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ファカルティズ・コラム

2011年06月03日

『政治力』を発揮する場面が違う

ご存じの通り、ドタバタの末内閣不信任案が否決されました。
震災、原発事故と国家存亡の危機にあるとはとても思えない政局に嫌気がさしている方も多いでしょう。
「政治家達は何をやっているんだ!」
「真の政治力を持った政治家はこの国にいないのか!」
怒りの声がテレビやネットから聞こえてきます。
こうした状況で、私は一月ほど前に友人に送ったエールを思い出しました。
その友人、ここでは仮に『Aさん』としておきます。
Aさんは先般、今回の震災の現地支援チームの東京側スタッフに任命されました。
非常に意義のある仕事ではありますが、組織としても初めての経験でもあり、様々な問題が出てきます。
特に関係する部門の異なる思惑に起因する問題は、彼を悩ませました。
「政治だ。うちの派遣を取りまとめている人々たちの思惑も含め、すべてが政治だ」
彼はつぶやきました。
私は彼にこう返しました。

(以下、個人・組織を特定するような文言および表現を多少修正してあります)
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個人的には、政治とは『権力の調整機能』と考えます。
ところがこの『権力』には「お金・名誉・今後の発言力」等々いろんな背景があり、さらに個々の背景の優先順位は権力の行使者毎に異なる価値観によって違ってきます。
だから政治は面倒くさい(笑)
とはいえ、この政治という権力の調整機能がなければ、家族という小さな社会であろうが、国家という大きな社会であろうが、混沌から破綻を来してしまうのは明白です。
被災地は「直接的には」政治を必要としていないでしょう。
しかし、間接的には政治の恩恵を受けているのは事実。
「まつりごとをおさめる」のが政治ならば、(表現が不謹慎なのは承知ですが)学園祭の事務局が、まさに政治の身近な姿と言えるでしょう。
さて、要するに私の言いたいのは…
(1)政治が介入することは必然だと割り切りましょう。
(2)Aさんの『政治力』に期待します。
の2点です。
私たちにはいくらでも愚痴ってください。
でも、今回のAさんの立場って、自分が成長するには本当に良いポジションだと思いますよ。
人を育てる最適環境と呼ばれる『修羅場』でもあるし。
まあ、当事者であるAさんがタイヘンなのをわかった上での外野の発言でもありますが。
さて、手前味噌ですが政治力(個人的定義ではありますが「権力を調整する力」)とはファシリテーション能力とも言えることに今気づきました。
個人的には、Aさんのファシリテーション能力の高さは前職での経験で培われたものと考えています。
それをぜひ活かしてください。
特にこういう場面では異なる思惑(つまり権力を行使しようとする要因)がぶつかりますから、必ずコンフリクトが起きます。
それをうまく折り合いをつける(これをアコモデーションと呼びます)ことが求められますが、Aさんならそれができると信じています。
このアコモデーションのひとつのテクニックが「全員が共有できる上位目的を提示する」ことです。
今回で言えば、「みなさんにどんな思惑があってもいいし、それは否定しない。要するに結果として被災者が喜んでくれればいいんですよ」ということですね。
本当はあまり使いたくない言葉ですがあえて言います。
頑張ってください。あなたならできます。
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『権力』とは「(たとえ相手が望まなくとも)いうことをきかせる力」です。
そしてその力を調整(手練手管で折り合いをつける)するのが『政治』の機能だと考えます。
そう考えると、今の我が国は完全に『政治不在』の状況です。
「国のイシュー」でなく、「政党間と政党内のイシュー」にのみ政治が存在すると言っても良いでしょう。
今、政治が調整すべき権力は何か?
それは被災地の自治体間や自治体内、そして中央官庁と被災地、企業と官庁など、山のようにあるはずです。
それをないがしろにしておいて政党間と政党内の権力調整に無駄な時間を費やしている。
これが我が国の政治の実態です。


実は、ベルギーの政局も混迷を極めており、1年近く無政府状態が続いています。
ところがそのニュースはあまり私たちには伝わってこない。
その理由は、「ほとんど問題が起きていない」からです。
ベルギーでは共同体組織や地方自治が進んでおり、とりあえず経済活動や生活には支障がないのだそうです。
これを「素晴らしい」と見るか「異常だ」と見るか。
私は無政府状態が良いとは思いませんが、お手本にすべきところは多いと考えます。
少なくとも、地方分権のプロセスは参考にすべきでしょう。
しかし、残念ながら地方分権、つまり地方自治体に多くの権限を委譲するのは我が国ではかなり難しいでしょう。
なぜならば、政治家、そして官僚達が本来調整すべき権力を後回しにして「自分たちの権力の維持」にのみ注力をしているからです。
しかし、ここで諦めるわけにはいきません。
私個人としては、次の選挙では地方分権を中心の政策課題に据えた候補者にのみ投票したいと思います。
「政党はどこに投票するのか?」ですか?
ひょっとして、こんな茶番をみせられてなお、あなたはまだ政党に期待しているのですか?(笑)

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