HOMEへ戻るMCCマガジン髙塚 猛 「会社再建の経営哲学」

髙塚 猛 「会社再建の経営哲学」

2004年02月10日

髙塚 猛 福岡ダイエーホークス オーナー代行 >>講師紹介
講演日時:2003年11月26日(水) PM6:30-PM8:30

「福岡ダイエーホークス」のオーナー代行、髙塚 猛氏のご講演は、表面的にはソフトで淡々とした印象を受けました。しかし、不思議なことに、髙塚氏の言葉は、聞いている人の心の奥深くまで届きます。髙塚氏は、数多くの企業の建て直しに成功を収めてきた名経営者ですが、そうした成功の根本にあるのは、髙塚氏に会った方なら誰もが感じるであろう、相手を柔らかく包み込んでしまう暖かな人間性に違いない、お話を聞きながらそんなことを考えていました。


さて、髙塚氏によれば、「真実」には2種類あるそうです。一つは、「事実」という真実、もう一つは、「実感」という真実です。「事実」は過去をひきずっています。すでに過ぎてしまったことです。一方、「実感」とは、「これからこうなるだろう(こうしたい)」という思いです。そして、この「実感」(思い)こそが、人の心を打ち、響かせることができると髙塚氏は考えています。したがって、経営者やリーダーは、この実感(思い)を実現するため、言い続けることが必要なのです。髙塚氏はこうも言います。
「経営者に唯一許されるうそがあるとするなら、それは目標を高く掲げ、それは実現できると言い続けることです。」
経営に奇跡はありません。また失敗もありません。ただ思い通りに行かないだけです。経営者が「実感」(思い)にこだわり、全社員がその思いを共有するように働きかけ、社員の意識を変えることで会社は良くなって行きます。髙塚氏は、このようなやり方で、経営危機に陥った会社を次々と救ってきたのです。
企業は、人を止める業(ワザ)なり、と書きますが、企業においては、従業員が働く喜びや感謝の気持を持てること、お互いに「おまえとつきあえて良かった、うれしい」と言い合えるような組織として存続することが目的であり、売上や利益はそのための手段にしか過ぎないと髙塚氏は言います。そして、人(社員)に仕事をしていただくことがリーダーの役割であるから、社員に対するリーダーの取るべき行動として、次の4点が重要だと考えているそうです。

  1. 信じること
  2. 守ってあげること
  3. 教育目的でのみ叱ること
  4. 評価してあげること

さて、こうした髙塚氏の経営に対する考え方だけを読むと、髙塚氏の経営スタイルは精神面に偏ったものとお感じになるかもしれません。しかし、実際には、数字を重視した、極めてロジカルな経営を実践されていることが、今回のお話からわかりました。ご本人は、野球はほとんど知らないとおっしゃいますが、野球に関する様々な数字、各チームの平均打率やホームラン数、盗塁数といった数字を正確に把握されています。そして、そうした数字を左右する要因を分析した上で、有効な打ち手を次々と実施されているのです。例えば、以前のダイエーホークスの盗塁数は全球団の中で最低でした。これを引き上げるために髙塚氏がやったことは、5割以上の成功率であれば、失敗したものも含めすべて成功したものとみなす、という評価方法に変更することでした。この結果、選手は盗塁失敗のリスクを恐れなくなり、飛躍的に盗塁数が増えることになったのです。
髙塚氏によれば、何事も「原点」に立ち戻ると、抑えるべき箇所がピンポイントで浮かんでくるそうです。野球でいえば、「点数が入るというのはどういうことか」を考える。そして、点数が入るという「思い」を実現するため何に着目すべきか、どんなデータを大事にすべきかを見極めることが大切なようです。
また、髙塚氏は、将来の不確実なことのために、目先の確実なことを捨てる勇気を持つべきだと考えています。ダイエーホークスの名前を「優勝記念セール」のような商業目的で利用する場合、以前はロイヤルティ(著作権利用料)を徴収していましたが、髙塚氏はこれを廃止しました。福岡にある様々な地元商店にどんどん活用してもらうためです。これで当時5億円ほどあったロイヤルティ収入を失うことになったのですが、福岡では、ダイエーホークスの存在が日常の一部となるほどに浸透し、結果として福岡ドームの入場者数が増大し、球団全体の売上が大きく伸びるきっかけとなりました。これも、「思い」の実現のために着目すべき点は何か、をきちんと見極めることができたからこその成果でしょう。
髙塚氏のお話は、この短いレポートでは紹介しきれないほどの珠玉の言葉の連続でしたが、締めくくりの言葉がやはり最も心に残りました。
「人生は、努力した人に運という橋をかける」

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