HOMEへ戻るMCCマガジン山本 一太「日本復活・希望のシナリオ~新時代のリーダー像~」

山本 一太「日本復活・希望のシナリオ~新時代のリーダー像~」

2010年01月12日

山本 一太 元外務副大臣、参議院議員 >>講師紹介
講演日時:2009年11月10日(火) PM6:30-PM8:30

山本氏は、今日の講演の準備のため、タイトルにある「日本復活・希望のシナリオ」について具体的にどのような方向性があるだろうかと、様々な資料をひも解きながら考えてみたそうです。しかしながら確実な復活が見込める希望のシナリオを生み出すのは簡単ではありません。現在の日本を取り巻く環境は厳しいものです。少子高齢化により、2004年の1億4千万人をピークとして日本の人口は減少を始めており、2055年には9千万人程度になると見込まれています。そして、5人に2人が65歳以上という超高齢社会を迎えます。これが日本の経済停滞を招くことは間違いないと、山本氏は考えています。
そもそも最近は、中国やインドなどの新興国の急速な経済成長の影で日本の存在感は大きく低下しています。山本氏は、基本的には日本も経済成長を志向することが国の活力を維持し、また世界で重要な役割を果たすために必要であると信じています。そのため、今年、新たに政権を担うことになった民主党には、現時点で明確な「成長戦略」が欠如していることを憂慮されています。


さて、山本氏によれば、小泉純一郎氏が推進した構造改革路線は間違っていなかったと考えています。残念なのは中途半端で止めてしまったことです。小泉氏は首相を5年務めました。しかし、小泉氏の意思を受け継いだ安部晋三氏以降の首相は、短期間で次から次へと交代し、構造改革を成し遂げることができませんでした。大きな変革による果実(成果)が得られるようになるまでには10年20年という長い時間がかかるのです。ですから、成果が出るまで、非難・批判を浴びても負けることなく、明快な信念を持ち、毅然とした態度を示せるリーダーの存在こそが、希望のシナリオにおいて必要不可欠なのです。
構造改革を成し遂げたリーダーのひとりとして、山本氏は英国のサッチャー首相を挙げました。「鉄の女」と言われたサッチャー氏が、首相に就任した後の最初の 5年間は非難ごうごうでした。経済は就任前よりも停滞し失業率も上昇したからです。しかし、サッチャー氏は大きな改革に伴う痛みを耐え抜きます。6年目以降には経済成長率が伸長、失業率も大きく改善し、ようやく改革の果実を手にしたのです。サッチャー氏は、79年から90年まで実に11年間、英国首相の座にありましたが、優れたリーダであったサッチャー氏が、腰を据えて改革に取り組めたことが英国の復活につながったのです。
サッチャー氏と小泉氏は、どちらも「小さな政府」を志向し、この目的を成し遂げるまで迷わず突き進む「目的貫徹型」であった点で共通していました。また、改革の必要性を国民に納得させることができる強い「説得力」も持っていました。しかし、大きな違いが2つあったそうです。
ひとつは、サッチャー氏は改革をわずか1年で完了してしまったことです。スピーディにやるべきことをやってしまったのです。おかげで、反対派勢力に対し、巻き返しを図る余裕を与えませんでした。一方、小泉氏は、郵政民営化を始めとして、改革の実現までに何年も時間をかけてしまいました。そのことにより、元々の改革の中味が弱くなってしまったことは否めません。
また、サッチャー氏は、ピープルズキャピタリズム(民主的資本主義)を英国に根付かせるという目的を掲げて改革を推進しました。サッチャー氏は、明快な「理念」を持っていたのです。しかし、小泉氏は、「このままでは財政が破綻するから構造改革が必要だ」という論理であり、サッチャー氏のような理念を小泉氏は示していません。すなわち、サッチャー氏と小泉氏では、改革の原動力となる「理念の深さ」に違いがあったのです。
サッチャー氏の後、1997年に労働党党首として英国首相に就任したトニー・ブレア氏もまた、「生活大国を目指す」という理念を掲げ、世界のビーコン(航路標識)となる、すなわち世界の国々が英国を「目標」とするような国にしていくために、長期政権の間、やはり揺るがぬ信念を貫いています。山本氏は、このような優れたリーダーたち、言い換えると‘ベスト&ブライテスト’が日本の政界にも集まる仕組みがぜひとも必要だと考えています。
講演最後の30分は、山本氏が日本のベスト&ブライテストの1人と高く評価している参議院議員、田村耕太郎氏を壇上に招いて、対談されました。田村氏は派手なファッションで知られる、40代の若手政治家です。一般企業で働き、またMBAを取得、海外留学の経験もある田村氏。大阪日日新聞の社長も務めました。田村氏は、そもそも、政治家になることはまったく考えたことがなかったとのこと。しかし、一定の国家予算を元に国を運営していくという政治家の仕事は、事業経営に通じるものがある。だから、自分の経営者としての経験が活かせると考えたことが、政治家に転じたきっかけになったそうです。こうしたご自身の経験から、田村氏は、ベスト&ブライテストの政治家候補として、若手のオーナー型経営者が有望だと期待しています。自分が経営する事業からの収入があれば、政治家専業と違って落選を恐れることなく、思い切った政策を打ち出すことができるからです。
山本氏は、田村氏との対談の締めくくりとして、明快なビジョンと改革を断行できる勇気を持ち、また、素早い行動力、そして歴史の流れが読める優れたリーダーの必要性を強調して講演を終えました。

主要著書
政論! 山本一太vs次世代を担う政治家たち』クリーク・アンド・リバー社、2007年
なぜいま安倍晋三なのか』リヨン社/二見書房、2006年
私が総理になったなら 若き日本のリーダーたち』角川書店/角川グループパブリッシング 、2002年

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