KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2008年02月01日

エコも論理的に考えよう

再生紙の偽装問題は拡大を見せ、業界団体の日本製紙連合会の会員29社中、なんと17社が偽装を行っていたことが判明しました。
昨日製紙連は記者会見を行い、謝罪とともに環境保全対策として、数年間に約10億円を拠出すると発表しました。
さて、皆さんは一連のこのニュースで何を思いましたか?
「また偽装か」
「結局企業は嘘をついてでも儲けたいんだな」
「温暖化など、地球環境が問題になっているのに、まったく意識が低い!」
等々、様々な感想を持たれたことと思います。
確かに「ウソ」をついていたことは責められるべきでしょう。
しかし、「業界ぐるみで環境破壊をやっている」と断じるのはいかがなものでしょう。
そもそも、本当に再生紙は環境に優しいのですか?


個人的感想ですが、盲目的に環境問題を語る人が多すぎるように思います。
「温暖化はCO2が原因」
  ↓
「CO2を吸収してくれるのは森」
  ↓
「紙の原料は木材」
  ↓
「木を切るピュアパルプ紙(古紙を含まない紙)は環境破壊」
  ↓
「100%再生紙バンザイ」
というのは、はっきり言ってあまりにも安易な論理展開です。
そもそも温暖化の主要因がCO2とは、未だ科学的に証明されていません(要因の一つであることは多くの学者が認めていますが)し、ここ100年では確かに気温は上昇しているものの、何十億年というスパンで考えれば、実は地球はゆっくりと氷河期に向かっているとすら言われています。
そして、たとえCO2が温暖化の主要因と仮定しても、森の木を切ることがCO2吸収量を減少させるというのも、明らかな間違いです。
確かに木を「切ったまま」丸裸にしていてはダメですが、植林をして育てれば良いのです。というか、木を切って新しい木を植えないと、森はCO2を吸収してくれません。
森は極相(木が茂りきった状態)に達してしまうと、CO2をあまり吸収しなくなります。人間でも年を取るとあまり食べなくて済むように、CO2をガンガン吸収してくれるのは、若木なのです。
さらに言えば、森林資源という視点以外では、再生紙は『確実にピュアパルプより環境に悪い』のです。
ピュアパルプ精製の過程では、木の不純物が黒液として出ますが、これは燃料として製紙工場で使用されます。その燃焼ではCO2が発生しますが、これは元々木が吸収したCO2ですから、所謂カーボンニュートラルの考えでは差し引きゼロです。
ところが再生紙ではこの黒液が出ませんから、燃料としては・・・そう、石油を使うしかありません。CO2問題でやり玉に挙げられている「化石燃料の使用」が発生します。
さらに再生紙はインクの分離のため、ピュアパルプより高温で長時間熱を加えなければいけませんし、漂白のための薬品もピュアパルプよりかなり強力なものが必要です。
印刷会社の知人の話によると、再生紙の工場の煙は色もニオイも強烈だとか。
その廃液が生態系に影響を及ぼすかもしれないのに、です。
特に一時期はやった「牛乳パックの回収」ですが、あの牛乳パックほど再生させるには手間と薬品と石油が必要なものは無いそうです。
酷い言い方ですが、「無知なる善人による環境破壊」を我々は行っているのです。
いかがでしょうか。
「そんなこと知らなかった」で良いのでしょうか。
もちろん地球環境は大事です。利益だけを考えた無軌道な森林伐採や、エネルギーの無駄遣いは指弾されるべきでしょう。
しかし自分の頭で何も考えずに、人の言うこと(主にマスメディアとお役所)を鵜呑みにして、過敏に反応するのは、はっきり言って愚かなことだと思います。
「エコは自分のできることから」を否定するつもりはありません。
ただ、事実を隠して闇雲に危機感を煽るのは卑怯です。
またそうした煽りに乗せられ、疑問も持たず、自分で調べもせずに、エコを押しつけたりエコをファッションのように扱う最近の風潮は、なかば危険とすら思うのです。
今一度、自分なりにエコを考えてみませんか?

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