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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2010年09月10日

ワールドカフェ流行の背景

昨日、ちょっとした繋がりで某コンサルティング会社の勉強会のお手伝いをすることになり、約1時間の『ワールドカフェ』を開催しました。
ワールドカフェとは、乱暴な定義をすると「メンバーを変えながら対話をする」話し合いの手法のことです。
私なりにそのポイントは、
■「主張→説得→決定」ではなく、「対話→理解→共有」を目指すこと。
■肩書きと経験にとらわれず、また一般論でなく自分自身の考えを述べること。
■言いたいことを言うだけでなく、人の意見にも耳を傾け、意見と意見の関係性から気づきを誘発させること。
だと考えていますが、このワールドカフェ、最近流行とも言えるほど、様々な企業や自治体などが「長期ビジョンの方向性検討」や「組織内のコミュニケーションのインフラ」として活用を始めています。
大規模なカンファレンスにおいて、講演やパネルディカッションにワールドカフェが組み込まれることも増えてきました。
では、なぜワールドカフェはここまで「流行って」いるのでしょうか?

アタリマエのことですが、組織とは様々な『ヒト』で構成されています。
経験や価値観の異なる、まさに「十人十色」の多様な人々で成り立っている組織が、組織として活動していくためには、その基盤として『相互理解と意識・前提条件の共有』が必要です。
もちろん軍隊のような「トップダウンで有無を言わさず一糸乱れぬ行動をする」組織もありますが、一般的な企業・団体、また地域コミュニティなどにおいては、やはりこうした基盤が確立されていないと、バラバラになって組織としての意味をなさなくなってしまいます。
この『相互理解と意識・前提条件の共有』という基盤は、地域コミュニティであれば『町内会や街の世話役』、企業であれば『仕事を終えての一杯』などで、さほど意識せずとも確立されていました。
ところが現在はどうでしょう。
都心だけでなく、周辺のベッドタウンにしても「みんな顔見知り」という地域コミュニティが成立しているところは希です。
企業にしても今や飲み会は「わざわざ企画、日程調整して」開催するものとなり、「ほら飲みに行くぞ!」と強制するわけにもいきません。「残業代出るんですか?」と言い出す若手までいるほどです。
では、飲み会でなく日常業務の中でコミュニケーションが取れているかというと、これまた電子メールの普及によって確実に薄くなっています。隣のデスクの同僚とまでメールでやり取りをする、という状況はもはや多くの企業で『普通』になっています。
電話が主なコミュニケーション手段であった時代には、隣席の「声」が聞こえてきますから、その同僚の状況はなんとなく把握できますし、そのあと「どうした?」と声を掛けることもできたのですが。
さて、このような環境において、「組織の構成員の相互理解と意識・前提条件の共有をはかる」にはどうすれば良いのでしょうか。
私は、その解の一つがワールドカフェだったのだと思うのです。
いや、元々はワールドカフェでなく、普通の会議にその役を担わせようとしたのです。
上記のような状況で、「コミュニケーションが減っているのはまずい」と感じた組織のトップや自治体などが、『情報共有会議』や『市民対話集会』などの名目で人を集め、話し合いをさせようとしました。
ところが、そこには『話し合いを促進させる仕組みや仕掛け』が欠けていました。
失礼な言い方をすると、「とにかく人を集めればいいだろう」という安易な考えだったのです。
だから情報共有会議や市民対話集会はあっという間に形骸化しました。
「毎月やることになっているからやる」儀式化した会議になってしまったのです。
さあ、そこに登場したのが『ワールドカフェ』です。
☆単に人を集めるのではなく、「ここは自分が評価される仕事の場ではない」「だから何を言っても大丈夫なんだ」と安心させる仕掛けとファシリテーション。
☆一般論でなく参加者の誰もが自分事として考え、意見を述べることができる話し合うテーマ(問い)の設定。
☆様々な気づきを誘発させるための「メンバーのシャッフル」と「全員がテーブルクロス(実は模造紙)に絵や言葉を描きながら話し合う」そして最後に「ハーベスト(収穫)の名の下に気づきを共有する全体セッションを行う」という仕組み。
一見すると、楽しく雑談をしているように見えるワールドカフェとは、こうした計算し尽くされた巧妙な仕掛けと仕組みが満載の『話し合い促進システム』なのです。
そのパワーは、一度経験しないとなかなか理解できません。
しかし一度そのパワーを知ってしまうと、「ぜひウチでもやってみたい」と思うはずです。
これが私の考える「ワールドカフェ流行の経緯」です。
ただ、ワールドカフェを主催することは決して簡単ではありません。
単に「メンバーをシャッフルし、模造紙や飲み物の小道具を用意して3ラウンドの話し合いをさせればワールドカフェがうまくいく」というものではないのです。
私の経験上、主催者サイドが一番頭を絞るべきなのは、
★話し合うテーマ(問い)は何にするか?
★ハーベストの進め方はどうするか?
のふたつだと考えます。
特に『問いの設定』がワールドカフェ成功の鍵とも言えるでしょう。


さて、昨日行ったワールドカフェですが、私にとって今までで最も成功したワールドカフェになりました。(自画自賛スイマセン(笑))
参加者の方からも、「爽快な気分になれた」「ぜひ自分も開催したい」という大変嬉しい言葉を、カフェの後で、そして本日メールでもたくさんいただきました。
5つのテーブルで異なる問いを用意したのですが、「それぞれの問いが有機的に関係しており、メンバーをシャッフルすることでさらに気づきが得られた。絶妙の問いだ」とまで言っていただきました。
いや、でも本当に問いを何にするかは悩みに悩んだのですよ。
しかしこれなら悩んだ甲斐があったというものです(笑)
また、今回テーブル毎のダイアローグ(対話:話し合い)は15分×3ラウンドでしたが、時間の関係上ハーベスト(全体セッション)は10分という短時間となりました。
ところがこのたった10分のハーベストの濃さ(気づきの質)といったら!
ファシリテートしている私も驚くほどでしたが、これもダイアローグの観察を通して設定した、ハーベスト専用の問いが奏功したと考えています。
もちろん一番の成功要因は、参加者の皆さんの前向きかつフランクな姿勢なのですが(笑)


これを読んで興味を持っていただけたなら、ぜひ一度ワールドカフェに参加してみてください。
ネットで検索すれば、様々なワールドカフェが毎週、いや毎日のようにどこかで開催されていますよ!

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