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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2014年07月04日

2字熟語の前後を入れ替え、分類する

ご存じの通り本ブログでは、【3分間ラーニング】を中心としていくつかのカテゴリーでエントリーを投稿しています。
そして今回から、新カテゴリーとして【思考トレーニング】をスタートさせることとしました。
コンテンツとしては、論理パズルや言葉の定義にこだわった考察、そして哲学的な問いなど、様々な論点で皆さんと一緒に「ふだんあまり考えないことを考え抜く」練習を積んでいきたいと思います。
構成としては前段で設問、「続きを読む」以下で私としての答(もちろんそれが唯一の正解ではありません)を述べていきます。
すぐ「続きを読む」をクリックせずに、まずはご自分の頭であなたなりの答を考えてみてください。

では、第一回の設問、今回は漢字を使った論理パズルを考えていただきます。
さて、私たちは様々な「2字熟語」を知っていますが、以下の設問に応えてください。
(1)前後を入れ替えても、ちゃんと意味のある言葉になる2字熟語をできるだけたくさん考えてみてください。(たとえば「雨風(あめかぜ)/風雨(ふうう)」などがそれに該当します)
(2)次に、それらを何らかの軸を使って2つに分類してください。


「続きを読む」をクリックする前に、まずは自分のアタマで考えてみてください!(笑)

では、解答例です。
(1)
 「雨風(あめかぜ)/風雨(ふうう)」
 「家出(いえで)/出家(しゅっけ)」
 「色男(いろおとこ)/男色(だんしょく)」
 「裏表(うらおもて)/表裏(ひょうり)」
 「雄雌(おすめす)/雌雄(しゆう)」
 「産出(さんしゅつ)/出産(しゅっさん)」
 「白黒(しろくろ)/黒白(こくびゃく)」
 「凸凹(でこぼこ)/凹凸(おうとつ)」
 「西東(にしひがし)/東西(とうざい)」
 「野原(のはら)/原野(げんや)」
 「右左(みぎひだり)/左右(さゆう)」
 「物事(ものごと)/事物(事物)」
 「理論(りろん)/論理(ろんり)」
他にもたぶんあるでしょうが、私が思いついたのはこんなところ。
「凸凹/凹凸」あたりは盲点かもしれませんが、考えるとけっこうあるものです。

(2)
さて、(1)はとにかく「思いつくかどうか」であり、時間を掛ければ誰でもそれなりの数は出せるでしょう。
よって今回の思考トレーニングのキモはこちらの方。
様々な情報の中に共通点を見つけ、分類する。
これは私たちの日常の仕事でも重要な「アタマの使い方」です。
たとえば、顧客からの様々な意見の中に共通点を見つけ、分類することで、何らかの傾向が見えてくれば、それを商品開発や営業に活かすことができます。
さて、あなたはこれをどう分類しましたか?
様々な分類の切り口がありますが、ここではふたつを具体的に挙げることとします。

A:意味が変わらないものと、変わってしまうものに分類
◆意味が変わらないもの
 →「雨風/風雨」「裏表/表裏」「雄雌/雌雄」「凸凹/凹凸」
  「白黒/黒白」「西東/東西」「右左/左右」「物事/事物」
◆意味が変わってしまうもの
 →「家出/出家」「色男/男色」「産出/出産」「野原/原野」「理論/論理」
※「「理論/論理」は同じ意味では?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それはいずれまた、私の考えをお話しします。

B:前後を入れ替えると訓読み/音読みが逆転するものと、音読みのまま変わらないものに分類。
◆訓読み/音読みが逆転するもの
 →「雨風(あめかぜ)/風雨(ふうう)」「裏表(うらおもて)/表裏(ひょうり)」
  「雄雌(おすめす)/雌雄(しゆう)」「凸凹(でこぼこ)/凹凸(おうとつ)」
  「野原(のはら)/原野(げんや)」「白黒(しろくろ)/黒白(こくびゃく)」
  「西東(にしひがし)/東西(とうざい)」「右左(みぎひだり)/左右(さゆう)」
  「物事(ものごと)/事物(じぶつ)」「家出(いえで)/出家(しゅっけ)」
  「色男(いろおとこ)/男色(だんしょく)」
◆音読みのまま変わらないもの
 →「産出(さんしゅつ)/出産(しゅっさん)」「理論(りろん)/論理(ろんり)」
圧倒的に訓読み/音読みが逆転するものが多いです。
漢字が元々中国から来たものであることを考えれば、これも当然のことと言えるでしょう

さて、あなたはどのような「分類の切り口」を見つけましたか?
この他にも、<活動>である「家出/出家」「産出/出産」と<活動ではないもの>に分けるなど、切り口はいくつもあります。
先に述べたように、今回のような「様々な情報を共通点を見いだして分類する」ことこそ、「情報を整理する」という思考プロセスです。
その整理の仕方、つまり分類の切り口は、この例を見てもわかるように多様です。
しかし私たちは、他人が整理した情報、つまり「一面的な分類」だけを見て(見せられて)、「これはこうだ」と説得されています。

ここに問題があります。

他人の整理の仕方は、あくまでも「ひとつの見方」でしかありません。
だから、「自分ならどう整理するか」も、考えてみることは、まさに「自分のアタマで考える」ことであり、情報の海を地力で泳ぐために必要な、「情報リテラシー」だと思うのです。

 
では、次回をお楽しみに!
 


桑畑幸博

桑畑 幸博(くわはた・ゆきひろ)
慶應MCCシニアコンサルタント

慶應MCC担当プログラム
ビジネスセンスを磨くマーケティング基礎
デザイン思考のマーケティング
フレームワーク思考
イノベーション思考
理解と共感を生む説明力

大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應MCCでプログラム企画や講師を務める。
また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。

主な著書
屁理屈に負けない! ――悪意ある言葉から身を守る方法』扶桑社
映画に学ぶ!ヒーローの問題解決力』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2020年
リーダーのための即断即決! 仕事術』明日香出版社
「モノの言い方」トレーニングコース』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2017年
すぐやる、はかどる!超速!!仕事術』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2016年
偉大なリーダーに学ぶ 周りを「巻き込む」仕事術』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2015年
すごい結果を出す人の「巻き込む」技術 なぜ皆があの人に動かされてしまうのか?』大和出版

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