ファカルティズ・コラム
2008年08月20日
デキルヤツノ条件
2週間ぶりの更新です。
みなさん、夏休みは取れましたか?
私は旧友との毎年恒例の新潟競馬ツアー(温泉にのんびり2泊して夏のマイル重賞『関屋記念』を楽しむ)と、妻の実家(これまた新潟)への帰省を組み合わせて、久しぶりにゆっくりできました。
え? 「それで競馬の収支は?」ですか?
こうやってわざわざ書くくらいですから、一応プラスです。
とはいえ、勝ったのは2年ぶりなのですが(笑)
さて、近況報告はこのくらいにして本題です。
本日は、2年半ぶりに『マイ・ブックマーク』のカテゴリーで、オススメのサイトをご紹介します。
以前もご紹介した、ネタの宝庫であるNBonline(日経ビジネスオンライン)の人気コラム、『デキルヤツノ条件』です。
著者である降旗学(ふりはた・まなぶ)氏は、1964生まれのフリーのノンフィクションライター。私とほぼ同年代です。
このコラム、とにかく面白い!
内容はもちろんのこと、長大な前置きや度重なる脱線、およびその文体も含め、筆者の尋常ならざる筆力に唸るばかりです。
しかしながら、このコラムを「デキルヤツノ条件を教えてもらおう」と思って読んではいけません。
私のブログのような単純な作りではないからです。
はっきり言って、このコラムに相対するにはそれ相応の読解力を必要とします。
筆者は我々読者を試しています。
あたかも「ここから本質をつかめるヤツじゃなければ、デキルヤツには到底なれないよ」とでも言われているようです。
そして筆者は実験しています。
紙媒体と異なる、インターネット媒体でのコラムやエッセーの書き方、読者との対話、その新しい姿を模索しているようです。
このコラムには、毎回かなりの数のコメント(読者の感想)が付きます。
その約半数は的外れ。
まあ感想のコメントですから、何を言っても自由なのでしょうが、あまりにも本論と外れたコメントには苦笑するしかありません。
筆者は、コラムの15・16回でそうしたコメントに対する痛烈な批判を行っています。
それはまるで、「デキルヤツになりたいなら俺と議論しようぜ」と言わんばかり。
まさに『読み手を選ぶ』コラムです。
しかしそれだけに様々な示唆があります。
とは言え、その示唆も筆者が与えてくれるわけではありません。
これまでの全24回の中で、明確に「デキルヤツとはこういうヤツでは?」と書かれているのは数回しかありません。
また、その数回でさえ筆者が『デキルヤツノ条件』を明示しているわけではなく、前述の通り「デキルヤツとはこういうヤツでは?」という疑問文の形なのです。
つまり、「自分なりに考え、自分なりの答を掴み取る」しかないのです。
ですから、このコラムはデキルヤツに近づくためのトレーニング・ツールとも言えます。
文章の長さにうんざりする前に、その長さの意味を考えて読んでみてください。
自分の価値観と異なる部分があっても、脊髄反射で腹を立てるのではなく、異なる価値観を認めようとしたり、またなぜ価値観が違うのかを考えてみてください。
言葉の上っ面だけでなく、その言葉を筆者が使った理由や、その言葉の定義にも思いをはせてください。
そうすれば、たぶんこのコラムの本質が見えてきます。
筆者は、その経験談を読めば間違いなく『デキルヤツ』です。
(現レッドソックスの松坂への取材過程や、インタビューに望む際の心構えなどは、これぞプロです)
しかし筆者は自身を『ぼんくら』と呼びます。
私は以前のエントリーで、「自分は賢い(賢者)と思ったら、あなたは既に馬鹿(愚者)ですよ、ということですね(笑)」とジードの名言を引用しました。
自身を『ぼんくら』と位置づける。
これもまた『デキルヤツノ条件』なのではないでしょうか。
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