KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2009年01月23日

相手の言いたいことを理解するには(1)

私は昨年5月のエントリー『「理解力が足りない」VS「表現力が足りない」』の中で、「そもそもコミュニケーションとは、受け手が決めるものですから」と言いました。
自分の発言やレポートなどが相手にうまく伝わらない時に、「コイツ理解力がないなあ」と考えるのではなく、「自分の伝え方に問題があるのでは?」と考えていただきたかったのです。
そしてそこから自分の表現力の問題点や課題が見えてくれば、それがコミュニケーション力の向上に結びつくからです。
しかしながら、では相手の理解力に全く問題が無いかと言えばそうではないのも事実。
これを自分に当てはめてみれば、コミュニケーションにおいてはメッセージの送り手であると同時に受け手でもあるわけですから、表現力だけでなく自分自身の理解力も磨く必要があるのは自明の理です。
ということで今回から2回に渡って、「相手の言いたいことを理解する」ための基本的テクニックについて解説したいと思います。
さて、皆さんも「コイツ何が言いたいのか全然分からない」と感じたことがあるはずです。
途中から脱線して延々と持説を唱える人、同じことを何度もくどくどと述べる人、堂々巡りばかりで結局どの話が本当に言いたい結論なのか判然としない人、我々の周りにはこうした人が(あなた自身も含まれるかもしれませんよ)多いのは事実です。
そうした状況において、相手の言いたいことを正しく解釈するには、それなりの聞き方が必要になります。
本日はそれをふたつお話しします。

まずひとつめが、『相手と自分の前提条件に注意して聞く』ことです。
他者の発言を誤解する原因のひとつに、「自分と相手の前提条件が同じだと思いこんでいる」ことが挙げられます。
たとえば自分がある状況を「好ましい」と考えていたら、同じ状況を「問題だ」と考えている人の意見は、「好ましい」という前提条件に照らし合わせて解釈されるため、自分に都合の良い誤った解釈になってしまう場合があります。
だからそうならないように、「自分と発言者の前提条件は同じか?」と考えるのです。
その際、特に『言葉の定義』に着目してみてください。
たとえば“顧客”という我々がよく使う言葉も、人とシチュエーションによって定義が違ってきます。
メーカーの会議室で“顧客満足”がテーマになっている場合、Aさんが“顧客=直接の顧客である販売店や小売店”、Bさんが“顧客=消費者全般”Cさんが“顧客=一度買ってくれた消費者(既存顧客)”といった具合に、“顧客”の定義という前提条件が異なっていたら・・・他者の発言を誤解してしまうのは自明の理です。
だから時には「その“顧客”って具体的に誰のことを言ってる?」と確認しなければならないのです。
そしてもうひとつが、『発言の構造を意識して聞く』ことです。
人の発言は、実際に起こったことや定量データなどの客観的“事実”と、その事実をベースに考えた主観的“意見”で構成されています。(どちらか片方だけを述べている場合もあります)
万人が認めた事実を述べているように見えて、よくよく聞くと単なる主観的な意見に過ぎないというケースは多いはずです。
だからまずは、「この発言は事実と意見、どちらを述べているのか?」と考えると、相手の発言を理解しやすくなるわけですね。
さらに意見も、相手が特定されない“考察”と、特定の誰かに何らかの反応を期待した“主張”、そして“質問”に分けることができます。
よくよく聞いて、「ああ、この人は何か主張したいんじゃなくて、実はこの点を逆に質問したいんだな」とわかれば、その質問に答えなければならないことがわかるはずです。
こうした“主張の顔をした質問”という発言もあれば、主張をソフトに伝えるために、「~と思いますがいかがでしょうか?」と質問の形態をとる場合もあるので、主張/質問の見極めには注意が必要なのです。
また、会議や打合せという相手が複数の場合には、個々の発言は独立しているわけではなく、「誰かの発言を受け手の発言」が多くなります。
こうした誰かの発言を受けた直後の発言というのは、前の発言に対する“賛同”,“反論”,“補足”,“質問”のどれかです。
だから「賛同/反論/補足/質問のどれか?」と考えながら聞けば、その発言者が言いたいことが大体把握できます。
相手の話を漫然と聞くのではなく、こうして発言の構造を頭に思い浮かべ、「どれを話しているのだろう?」という意識で聞いてみましょう。
そうすれば、少しは意味不明や長い発言も理解しやすくなります。
最初はなかなかできないかもしれません。
しかしこれを意識していると少しずつできるようになりますし、日常の一対一の会話から大人数の会議まで、応用範囲は広いテクニックです。
これ、頭の中だけで行う作業ですから、やろうと思えば家族や友人との日常会話でも会議の場面でもできるはずです。
うまくいかなくても誰にも迷惑はかかりませんし。
今日からでも、思い出したときにやってみてください。

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