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ファカルティズ・コラム

2018年05月17日

顧客のニーズに「先回り」する(後編)

テレビのチャンネルを替えたいと思ったら、あなたはどうしますか?
多くの方はリモコンのボタンで替えているのではないでしょうか。
でも、タブレットやスマホで見ているなら、タッチスクリーンのボタンを押したり、スワイプしてチャンネルを替えるはずです。
テレビやクルマ、そして照明やエアコンのような身近なものから、工作機械や発電所など。
私たちは様々な道具や装置を「操作」し、何かをやらせています。
その操作方法。古くは梃子やバネなどを使ってレバーやハンドルで「物理的に操作する」ことから始まりました。
そしてスイッチやダイヤルと電気を組み合わせ、大きな力無しで操作できるようになりました。
パソコンのキーボードなどもそうですね。
それが近年、タッチスクリーンによる操作に変わってきた。
これが「スクリーンファースト」と呼ばれているムーブメントです。
しかし、本年からさらにそれが変わろうとしています。
「ボイスファースト」
そう、AIスピーカー(スマートスピーカー)を介して「声で操作する」時代の到来です。
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音声認識のAIを搭載し、声で出された指示を実行する。
「明日の天気は?」と聞かれたら「晴れ時々曇りです」と答えでくれる。
また「電気つけて」と言われれば、それで照明をONにし、「楽しくなる曲をかけて」と言われればクラウドから軽快なポップナンバーを選び、鳴らしてくれる。
これがAIスピーカーです。
もちろん単体では大したことはできませんから、これに対応したテレビや照明器具などが必要になります。
AIエンジンとして「Googleアシスタント」を搭載した「Google Home」、同じく「Alexa」を搭載したAmazonの「Echo」、「Clova」を搭載したLINEの「Clova WAVE」など、各社から様々な製品がリリースされています。
日経トレンディの「2018年ヒット商品予想」でも第1位ですから、まさに2018年は「ボイスファースト元年」と呼ばれるようになるかもしれません。
確かに音声による操作は便利です。複雑な操作やITの知識は不要であり、子供からお年寄りまで使えます。
多くの識者が「究極の操作方法」と言うのも頷けます。


…しかし、私はこれを「究極」とは呼べないと考えています。
「究極の操作」とは、「指示すら出さずに思い通りに動かす」ではないでしょうか。
とか言うと、テレパシーで動かすというオカルトを思い浮かべる人もいるでしょう。
また「脳波を読み取るってこと?」と思われた方もいるかもしれません。
しかし、私が考えているのはそのどちらでもありません。
はい、ここからが本題。
前回の続きである『顧客のニーズに「先回り」する』ことについてお話ししたいのです。
有能な執事(その一例としてのアニメ「学園ベビーシッターズ」の犀川さん)は、経験(というビッグデータ)によって顧客(雇い主)の指示を先読みする、ということを前回お話ししました。
声の指示に従って様々な仕事をするAIスピーカーは、本質的に執事の機能を持っていると言えます。
であれば、AIスピーカー、というか「スマートホームのエージェント」は、家人の指示を待つだけでなく、やってほしいことを事前に察知した方が「有能な執事」であることは明白です。
私は、今後の「スマートホームのエージェント」に必要なのは、音声認識に加え、カメラという「目」と画像認識のエンジン、そして温度や湿度、気圧や振動を感知するセンサーだと考えています。
音声認識がさらに進化し、カメラやセンサーからの情報と画像認識も組み合わせると、何ができるようになるでしょう。
様々な音声での指示、その指示がどのような状態で出されたのか、どのような表情だったのか。
これらがビックデータとして蓄積されれば、家人(顧客)の指示を先読みすることができます。
指示されなくても照明をつけたり、表情や仕草から「何か楽しい曲でもかけましょうか」と聞いてくれたりする。
「傘を持っていった方がいいですよ」とか「最近野菜が不足しています」といったアドバイスもしてくれるようになる。
こうした近未来の映画やアニメで描かれていた世界は、もうすぐそこに来ています。
それだけの技術は、ほぼ実用化のレベルにあるのです。


では、ここであなたの会社や組織に照らし合わせて考えてみてください。
B2Bのビジネスであっても、「顧客のニーズに先回りする」ことは必要なはずです。
あなたの顧客の音声・画像・センサーから得られる情報は何がありますか?
それらの情報を組み合わせ、それを解析することで、顧客のどのようなニーズが読み取れますか?
そうすることで、とのような仕組みが構築できますか?
その仕組みは誰とパートナーシップを組むことで実現できますか?


「ボイスファースト」は通過点です。
前々回のエントリーで述べた「データエコノミー」こそが本質なのです。
それに乗り遅れないためにはどうすべきか。
できれば主導権を握るるためにはどうしたらよいのか。
ぜひ、それを考えてみてください。

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