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夕学レポート

2011年10月14日

安房は亀田が変える。安房から日本を変える。  亀田信介さん

photo_instructor_580.jpg先が見えない混迷の時代に求められる戦略は、「イノベーション=新しい組み合わせ」である。
10/6の夕学に登壇された石倉洋子先生の論を借りるとそうなるが、ノンプロフィット組織(行政体、学校、病院等)にイノベーションを起こすには、これまで縁の薄かった経営学の知見を活かすことだと言われている。
残念ながら、行政体や学校では、近代経営メソッドによる成功例を聞いた例がないが、病院経営には成功がある。その代表が千葉鴨川の亀田病院グループ(亀田メディカルセンター)である。
亀田信介院長は、江戸時代から続く医者の家系の11代目として、亀田病院の改革を担ってきた人物である。
ノンプロフィット組織の問題は、「ガバナンスとマネジメント」である。
亀田さんは、そう喝破した。
併せて、①ミッション・バリューの共有化、②CS経営という処方箋も一緒に提示してくれた。
亀田グループでは、医療サービスの役割を「社会インフラサービス」だと謳っている。治療や健康の維持は手段であって、医療の目的は、社会をよりよくすることだと考えている。その視野の広さが、後述する大きな構想力につながっている。
また、CS経営で重要なのは、全体ではなく個を見ること、そして顧客に向き合うスタッフへのサービスも一緒に考えること(ES)である。亀田病院はこの両方が出来ている。
亀田病院では「Team STEPPS」というシステムを採用しているという。医療におけるチームパフォーマンスを向上するためのマネジメントメソッドである。
詳細の説明は省くが、このチームの中には患者や家族・友人(人によってペットも)含まれる。
日本の病院の先駆けとしてカルテの電子化を導入したのも、患者さんがチームに参加してもらうのに情報共有が必須だったからだ。
家族サポーターの参画を得るには、時間の制限がない方がよいに決まっている。だから24時間面会可能な病棟を作った。
ペットを家族同等に大切にしている患者さんのために、ペットラウンジも設けた。
霊安室は、景観のよい最上階に設置し、隣室には湯灌のプロが常駐し、最後の見送りに備えている。
こうした経営革新もあって、亀田病院は、いまや私立の一般病院としては、日本最大の規模と人員を誇るまでになった。


しかし、亀田院長の眼は、更に大きき、深刻な問題を見据えているようだ。それが、講演の後半部分の話であった。
日本の医療システムの問題でよく耳にするのは、地方の医師不足、看護婦不足である。実際に地方の公立病院では、スタッフ不足から入院患者の受け入れ廃止が頻出していると聞く。
だが、亀田院長によれば、これから10年先を考えたとき、深刻な病院不足に陥るのは、東京を含めた都心近郊地域だという。
地方は、医師不足と同時に患者数も減少していくが、都心近郊では、人口の多くを占める団塊世代が高齢者となり、病院需要が急激に逼迫することが間違いないという。
こうした時代に、亀田グループの役割は、病院経営の革新者というモデルの提示にとどまらない、大きなものに変わろうとしている。
そのひとつは、都心近郊からどっと押し寄せるであろう患者の受け入れ先となることである。
看護師不足に対応して、亀田医療大学を設立し、自前で看護師や医療技術者の養成を始めている。
また、亀田総合病院が、都心からの入院患者受け入れ増により、地域の救急医療機関としての機能が果たせなくなる事態を想定して、新しい救急医療棟を建設し、地域医療の基幹病院としての体制を守るための備えも始めている。
亀田グループのもうひとつの役割は、地域の基幹産業として、雇用の確保と消費の促進役をも担うことである。
すでに、亀田グループで働く鴨川市在住の就業者の数は、市の労働人口の10%にも達している。新日鉄君津に代わって、千葉県南最大の雇用者数を誇るまでになっている。
雇用だけでなく、医療サービスの場合は、医療機関の収入分が、そのまま地元で消費されることになるので、二重の意味で地域経済に貢献できる。
流動性の低さが指摘される日本の個人資産は、その多くを富裕高齢者が所有している。彼らが財布のヒモを緩める唯一の場が、医療介護への消費である。医療サービスは、成長産業として地域を支える可能性を秘めいているのだ。
亀田グループを、地域医療の担い手から発展させて、医療を核にした余暇、住居サービス、医療教育などを網羅する高齢者サービス産業の担い手として育て上げること。千葉県南の数十万規模の経済圏の中核グループとして、地域振興の主役になること。
それが、亀田さんが描く、亀田グループのビッグビジョンである。
それは、病院経営の革新者モデルのように、日本の地域開発の新しいモデルを提示することになるのかもしれない。
安房は亀田が変える。安房から日本を変える。
亀田院長の話には、そんな意気込みが伝わってきたように思える。
この講演に寄せられた「明日への一言」です。
http://sekigaku.jimdo.com/みんなの-明日への一言-ギャラリー/10月14日-亀田-信介/

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