニックではなく「交渉とは何か」を学びました。また、その基礎を理解していても実践できない癖がついている自分に気付いたことが大きな収穫だったと思います。
講義を受けて、書籍を読んで、理論に納得していただけに、まさか自分の中に理論の実践を阻む要因があるとは思っていませんでした。この癖こそが、理論の実践を阻む要因であり、理論に納得できるのに懐疑的になる原因だったのでしょう。自分の癖を知ることで、ビジネスプロフェッショナルとしてwin-winの合意形成に至る一歩を踏み出せたように思います。
レクチャー×模擬交渉×フィードバックの効力
「ビジネスプロフェッショナルのための交渉学」は6回のセッションで、1回のセッションはレクチャーと模擬交渉とそのフィードバックから構成されています。レクチャーでは、『夕学五十講』の講演でうかがったお話をさらに掘り下げて解説していただきました。小さな疑問もその場で質問して示唆や回答をいただくことで、一人で書籍を読んでいたときよりも交渉学への理解を深められたように思います。
続く模擬交渉とフィードバックでは、理論に加えて、「自分」を知ることができました。本を読んでもレクチャーを聴いていても納得していたはずの「ゼロサムの中で利益を奪い合うのではなくてパイを広げることを考える」とか「立場に固執せずに何が問題かに焦点を当てる」といったことをすっかり忘れて、近視眼的に目先の利益をとることに夢中になっている自分に気付かされました。フィードバックのたびに、このケースにこんなアプローチができたのか、と目から鱗が落ちました。
復習+ログの効力
模擬交渉とフィードバックで、自分が陥りやすい罠、犯しやすい失敗を確認したら、「では、どんな考え方をすればよかったのか」まで考える必要があります。ただ、残念ながら、セッションの中では、フィードバックの後もう一度同じケースで模擬交渉をする時間はありません。
それを補完するために、フィードバックで挙げられた、他の受講生の意見や、田村先生、隅田先生からの示唆をまとめたログが、セッション後すぐにリリースされます。ログを見ながら、自分の意見を見直すことで、自覚した自分の癖を多少なりとも直すことができたように思います。自習に加えて、他の受講生とのオフセッションの勉強会で、ログを元に意見交換したり、再・模擬交渉したりすることも有効でしょう。
他受講生との交流の効力
プログラムの一環として提供される、レクチャー、模擬交渉、フィードバック、ログなどの受講サポートに加えて、今回、私の勉強のリソースになったのが、一緒に受講なさっていたみなさんでした。私より年上で、交渉について百戦錬磨な先輩方が多く、模擬交渉でお相手していただいたり、オフセッションでお話をうかがったりする中で、興味深い示唆や情報をいただきました。
プログラムを修了して2カ月
「ビジネスプロフェッショナルの交渉学」を修了して2カ月が経ちました。30年近く醸成されてきた癖は一朝一夕に直るものではありません。今でも、時々、セッションのテキストやログを見返しては自分の癖を再確認しています。それでも、顧客との打ち合わせ中に、「原則立脚」、「利害に焦点」、「人と問題の分離」といった本プログラムのキーワードが頭に浮かぶたびに、私にとって本プログラムは意義があったと、改めて認識します。
(宮奈 樹里)
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