ファカルティズ・コラム
2010年09月17日
ドラえもんの科学技術
本日、日本科学未来館で開催中の「ドラえもんの科学みらい展」に同僚3人と行ってきました。
「なぜ大のオトナが4人でドラえもん?」と思われるかもしれません。
しかしこのような企画は、我々のような企業の人材育成に関わる人間にとって、講義やコメントのネタとして、そして科学技術に関わる様々な企業の人材ニーズを考えるためにも、「見ておかなくてはならない」ものなのです。
とはいえ、もちろん「童心に帰って楽しみたい」という気持ちも大きいわけですが(笑)
さて、ドラえもんに出てきた様々な『ひみつのどうぐ』が、現在の科学でどこまで実現しているかを見せてくれるこの「ドラえもんの科学みらい展」。
思っていた以上に刺激的だったのです。
会場に入ってまず向かったのは、それをかぶると透明人間になれるという『透明マント』。
もちろん本当に透明になるわけではなく、反射体であるマント(でも黒い)に背景のリアルタイム画像をプロジェクター(+ハーフミラーで反射)で投影しているだけ(だから正面から見ないと透明に見えない)なのですが、本当によくできていて、わかっていても驚いてしまいます。
そして「先着10名!」声に惹かれて並んで体験したのがドラえもんの「パワーてぶくろ」のリアル版である『パワーフィンガー』。
《マンマシンシナジーエフェクター》、つまり人と機械が互いに補完し、その相乗効果であたかもパワードスーツを着たかの如く運動能力を高める、というコンセプトです。
実際にパワーフィンガーを腕に装着し、人差し指と親指でスーパーボールをつまみます。
軽ーくつまむだけで、硬いスーパーボールがグミキャンディーのようにグニャグニャ。
そこでちょっと力を入れると・・・なんとスーパーボールが粉々に!
自分が仮面ライダーにでもなったようで、なんともいい気分でした(笑)
しかしこのマンマシンシナジーエフェクター。
今後間違いなく、介護や救難などの分野で実用化が期待されます。
この「ドラえもんの科学みらい展」では、他にも脳波センサーや会話ロボットなど、様々な用途が考えられる展示が目白押し。
9月27日までの開催ですから、この3連休に訪れてみてはいかがでしょう。
そして常設展もじっくりと見てきたのですが、こちらも興味深い展示で溢れています。
職業柄、できるだけ新聞などで新しい技術はチェックするようしているのですが、見逃していた技術もいろいろ知ることができてたいへん有意義でした。
特に今回私のツボにきたのがバイオマスの分野です。
バイオ燃料はみなさんもよくご存じだと思いますが、この生物由来の資源を石油の「燃料としての側面だけでなく、化学製品の原料としての側面」も代替させる研究がここまで進んでいるとは思いませんでした。
たとえばプラスチックを精製する草なんてよく考えたなと(笑)
水と太陽と二酸化炭素からプラスチックを作るんですよ!
燃やしても所謂カーボンニュートラルなので環境にも優しい。
しかしこれ、「できればいいなあ」と悠長に構えている場合ではないはずです。
石油資源が有限である以上、実用化に向けた研究を加速してほしいし、さらに言えばそれを『日本発の技術』として世界に普及させてほしいと思います。
そこでますます重要になるのが産学官の連携でしょう。
よほど体力のある企業でもなければ大学/研究機関に大きな投資を行い、今回ご紹介したような「すぐ儲かるわけではない」技術の実用化を支援するのは難しいでしょう。
私は基本的には「企業の自由な活動を阻害しない小さい政府」を理想と考える立場ですが、こうした科学技術には国の支援が不可欠と考えています。
「口を出さずに金を出す」ことに徹する分野があっても良いと思うのです。
政治もビジネスも、「無駄なモノは切る」ことは限られたヒト・モノ・カネの効率的運用には必須のことです。
しかしムダ(に見える)活動の積み重ねがなければイノベーションも起こらないと私は考えます。
ひとりの大学関係者として、自分がこの産学官の連携で何ができるのかも考えてみたいと思います。
なぜかドラえもんの話から堅い話になってしまいました(笑)
さて、日本科学未来館には、今日もたくさんのチビッコ達が遠足(校外学習?)で来ていました。
これが見ているとなかなか面白い。
グループで周りながら、「待ってよー」「○○クンはいつも遅い!」とやっていたり。
説明員のお兄さんから「君達は説明を聞くのかなー?それともお昼ご飯を先に食べるのかなー?」と言われていたり。
なかなか微笑ましくて(引率する先生の立場にはなりたくありませんが)、見ていると飽きません。
ただそんな中にも、展示内容に「すげー!」と感嘆していたり、メモを取りながら説明を聞く子供もいます。
私にとっては、そうした光景を見られたことも今回の収穫です。
ここを訪れる子供達の1%でも科学技術に興味を持ち、そしてさらにその中の1%の子供が研究者として日本の科学技術を牽引してくれるとしたら・・・
そう思うだけでワクワクしてきませんか?
だから私はこうした施設はたとえ赤字だろうが絶対に必要だと思うのです。
日本と世界の未来を作るのは間違いなく子供達なのですから。
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