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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2008年11月21日

類義語を考えてみよう

前回のエントリーでは、
「反対語を小学校で学ぶのは、実は論理思考力のトレーニングのため」
ということをお話しさせていただきました。
しかし反対語とくれば、もうひとつ、そう“類義語”も考えなければなりません。
はい、やはり類義語を考えるのも論理思考のトレーニングなのですね。
しかし、似たような意味を持つ言葉を考えて答えるだけでは、論理思考のトレーニングとしては少々物足りないと言わざるを得ません。
たとえば、「『馬の耳に念仏』の類義語は?」と問われたら何を答えますか?
『猫に小判』『豚に真珠』などが出てくるはずです。
これでも確かに「言葉の意味を考える」点においては論理思考が必要です。しかしこの問いかけでは、結局のところ「知識(ボキャブラリー)の数」を評価することに主眼が置かれてしまいます。
まあ、それはそれで大切なことではありますが。
では、どうすれば類義語を考えることで論理思考をトレーニングすることができるのでしょうか。

それは、『類義語の違いを説明させる』です。
それも自分の言葉で。
辞書で引いて正しい/間違っているはどうでも良いのです。
多少こじつけであろうが、説明を聞いた人が「なるほど、それもそうかも」と納得してくれれば良いのです。
類義語とはいえ別の言葉です。
全く同じ意味の言葉だとしたら、本来ひとつで良いはず。しかし同じような意味を表す言葉が複数あるということは、そこにはなんらかの違いは存在するはずなのです。
それをしっかり考えることは、間違いなく論理思考力を高めます。
なぜならば、我々は結局のところ“言語”を使って思考しているからです。
反対語も同じですが、こうして言葉の意味にこだわることが、論理的に考えるために大切なのです。
ちょっと試しに、単純なもので考えてみましょう。
『うどん』と『そば』の違いを説明してください。
普通は「うどんは小麦粉を主原料とし、そばはそば粉を主原料とする」と答えるでしょう。
確かに科学的です。
しかし、他の説明はできませんか?
はい、「白いのがうどんで、黒いのがそば」もあるでしょう。
また、「関西人が好むのがうどんで、関東人が好むのがそば」と答えてもいいはずです。
「油揚げとの相性がよいのがうどんで、天ぷらとの相性がよいのがそば」と答えても構いません。
それがたとえ個人の好みだとしても、その人にとっては決して間違った答ではありませんから。
では、ここからが本番です。
自分の言葉で、明確に2つの言葉の違いを説明してください。
ちなみに、問題の下には回答例(もちろん正解でも何でもありません)が白い文字で書かれています。
自分なりの答を考えた後、問題の下の方をマウスでドラッグしてハイライトさせれば、回答例が見られます。
(1)『屈指』と『抜群』の違いを説明してください。
【回答例】

◇表彰台クラスが『屈指』で、金メダルクラスが『抜群』

このあたりはまだ「言葉を構成している文字」から考えることができますね。
しかし多様な表現ができるはずです。ここが大事。
(2)『有名』と『著名』の違いを説明してください。
【回答例】

◇善し悪しに関わらず名が知られているのが『有名』で、良い意味で名が知られているのが『著名』
◇その人そのものの名が知られているのが『有名』で、その人の功績が知られているのが『著名』

どうでしょう。
思ったより色々な定義ができることに気づかれたでしょう。
ではもう1問。
(3)『文化』と『文明』の違いを説明してください。
【回答例】

◇ずっと残るのが『文化』で、いずれ滅びるのが『文明』
◇精神的に人を満足させるのが『文化』で、物質的に人を満足させるのが『文明』
◇時系列で線として続くのが『文化』で、地理的に面で広がるのが『文明』

他にも様々な類義語が、こうして思考トレーニングの材料になります。
以前のエントリーで、『分けて考える』ことの重要性をお話ししましたが、このトレーニングも、ふたつの類義語の違いを考えるということで、まさに『分けて考える』の実践なのです。
また、もうお気づきかもしれませんが、この「類義語の違いを考える」トレーニングは、言葉の意味に敏感になることで論理思考力を高める他に、もうひとつの効果があります。
はい、「類義語の違いを“自分の言葉で”表現する」ことから、間違いなく『論理的に説明する』ことのトレーニングにもなっているのです。
でも、なかなか楽しく取り組めるトレーニングだと思いませんか?
ぜひ職場で、そして家庭でクイズ感覚でやってみてください。

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