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「Learning」―自分も学びの体現者

2013年06月11日

山内(鳥越) 久未

 私は2011年から丸2年、ラーニングファシリテーターとして慶應MCCに勤務していました。10年足らずの短い社会人経験ではありますが、今回貴重な機会をいただきましたので、これまでの自分のキャリアと学びについて、Learnerの一人として振り返ってみたいと思います。
 私が「大人の学び」の大切さに気づき、そして学ぶことに救われたのは、慶應MCCへ入社する前に経験した挫折がきっかけでした。

仕事が大好きで、がむしゃらだった20代

 大学卒業後、私は旅行会社の営業職として社会人生活をスタートしました。旅行が大好きで、目には見えない感動―”わくわく””どきどき”を誰かと一緒に体感することに大きな喜びを感じていた私にとって、旅行会社での仕事はまさに天職だったのだと思います。時間は不規則で、早朝から深夜まで仕事が及ぶこともありましたが、さまざまなクライアントと出会い、大好きな職場の仲間と多くの時間を過ごす日々は刺激的で、疲れを感じないほど楽しいものでした。
 入社当初から、私は将来のキャリアについて、1つの夢を描いていました。
「いつか、海外支社で駐在員として働きたい。世界を舞台に仕事がしたい。」
 やりがいのある大好きな仕事に、将来の夢。当時の私が見ていた未来はどこまでも希望にあふれていました。
 ところが、転機は20代の終わりに突然訪れます。病気になり、治療に専念するため仕事を辞めざるを得なくなったのです。念願だった海外支社への駐在というチャンスを掴み、赴任を目前に控えたタイミングの出来事でした。今思えばそれは、自分の体力を過信し、ブレーキを忘れてアクセルを踏み続けていた私に対する身体からの警告だったのでしょう。入社当時から抱き続けた夢を、私は自分自身の手で打ち砕いてしまったのです。
 病気が完治した後も、強い絶望感に打ちのめされる日々が続きました。目の前のチャンスを、夢を、自分で壊してしまったこと。天職と思っていた仕事を辞めてしまったこと。順風満帆だと信じていたキャリアの先が突然見えなくなった私は途方に暮れ、深い闇の中で立ち止まっていました。とことん泣いて、落ち込んで、ようやく転職に向けて重い腰を上げたとき、出会ったのが慶應MCCのラーニングファシリテーターという仕事でした。

人生の転機で初めて考えた「大人の学び」

 今思い返すと大変恥ずかしいのですが、前職時代の私は心のどこかで「私は仕事が忙しいんだから、学んでいるヒマなんてないのよ」と思い、「机上ではなく、経験から学ぶことこそが真の学びだ」と信じていました。
 ところがいざ転職活動をはじめてみると、それまで信じていた「経験で学んだ」はずの自分のスキルに、急に自信が持てなくなりました。会社や組織に所属せず、名刺も持たずにただの一個人でいることがなんとも心細く感じられ、これまで、”なんとなく”、肌感覚で乗り切ってきた仕事のやり方に大きな不安と危機感を覚えたのです。
―私はこれまでの社会人生活でいったい何を身につけ、学んできたのだろう?
―これまでの”なんとなく”を、確信に変えるにはどうしたらよいのだろう?
 慶應MCCのホームページには、キャリアはおろかこれまでの仕事のやり方にすら自信が持てなくなっていた私の疑問に答えるように、こう書かれていました。

経験を積んだ社会人の真の「学び」は、白紙(何もない状態)に新たな知識や技能を書き記すことではなく、新たに獲得した知識・理論と自らの実践・経験を結びつけ、自分なりの解釈を加え、そこから得た知見により、行動と意識を永続的に変容させること

 これまでの五感に頼る仕事の仕方―”なんとなく”に自信が持てずにいた事への答えは、まさにこの一文にありました。ただ経験を重ねるのではなく、行動と意識の永続的な変容に向けたアクションを起こすこと。そのために学ぶという姿勢。いずれも、これまでの私に決定的に欠けていたことでした。
 「大人の学び」を初めて意識した私は、これまでの暗い霧が少しだけ晴れたように感じたと同時に、ラーニングファシリテーターという仕事に大きな魅力を覚えました。前職とまったく違う業界に不安もありましたが、社会人スタートの時に思い描いていた大切な想いである「”わくわく””どきどき”を誰かと一緒に体感すること」と重なるこの仕事は、もう一度新しいチャレンジをしたい!という気持ちを起こさせてくれました。
 
こうして私は、ラーニングファシリテーターとしての新たなキャリアを慶應MCCでスタートさせ、「大人の学び」の水先案内人となるべく、一歩を踏み出したのです。

「大人の学び」に向き合った日々、小さいけれど確かな一歩

 慶應MCCで過ごした日々は、想像以上に楽しく、私自身の学びに溢れていました。先生方の素晴らしい講義はもちろん、「大人の学び」を実践する多くの参加者の方々との出会いはとても印象的で、大人同士が学び合う場の魅力に、私は新鮮な驚きと喜びを感じていました。
 そのため、今年の3月から主人の仕事の都合で東京を離れ、福岡に移り住むことになったとき、再び大好きな仕事を離れること、また、これまで出会った参加者の皆様、ご指導いただいた先生方や職場のメンバーと離れることが非常に残念でなりませんでした。
 これで良かったのだろうかと悩みながら、仕事の引き継ぎをひとつずつ進めていくうちに、ふと、自分自身のこれまでの小さな積み重ねに気がつきました。
それぞれにどのような魅力があり、得られる学びがあるのかをお伝えしたくて、必死に読み込んでぼろぼろになったプログラムの総合ガイド。机の配置や配布物のタイミング、振り返りのメールのために書き留めた膨大なメモ。時には講師と意見をぶつけながら、ひとつひとつ進め方を工夫し、何度も書き直したプログラムの企画書。
 「大人の学び」の素人だった私なりに、必死に考え、動き、学んだ軌跡がそこにはありました。2年間という短い時間の中でも、「大人の学び」のプロとして、誇れるような仕事がほんの少しでもできたのかもしれない。その実感は私にとって、小さいけれど確かな一歩だったのです。気がつけば、以前の転職で感じたような絶望感や未来への漠然とした不安は、消えていました。

新しい夢に向かって

 福岡に移り住んで、1か月ほどが経ちました。同じ日本国内ではありますが、福岡の人たちはとにかくエネルギッシュ。韓国や中国をはじめとした、アジアからの旅行者も多いこの街は、活気と未来へのエネルギーに満ち溢れています。(ちなみに食事もお酒も本当に美味しい!)
 慶應MCCで最後に取り組んだ「クレド(行動指針)プロジェクト」は、今も私の大切な軸になっています。そのうちの1つ、「Learning」の言葉に背中を押され、ここ福岡でも学び続けようと先月から語学学校に通い始めました。
 

「Learning」―自分も学びの体現者
  人に学びましょうと言う私たちは学んでいるでしょうか。
  慶應MCCの学びとは、行動と意識を変化させていくことです。
  自らも学ぶ一員として、学び続け、学びを楽しみます。

 慶應MCCで参加者の皆さま、先生方、スタッフと一緒に学んだ者として、誇れるような生き方をと思うと、自然と背筋がしゃんと伸び、頑張ろうと思えるのです。
 まだ小さな一歩を踏み出したばかりですが、慶應MCCで培った”学び続ける”というマインドと、かつて思い描いた、”世界を舞台に働く”という夢を繋げたい。これが今の私の夢です。

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