ファカルティズ・コラム
2024年02月19日
『思う』と『考える』の使い分け
皆さんはレポートや感想文を書くとき、『思う』と『考える』の使い分けにで悩んだことはありませんか?
「〇〇に変えたほうが良いと思います、と、変えたほうが良いと考えます、のどちらにしよう?」
「『思う』が多いのでここは『考える』を使おうかな?」
など、私も学生時代から社会人時代まで、何度も悩んだ経験があります。
皆さんはこの2つの言葉、どのようなニュアンスの違いを感じますか?
やはり多くの方は、『考える』の方が「ちゃんと(論理的に)考えた」感じが、そして『思う』は「直感的に思いついた」感じがすると思います。
また、『思う』よりさらに論理的度合いが低い表現に『感じる』もあります。
こちらはより感情・感覚的、つまりアタマで考えたのでなくココロや肌感覚のニュアンスが強くなります。
とすると、ビジネスの場面ではおのずと『考える』がメインになるのは当然です。
しかしここでもうひとつ、『考える』『思う』『感じる』を少し変えた表現があります。
それが『考えられる』『思われる』『感じられる』です。
では、それぞれ元の『考える』等とのニュアンスの違いは何でしょうか?
「原因は○○と考えます」と「原因は○○と考えられます」を比較すると…
はい、『考える』の方が主観的な印象があるのに対し、『考えられる』には客観的な印象が感じられるはずです。『思われる』と『感じられる』も同様ですね。
そして「説得力」という視点で見ると、この『られる』の方に軍配が上がります。なぜならば、「客観的表現=説明者の(説明内容に対する)自信の表れ」と受け手が感じるからです。
しかし、「と考えられます」以上に説明者の自信を感じさせる表現があります。
それは「○○です」と言い切る、断言することです。
外国人ビジネスパーソンは、しばしば「日本人はなぜ会議で“ I think that ~ ”が多いのだろう?」という疑問を抱くそうです。
ビジネスにおいて唯一の正解はありませんから「と考えます」の方が「他の選択肢も否定しない」謙虚かつフェアな物言いであることは確かです。
しかしこの「謙虚さ」は反面「自信のなさ」に受け取られかねませんから、対外国人だけでなく顧客や上司に対しても「頼りない」印象を与えてしまうリスクがあります。
だから時には「原因は○○です」と言い切ることも必要です。
実は私もある提案を書類でまとめたときに、「です」という断言をひとつも入れていなかったために「人を説得しようとする意志が薄い」と指摘された経験があります(笑)
もちろん何でも、そしていつでも「断言すれば良い」というわけではありません。
他の選択肢を否定しない「○○と考えます(考えられます)」といったフェアな表現を中心に、特に強調したいポイントなどは「○○です」と言い切りましょう。
さて、こうして考えると、自分の意見や感想などを表明する際の表現は以下のような形で整理できます。
これも参考に、皆さんなりの『思う』『考える』等の使い分けをしてみてはいかがでしょうか。
…ところで、それに加えてさらに「当然」といったニュアンスを出す言葉があることを最近知りました。
それは「○○です」という内容の前に「ご存じの通り」を付け加えるというものです。
(半分冗談ですが)
桑畑 幸博(くわはた・ゆきひろ)
慶應MCCシニアコンサルタント
慶應MCC担当プログラム
ビジネスセンスを磨くマーケティング基礎
デザイン思考のマーケティング
フレームワーク思考
イノベーション思考
理解と共感を生む説明力
大手ITベンダーにてシステムインテグレーションやグループウェアコンサルティング等に携わる。社内プロジェクトでコラボレーション支援の研究を行い、論旨・論点・論脈を図解しながら会議を行う手法「コラジェクタ®」を開発。現在は慶應MCCでプログラム企画や講師を務める。
また、ビジネス誌の図解特集におけるコメンテイターや外部セミナーでの講師、シンポジウムにおけるファシリテーター等の活動も積極的に行っている。コンピューター利用教育協議会(CIEC)、日本ファシリテーション協会(FAJ)会員。
主な著書
『屁理屈に負けない! ――悪意ある言葉から身を守る方法』扶桑社
『映画に学ぶ!ヒーローの問題解決力』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2020年
『リーダーのための即断即決! 仕事術』明日香出版社
『「モノの言い方」トレーニングコース』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2017年
『すぐやる、はかどる!超速!!仕事術』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2016年
『偉大なリーダーに学ぶ 周りを「巻き込む」仕事術』日本能率協会マネジメントセンター通信教育教材2015年
『すごい結果を出す人の「巻き込む」技術 なぜ皆があの人に動かされてしまうのか?』大和出版
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大阪大学人間科学研究科 教授
感染症総合教育研究拠点CiDER 兼任教員
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東京大学東洋文化研究所 准教授
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