HOMEへ戻るMCCマガジン一條 和生(一橋ビジネススクール 国際企業戦略専攻 専攻長/教授 IMD客員教授)

一條 和生(一橋ビジネススクール 国際企業戦略専攻 専攻長/教授 IMD客員教授)

2021年07月13日

慶應MCCにご登壇いただいている先生に、影響を受けた・大切にしている一冊をお伺いします。講師プロフィールとはちょっと違った角度から先生方をご紹介します。

一條和生(いちじょう・かずお)
  • 一橋ビジネススクール 国際企業戦略専攻 専攻長/教授
  • IMD客員教授
慶應MCC担当プログラム

1.私(先生)をつくった一冊をご紹介ください

二年間の休暇』福音館古典童話シリーズ
ジュール ヴェルヌ (著)
初版1968年4月1日

2.どのような内容ですか?

『二年間の休暇』は、日本では『十五少年漂流記』と言う邦訳名でも知られています。ニュージーランドの寄宿学校で学ぶ15名の少年が嵐の中、無人島に流されました。誰もいない無人島での生活という絶望的な状況に遭遇しながらも、希望を失わず、創意工夫とチームワーク、そしてリーダーシップで二年間の生活を無事に終える冒険小説です。著者はフランス人のジュール・ベルヌ。オリジナルの出版は1888年。日本でも有名な本ですから、読まれた方は多いのではないかと思います。2019年段階で68刷を重ねる、長きにわたって読み継がれている本です。

3.その本には、いつ、どのように出会いましたか?

『二年間の休暇』と出会ったのは1968年。私が10歳の時でした。その年、福音館書店から福音館古典童話シリーズの第一巻として、オリジナルタイトルの完訳『二年間の休暇』が出版されました。ページ数で525ページ。本の厚さは4センチです。持つとずっしりと思い。カラフルな表紙の本がベージュ色のカバーボックスに入れられており、今でも手にすると、特別な本という感じがします。どうして10歳、4月に小学校5年生になったばかりの自分がこの本を入手したのかはよく覚えていないけれども、読書を愛し、私にも本を読む喜びを教えてくれた父が買ってくれたのだと思います。

4.それは先生にとってどんな出会いでしたか?

私は『二年間の休暇』に魅了されました。あっという間に読み終えました、そして今でも大好きな本で、今、読み返してもワクワクします。何しろタイトルが魅力的です。二年間も休みがあるなんて、なんて素敵なことなのだろうと思いました。しかし、本を読み進めると、自分が住む世界(日本)とはまったく異なる世界があることを知って驚きました。二年間の無人島での漂流生活を体験した子供たちは私と同世代。彼らはニュージーランドの寄宿学校で学んでいて、そこではイギリス人、フランス人、アメリカ人など、さまざまな国々の子供たちが学んでいました。日本人だけで学んでいる自分とは別世界でした。自分には知らない世界があるのだな、と思いました。そしてそういう世界をもっと知りたいと思いました。グローバルな世界との出会い、関心の高まりでした。

本を読み進めていくとさらに驚いたのは、子供たちの行動でした。15人の少年たちは初代大統領を選び、最年長で思慮深いアメリカ人のゴードンが初代大統領になりました。ゴードンは生活の日課表を作り、午前と午後の2時間ずつを学習時間に充てる、年長の少年たちが交代で教師役を務める、少年たちに炊事洗濯を分担させ、寒暖計や気圧計の記録係、日付の記録と時計の管理者を定めるなど、規律を作り上げていきました。こうして、島での生活は次第に軌道に乗って行きました。まさにリーダーシップの発揮でした。二年間の休暇を経て、15名の少年は大きく成長していったのです。

5.この本をおすすめするとしたら?

『二年間の休暇』に書かれた世界に私は魅了されました。10歳の私はそれがなぜだったのかわからなかったと思います。しかし、それは、今の私の専門分野、グローバリゼーション、リーダーシップに繋がっていると思います。いわば暗黙知として、今の自分を築き上げてくれた。だからこそ、『二年間の休暇』は、「私をつくった一冊」なのです。コロナ危機の中でも、未来に希望を持ち、自信を持って、危機を克服していくことが大事なことも『二年間の休暇』は教えてくれます。皆さんも今の自分を知るに、小さな頃に出会った本を思い返してみてはいかがでしょうか。

二年間の休暇
著:ジュール ヴェルヌ ; 出版社:福音館書店、岩波少年文庫; 

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