私をつくった一冊
2024年11月12日
松尾 睦(青山学院大学経営学部教授、北海道大学名誉教授)
慶應MCCにご登壇いただいている先生に、影響を受けた・大切にしている一冊をお伺いします。講師プロフィールとはちょっと違った角度から先生方をご紹介します。
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- 松尾 睦(まつお・まこと)
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- 青山学院大学経営学部教授
- 北海道大学名誉教授
1.私(先生)をつくった一冊をご紹介ください
2.その本には、いつ、どのように出会いましたか?
私が神戸大学に勤務していた40代の頃、「西田幾多郎が悩みながら書いているのがわかるから読むべき」と、友人に勧められました。その当時は、軽めの本か、自分の研究に直結する本しか読んでいなかったので、躊躇しましたが読んでみることにしました。
3.どのような内容ですか?
本書の基本的な問いは「善とは何か?」です。西田は、この問いに対し、「持って生まれた個人性を生かし、自己を発展完成させ」「それを社会や人類のために役立てるとき」完全な善となる、と主張しています。つまり、「個人性+社会性=善」という考え方ですね。こうした考え方は西田のオリジナルというわけではなく、哲学における先人の考え方を彼なりに理解・消化したものであるようです。
4.それは先生にとってどんな出会いでしたか?
それまでは、仕事と直接関係のない本、とくに読むのに時間がかかるような本を避けていましたが、本書に出会ってからは、人間や社会の本質について書かれた古典も読むようになりました。また、西田が言う「個人性」は、「強み」とも言い換えることができますが、今では「強みの支援」が重要な研究テーマの一つとなっています。
5.この作品をおすすめするとしたら?
ある程度の実績を積み、自分のスタイルを確立した40代、50代の方におすすめします。「何のために仕事をしているのか」「このままのスタイルでよいのか」「これからどのような道に進むべきか」について悩んでいる人にとって、考える軸を提供してくれると思います。

- 松尾 睦(まつお・まこと)
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- 青山学院大学経営学部教授
- 北海道大学名誉教授
- 1964年東京都町田市生まれ。1988年小樽商科大学商学部卒業。製薬会社を経て、1992年北海道大学大学院文学研究科・行動科学専攻・修士課程修了。民間シンクタンクを経て、1994年岡山商科大学商学部、1999年東京工業大学大学院社会理工学研究科・人間行動博士課程修了(博士(学術))。2004年小樽商科大学大学院商学研究科、2009年神戸大学大学院経営学研究科、2013年北海道大学大学院経済学研究科、2023年4月より現職。英国ランカスター大学経営大学院・博士課程修了(Ph.D. in Management Learning)。
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