KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2010年02月26日

こんな会社に頑張ってほしい

日本を代表する企業であるトヨタが、ご存じの通り今苦境に立たされています。
米国の公聴会は以前から選挙を睨んだ政治ショーの色合いが強いのは確かなのですが、世界一の信頼性と経済性で名を馳せた「あの」トヨタが議員達から叩かれる様は、日本企業を人材育成という形で側面支援する私としてもあまり見たくない光景です。
『ものづくり』で経済発展を遂げてきた“日本”そのものの基盤が揺らいでいるようです。
自動車業界では、信頼性では日本の足下にも及ばなかった欧米企業は、今や日本車と遜色のない製品とメンテナンス体制を築いています。
「外車はすぐ壊れる」は、今や過去の言葉になりつつあります。
そればかりか、タタに代表されるインドのメーカー、そしてあと10年もすれば中国企業も自動車の世界マーケットで無視の出来ないポジションを取るようになるでしょう。
人件費を考えれば、日本の製造業の国際競争力は衰退の一途なのでしょうか。
・・・しかし、こんな企業もあるのです。
   ↓
筑水キャニコム

株式会社筑水キャニコムは、福岡に本社を持つ乗用草刈機や小型運搬機械のメーカーです。
年商は50億、海外展開も行っています。
まず上記ウェブサイトを訪れてみると驚かされるのが・・・
商品のネーミング!
乗用草刈機は『草刈機まさお』!
その刈り幅が広いタイプは『1000まさお』!
芝刈り機は『主役 芝耕作』!
発電機搭載のマルチキャリアは『伝導よしみ』!
他にも『ブッシュカッター・ジョージ』に『ヒラリー』とライバル揃い踏みだったり、『北国の春・・・お』に『みなみの春・・・お』に『こまわりくん』・・・
本年にはついにEV(電気自動車)も発売予定で、その名も『おでかけですカー』!
続けて「レレレのレー?」とつぶやいたのは私だけではないはずです(笑)
爆笑するやら脱力するやら・・・ね? 面白いでしょ?
やはり、最初の頃(小型運搬車『ピンクレディ』の発売)は「ふざけるな」と販売店からも言われたとか。
しかし、何も同社は冗談でこんなネーミングをしているわけではありません。

★どうしたらお客様に機械の特徴をひと目(ひと耳?)でわかっていただけるか?
★どうしたらお客様が機械に愛着を持っていただけるか?
そのひとつの答が斬新(すぎる?)なネーミングなのです。

また、商品本体だけでなく部品や機構のネーミングも凝っています。
たとえば、作物を収穫しナガラ積込む追従運搬作業に最適なスーパーローギアを持つミッションはその名の通り『ナ・ガ・ラ!』(なぜ「!」があるのだろう?)ですし、乗り越え時のショックを軽減するスウィング転輪機構は『天城越え』です。
しかしこれらの機構も伊達や酔狂でネーミングしているわけではなく、「ゆっくり歩きながら作業がしたい」「段差を越えるときに怖い」というユーザーの生の声を取り入れたものなのです。
この「ユーザーの声の反映」は機構だけではなく、製品そのものの開発にも活かされています。
ウェブサイトには、「開発からは無理だと言われたが粘り強く説得して開発にこぎ着けた」という営業の談話も掲載されています。
企業規模の割に製品数が多いことに気づかれた方もいらっしゃるかもしれません。
ネーミングを含め、製品開発全般で徹底的に「顧客の立場に立って考える」と言えるでしょう。
それは同社のスローガンである「ものづくりは演歌なんだよね! 浪花節なんだよね! 義理と人情お届けします」にも表れています。
私はこの会社のコアコンピタンスは、この『顧客志向』だと思います。
「そんなのどこでも当たり前だろう」と思われるかもしれません。
しかし言葉で顧客志向を唱えることは簡単ですが、ここまで具体的に『顧客志向』が具現化されているところは多くはないはずです。
多くは単なる“かけ声レベル”なのですね。

そしてその顧客志向を支えているのが、『遊び心』なのでしょう。
会議で新規開発商品のネーミングを考えている光景を想像してみてください。
間違いなく楽しそうですよね?
仕事をしないと食っていけないのなら、楽しく仕事をしたいのは誰しも同じ。
であれば、そこには某かの遊び心が必要です。
お客様の笑顔を想像しながら新製品を企画し、ネーミングを考える。
子供の頃、誰しも同じような『遊び』をしていませんでしたか?

『顧客志向の具現化』と『遊び心を刺激する仕組み』。
この2つのキーワードは、我が国の製造業のヒントになるような気がします。
何よりこの筑水キャニコムのような企業がもっと増えたら、と考えたるだけで何かワクワクしてきませんか?

メルマガ
登録

メルマガ
登録