HOMEへ戻るMCCマガジン谷田 大輔「タニタの経営論~世界初・家庭用体脂肪計、タニタ食堂 誕生秘話を交えて~」

谷田 大輔「タニタの経営論~世界初・家庭用体脂肪計、タニタ食堂 誕生秘話を交えて~」

2013年08月13日

谷田 大輔 株式会社タニタ総合研究所 代表取締役所長  >>講師紹介
講演日時:2013年1月22日(火) PM6:30-PM8:30

谷田氏は、1985年に株式会社タニタの代表取締役社長に就任し、世界初となる家庭用体脂肪計・体組成計の成功により、社長就任当時は赤字だった同社をヘルスメーター売り上げ世界No.1企業へと成長させた立役者です。現在は、高齢者の積極活用を目的として設立されたタニタ総合研究所の所長として、事業領域にとらわれない新事業の模索などに取り組まれています。
まず谷田氏は、現在重点的に取り組んでいることとして、「健康寿命を延ばすこと」についてお話されました。健康寿命とは、介護を受けたり、病気で寝たきりになることなく、自立して健康に生活できる期間です。


「健康寿命」は、厚生労働省が2010年に初めて算出したものですが、男性の健康寿命は70歳、女性73歳です。一方、いわゆる「平均寿命」は男性79.64歳、女性は86.39歳。平均寿命から健康寿命を引いた年数は、病気などでなんらか生活に支障をきたし、自立した健康な生活が送れない期間ということになります。この期間の長さは、男性は9.64年、女性は13.39年です。そこで、健康寿命を延ばすことができれば、より長く自立した健康的な生活を送ることが可能になります。
谷田氏は、健康寿命を延ばす上で大事なことのひとつが体重管理だと指摘します。体重管理をしっかりやらないと、私たちはすぐに体重が増えてしまいます。なぜなら、人類はかつて、獲物を狩ることに失敗すればたちまち飢えるしかない狩猟生活が長く続いたため、飢餓に強い遺伝子を持つ人が生き残ってきたからです。飢餓に強いというのはすなわち、飢餓に備えて体に余分な脂肪を蓄えることができるということであり、要するに太りやすいのです。
しかし、太りすぎは様々な病気の原因となり、寿命を縮めることにつながるため、適切な体重管理が必要です。谷田氏は、「年体重」という概念を用いて、体重と寿命との関係をわかりやすく教えてくれました。自分自身が、生涯の平均体重が50kgで100歳まで生きたとすると、「年体重」は100(歳)×50(kg)=5,000です。これは、私たちは、生涯において平均で5,000の負荷を背負いながら生きているということを意味します。そして、体重が重ければ重いほど負担が大きくなり、寿命が短くなるということがいえます。ですから、もし体重が60kgの人の場合だと、年体重5,000を60で割ることで寿命が算出できます。この計算結果は83.3歳。体重50kgのときより17歳も寿命が短くなります。また、70kgになると71.4歳(5,000÷70kg)と、体重が増えることで寿命が短くなっていくことが明白です。ですから、体重増加を抑えることが健康を維持し、寿命を延ばすことを可能にするのです。
さて、「体重計」で有名なタニタは、単に体重などを測定する機器の開発だけにとどまらず、人々の健康維持のために様々な関連事業分野へと展開を図ってきました。「体重計ビジネス」から「体重ビジネス」へと事業のコンセプト自体を変えることで幅広い分野が視野に入ってきたと谷田氏は述べます。中でも、近年、大きな注目を集めているのが「タニタ食堂」です。タニタの社員食堂で提供される、カロリーを抑えながらもおいしい料理のレシピ本がベストセラーとなり、また丸の内にできた一般向けのレストラン・タニタ食堂は連日行列ができる人気を博しています。
谷田氏によれば、現在のタニタの社員食堂が生まれるきっかけとなったのは、秋田に一貫工場を建て、生産部門を移転したことだったそうです。そして、東京にあった工場ビルを改装し、一般向けに「ベストウェイトセンター(健康体重管理センター)」と呼ぶ減量を目指す人のための各種サービスの提供を1990年に開始しました。当初は、有酸素運動主体のフィットネスクラブでしたが、運動だけでなく、食事・栄養についての指導も行なうようになり、料理教室を開催したり、健康的な食事を出すレストランを併設しました。ちなみに、食事の指導については、ご夫婦で受けられるほうが効果があがるそうです。夫の体重管理のための食事は、妻の協力が必要だからです。
ベストウェイトセンターは15年続けたものの、残念ながら赤字のため一般向けは中止し、社員向けの福利厚生サービスへと転換しました。しかしながら、この事業を通じて、「体重」に関わる様々な知識が社内に蓄積でき、近年のレシピ本やタニタ食堂の成功へと結びついたのです。
谷田氏は、タニタが「体重計ビジネス」から「体重ビジネス」へとコンセプトを変えることで、さまざまな分野への展開やヒット商品の開発が実現したように、コンセプトを変えることで会社を変えることができると信じています。
タニタでは、今、さらに進化して「体重ビジネス」から、「健康ビジネス」へのコンセプトの転換を図っています。コンセプトを変えるとは、すなわち、商品の顧客価値を高めることでなければなりません。体重ビジネスでは、食事や運動が主体になりますが、健康ビジネスは、血圧や体温といった他の身体状態の測定や管理が視野に入ってきます。タニタではこうした関連事業への拡大に加えて、海外販路の開拓、海外での商品開発にも積極的に取り組んでいるそうです。
今後のタニタの展開も楽しみです。

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