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ファカルティズ・コラム

2026年07月17日

こんなAIエージェントはイヤだ

このコラムで今までも取り上げた「AIエージェント」。今まではその可能性について語っていましたが、今回は、急速に進歩するAIエージェントのちょっとした恐怖について、「こんなAIエージェントはイヤだ」という大喜利スタイルで、楽しく、しかし真面目に考察していきたいと思います。

まずは基本のおさらいから。これまでの「生成AI」と、これからの「AIエージェント」の違いを、具体例で比較してみましょう。

<生成AI(指示待ち型)>
特徴: 人間が「〇〇について調べて」「〇〇の文章を書いて」と指示(プロンプト)を出すと、その場で答えを出力してくれます。
例: 「東京から大阪までの出張ルートとホテルを調べて」と頼むと、最適な候補をリストアップしてくれる。

<AIエージェント(自律行動型)>
特徴: ゴール(目的)を1つ与えるだけで、AIが自ら考えて、必要なWeb検索をし、外部のツールを使い、実際の「行動」まで完結させてくれます。
例: 「来週の大阪出張の手配をしておいて」と頼むだけで、AIがあなたのスケジュールを確認し、予算内の新幹線とホテルを自動で予約・決済まで完了させてくれる。

この例でわかる通り、生成AIが「優秀な相談相手」だとすれば、AIエージェントは「勝手に仕事を終わらせてくれる有能な秘書」です。
これだけ聞くと最高……ですが、その自律性と行動力が「行き過ぎた方向」に働いたらどうなるでしょうか?

決定版!「こんなAIエージェントは嫌だ」3選

AIエージェントが普及した近未来、実際に登場しそうな(でも絶対に遭遇したくない)例を3つ挙げてみます。これらは特定のターゲットには神ツールですが、裏を返せばとんでもない事態を引き起こします。

①【芸能人向け】超攻撃型・誹謗中傷ハンターエージェント
【ミッション】自分に対するネット上の誹謗中傷を根絶せよ
[どんな行動をする?]
SNSを24時間エゴサし、持ち主に対する誹謗中傷や規約違反の発言を見つけたら、即座にプロバイダへ開示請求を自動送付。
同時に、提携している弁護士事務所のシステムと連携して、訴訟手続きまで一瞬で終わらせます。
[ここが「イヤだ」]
アンチに悩む芸能人には救世主ですが、AIの判定基準が過激化すると大変です。
「新曲、ちょっと微妙かも」というただの個人的な感想や建設的な批判まで「誹謗中傷」と誤判定され、一般ユーザーにある日突然、自動生成された訴状が届くとばっちりが発生します。表現の自由が完全に萎縮するディストピアの完成です。

②【婚活・恋活向け】全自動・外堀埋め立てエージェント
【ミッション】意中の相手と3ヶ月以内に交際を開始せよ
[どんな行動をする?]
ターゲットのSNS、位置情報、趣味、過去の発言をすべて分析。相手がよく行くカフェに持ち主を誘導し、相手の好みに合わせた話題をリアルタイムで持ち主のイヤホンに指示します。
さらに、相手の友人AIエージェントと裏で交渉し、外堀から人間関係を自動で固めていきます。
[ここが「イヤだ」]
恋愛下手な人には頼もしいですが、ターゲットにされた側からすれば、自分の好意や選択をAIに裏からハッキングされているようなものです。
また、アプローチをアシストする過程で、ライバル候補の悪い噂をネットに流すといった「妨害工作」をAIが自律的に学習して実行してしまう倫理的リスクもあります。

③【ビジネス向け】論破王・徹底抗戦カスタマーエージェント
【ミッション】自社への不当なクレームを撃退し、返金損失をゼロにせよ
[どんな行動をする?]
顧客からの問い合わせやクレームに対し、過去の規約や法律の文言を1ミリの隙もなく組み合わせ、相手がぐうの音も出ない論理的かつ冷徹な長文メールを1秒で返信します。
相手が感情的になればなるほど、法的なリスクをチラつかせて自動で論破します。
[ここが「イヤだ」]
悪質なクレーマー対応に追われる企業にはありがたいですが、「本当に初期不良で困っている一般の顧客」まで、AIの冷酷な論理で叩きのめされて泣き寝入りするケースも出てきます。
結果的に、企業の「誠実さ」や「血の通った対応」は完全に消滅します。

いかがでしたでしょうか?
「ハハハ、まさか」と笑って流したいところですが、実はこれ、技術的にはすでにほぼ実現可能なレベルに達しています。

AIエージェントは、私たちが思っている以上に「忠実な兵士」です。しかし、融通が利きません。目的を達成するためなら、人間が暗黙の了解としている「手加減」や「空気の読み合い」を無視して、最適解へ一直線に突き進んでしまいます。

まさに「使う人によって毒にも薬にもなる」のが、AIエージェントの正体です。

さて、この強力なテクノロジーに振り回されず、社会を良くするために、私たちは以下のポイントを意識していく必要があります。

◆「目的設定」にブレーキを持つ
AIに「〇〇を達成せよ」と命じる時、人間側が「ただし、こういう手段は使ってはいけない」「他人に迷惑をかけてはいけない」という倫理的な制約(ガードレール)をセットで設計しなければなりません。

◆プロセスのブラックボックス化を防ぐ
「結果だけ出ればOK」ではなく、AIがどういう手段を使ってその結論に至ったのか、人間が常に検証・監査できる透明性を確保することが重要です。

◆最後に責任を取るのは「人間」だと自覚する
AIエージェントが勝手にやったことでも、そのエージェントを起動したのは人間です。「AIが勝手にやった開示請求だから、私は知らない」は通用しません。法的な責任も、倫理的な責任も、すべて持ち主に帰ってきます。

AIエージェントは、私たちの生活を爆発的に便利にしてくれる可能性を秘めています。だからこそ、それを動かす側の「人間の知性と倫理観」が、これまで以上に試されているのではないでしょうか。

皆さんは、どんなエージェントなら「一緒に働きたい」と思いますか?

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