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ファカルティズ・コラム

2013年05月24日

ザックジャパンから学ぶ『強い組織』

昨日、日本サッカー協会とアルベルト・ザッケローニ日本代表監督は、今月30日の国際親善試合ブルガリア戦と、6月4日のワールドカップアジア最終予選オーストラリア戦の日本代表メンバー26人を発表しました。
怪我の状態が心配されていたインテル長友の復帰、そしてアジアチャンピオンズリーグで柏レイソルをベスト8に導いた工藤の初招集など、期待できるメンバー構成となりました。
発表の席上、ザッケローニ監督が7回も繰り返した言葉が『インテンシティ(intensity)』。
直訳すると『強さ・激しさ』なわけですが、監督が意図しているのは、単なるフィジカルの強さでもなければ、抽象的な強さでもないようです。
いくつかの記事を読み、そして”intensity”という言葉について考えていくと、監督の言わんとすることが見えてきます。
そしてそれはサッカーをはじめとしたスポーツの世界だけではない、企業も含めた汎用的な組織論として、なかなか示唆の多い言葉であることも。



彼(ザッケローニ監督)は、インテンシティをこのように説明しています。
「攻守の切り替えの速さではない。ボールを保持していないときに相手のボール保持者を襲い、ボールを保持しているときは足元でパスを受けるのを待つのではなく、スペースに走って受けたり、スペースに走った選手にパスを送ることなどだ」
(スポニチANEX(http://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2013/05/24/kiji/K20130524005864140.html)から引用)
彼の言うインテンシティとは、『選手個々のフィジカルやスピードなどの結果である強さ』ではなく、『積極的に各選手が連携・連動することによって発揮される強さ』を意味するようです。


ちょっと語源に遡って考えてみましょう。
“intensity”の形容詞で『強い・激しい』を意味する”intense”は、”in”「中へ」と、”tense”「張り詰めた」に分解されます。
“tension”(テンション)は『緊張』を意味しますから、”intense”は「内部に向かって緊張感を持つこと」というニュアンスがあるわけですね。
ここで、”intensity”という言葉を彼が用いた意味がわかってきます。


「外の状況(たとえば相手選手の動き)も大事だが、常に味方の選手に対して注意を払え」
「誰がどこにいて、どのような状況なのか。次にどう動くと予想されるのか、とすると自分はどう動くべきなのか。それを考え、実践しろ」
「それが日本のチーム特有の『強さ』に繋がるのだ」



彼が”intensity”に込めた意味は、これだったのではないでしょうか。
そしてこれは、『日本企業特有の強さ』に置き換えて考えることができるはずです。


「社会情勢や競合の動きも重要だが、常に社内のリソースに対して注意を払え」
「どの部門がどのようなことをしているのか。次にどう動くと予想されるのか。そうすると自分と自部門はどう動くべきなのか。それを考え、実践しろ」



ただし、これは「社内に対して気を遣う・社内の目を気にする」ことでは決してありません。
「社内に対して気を遣う・社内の目を気にする」ことの上位目的は、ほとんどの場合『保身』と『失敗回避』です。それでは日本企業の悪癖は、何も変わりません。
“intensity”の意味する「内部に注意を払う」ことの上位目的は、『リスクを冒して手にする勝利』です。そこには『保身』や『失敗回避』の思考は存在しないのです。


「誰と組むと無難か」ではなく、「誰と組むと面白い、そしてデカいことができそうか」。



こう考えることが、日本企業にしか発揮できない”intensity”、強さなのかもしれません。


さて、ザッケローニ監督は会見の中で、”intnsity(強さ)”以外に、選手に求めることとして、”equilibrant(バランスを取る力)”と”courage(勇気)”を挙げています。
やはり、緩/急や内/外などのバランスを取らずして、またリスクを冒す勇気なくして、ザックジャパン、そして日本企業の”intensity”、強さは発揮できないということでしょう。
あなたも今一度、社内に注意深く目を向け、しかし何かに固執することなくバランスを取り、そして勇気を持って内部連携の起点となることで、、組織のインテンシティを発揮させてみようと思いませんか?
そして国際経済のワールドカップに臨む、日本代表になることを目指してみませんか?

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