KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

学びの体験記

2004年03月09日

『ネットワーク時代の組織とリーダーシップ』に参加して

MCC「知的基盤能力」プログラムの1つである『ネットワーク時代の組織とリーダーシップ』に参加された、学校法人北里学園にて経営・組織運営に携わっている平野崇雄さんに、プログラムに参加した動機や感想、そして、いま学んだ知識をどのように活用されているか、について書いていただきました。

ネットワーク時代の組織とリーダーシップ
【講師】高木晴夫(慶應義塾大学大学院経営管理研究科、ビジネス・スクール教授)
高田朝子(高千穂大学経営学部助教授、経営学博士、慶應ビジネス・スクール非常勤講師)
【日時】2003/5/20 – 7/9 全6回 3時間/回


野球型とサッカー型
のっけからスポーツの話題です。野球もサッカーも人気スポーツですが、組織戦略では随分異なります。まず野球ですが、攻撃・守備を問わず、監督のサイン(指示)で動くことが頻繁で、選手個々の状況判断にまかせて、自由にプレイさせる場面は少ないです。一方、サッカーは、ピッチに出たら攻撃も守備もすべて選手にまかせて、監督の主たる仕事は選手交代くらいです。選手は幾つもの戦術をあらかじめインプットしておき、試合中は選手間のコミュニケーションを密に取り合っています。
ベルトコンベヤーからセル方式へ
最近とみに名高い某光学機器メーカーの話です。この会社では経営革新を模索する中で、ベルトコンベヤー方式から、1人の従業員が多工程を受け持つセル方式に切り替えました。その結果、ベルトコンベヤーの大量廃棄とそれに伴う広大な空間が生まれました。そして作業員の習熟につれて、生産性が3割以上も向上し、 3分の1のコスト減につながったと聞きます。セル方式とは、一人で最初から最後まで部品を組み立てて製品を仕上げていく自己完結型の生産方式です。作業員がセル(細胞)を形成しているように見えることから名づけられたと推察します。この方式によって、作業員の製品に対する責任感や仕事に対するモチベーションは飛躍的に向上し、工場全体が生き生きとして来たそうです。
階層型からネットワーク型へ
20 世紀型工業社会では、いわばベルトコンベヤーにイメージされるような上から下への階層型(ヒエラルキー型)組織が有効に機能しました。しかし、21世紀型情報社会では、ネットワーク型(自律分散型)組織の方がより機能的です。ネットワーク型組織の特徴は、構成員一人ひとりが自律性を持ち、かつ組織に自発的にコミットできる風土です。私は野球もサッカーも好きですが、どちらかといえばサッカー型組織の方がこれに近いように思います。また、上記メーカーの事例が示唆するとおり、セル方式(一人完結組立ライン型)は組織の変革と人の意識改革を同時に促進し、生産性の向上をもたらしました。
ネットワーク時代のリーダーシップ
21 世紀は、企業組織のみならず、一般社会においても多様な個性と能力を持った人々が協働(コラボレート)し合う自律分散(Network/Web)型社会になりましょう。何より意見や文化の違いを乗り越えて、かつ共通の目的に向けて、各自のパワーのシナジー(相乗効果)を生み出すことが求められます。従って参加者一人ひとりの主体性や当事者意識を育み、優れた合意形成や問題解決を生み出せるようなリーダーが期待されるのは当然です。最近、ファシリテーターという役割が注目されている理由にはそういう背景もあるのではないでしょうか。
ケースメソッド学習を知る
私は組織やリーダーシップの変遷について、以上のような関心を抱いていました。その折、当ワークショップ(以下WS)の開講を知り参加を決めました。ケースメソッドを主体としたWSは毎回楽しく大変有意義でした。事前準備でケースを読み込むほど、自分と登場人物を重ね合わせたり、自社の現状とオーバーラップしたり、はたまた全く別の世界を疑似体験したりと、参加者それぞれの楽しみ方があったようです。事前課題はできた人から自主的にメーリングリストに流し、当日は、職種や業界、世代などを越えて、毎回活発なディスカッションを行いました。その中で、互いに新たな視点や多様な考えを知り、貴重な気づきを得ました。そして毎回の締めでは、高木・高田の両先生が理論的体系的な裏づけを持って総括され、さらに見識を深めることができました。
チーム効力感を味わう
このように、ケースメソッド学習は、一方的な座学と違い、頭と体をフルに使って理解し体得するので満足度が全然違います。加えて、そもそも“ネットワーク型組織”を学ぼうという人が集まっているせいか、みなが受身でなく、かつ参加意識が高かったので、自然と“チーム効力感”を高める方向に向かいました。私もせっかくの機会と思い、専用メーリングリストを積極的に活用し、また毎回のセッション終了後には努めて“親睦”と“交流”を図りました。さらに先生方のお人柄も相まって、今でもクラス会を定期的に開催しています。とりわけ今年の新年会は出席率ほぼ100%という驚異的な数字に達し(総勢17名)、今なおチームの結束を保ち続けています。そして忘れてならないのが事務局の存在です。多くの成果を得られたのも、事務局の的確なナビゲーション・サポート・フォローがあってこそと大変感謝しております。そこが他のスクールとは一味違うところでした。
組織学と免疫学とネットワークと仏教
先ほどのセル(細胞)という言葉に関連しますが、高木先生は、組織学と免疫学に自律・自立などの視点から、両者には多くの共通点が見出せると指摘されます。また、ネットワークとは、今に始まった概念ではなく、仏教的な言葉を使えば、「縁」ということにほかならないともおっしゃいます。こういう話の展開は実にユニークで興味の尽きないところでした。私はこのWSに参加し、幅広い“ご縁”を戴くことができました。
(平野崇雄)

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