2014年06月10日
【ほうやのロンドン便り】広がる箸の文化~ロンドンでみる日本食
保谷範子
SUSHI、MISO SOUP、RAMEN…。
健康志向の高まりから身体に良いことが評価され、また昨今の和食ブームや日本のサブカルチャーへの関心も手伝ってか、世界中どこに行っても日本食の店を見ることのできる時代。
ここロンドンも飲食店数件のうち一軒は日本食の店ではないかと思うほど、和食、正確には日本風の料理を食べることのできるレストランがいたるところにあります。
特に面白いのは、簡単に食べることのできるファストフードで日本食を専門とする店が増え、チェーン展開し流行っていることです。ただ、これらの店、日本人からすると驚く点が多いのも興味深いところ。
有名なのは回転寿司。ロンドンの主要駅、空港、デパートなどにも入っていて、多くの人で賑わっているチェーン店です。
店の真ん中にはベルトコンベアのレーンがあり、カウンター席が多く、色によって2~5ポンド(約350~850円)位の値段の異なる皿が回っています。
ここまでは日本の回転寿司屋とほぼ同じでしょうか。
大きく違うのは、お皿の中身。私たち日本人が寿司とイメージするようなネタはサーモン、マグロ、海老とごく限られており、他は海老フライやテリヤキチキンなど寿司以外のものがたくさん。
日本の回転寿司屋であればお茶用の湯がでる蛇口も、炭酸入りと炭酸なしのミネラルウォーターが出る2つの蛇口が用意されていたりと、これもイギリスらしい感じです。
衛生上の観点もあるようですが、皿の上には透明プラスチックのカバーがされた状態でベルトコンベアーをぐるぐると回っている様子は、オレンジ色を基調としたポップな店内の色づかいとも相まって、何かのショーを観ているような華やかな雰囲気がします。
それもそのはず、このチェーン店のコンセプトは「ロボットがスシを握り、コンベアでスシを動かす回転寿司は未来的なエンターテーメント」としているそうです。
他にもビジネスパーソンのランチに気軽に利用することができる持ち帰り用の寿司やおにぎりを中心に置くチェーン店も流行っており、オフィス街などに店舗数が増加中です。
こちらは、マグロがのった海鮮丼や海苔巻などが入った折詰めが6~8ポンド(約1,000~1,300円)程度であり、カツ丼やカレーなどまで置いてあります。
特に人気なのは枝豆。ゆでた枝豆が透明なプラスチックの容器に入って売られており、こちらの人は寿司などと一緒にランチで食べています。
このお店も店内は和のイメージというよりもシンプルかつスタイリッシュ、未来的な雰囲気が特徴的。「わさび」、「えだまめ」といったように、店名や商品名などには、アルファベットと並んで日本語の表記が目立ちますが、来店者の多くは日本語を読むことができませんから、ひらがなや漢字といった日本の文字はおしゃれなデザインの一種として取り入れているのでしょう。
おもしろいのは、両店ともオーナーは日本人ではないということ。創業者は、日本を訪れた際に、和食を食べ、料理だけでなく日本の店のつくりや商品の見せ方にインスパイアされて、ロンドンで流行るような形態に創造し、今では他の国にも展開しているそうです。
そういえば、日本人が経営する和食店はこだわりが強すぎるというのもあってか、コストがかかりすぎて地元の人に愛される店を広く展開するのはなかなか難しいといったことも聞いたことがあります。
これらのチェーン店は、和食をよく知る日本人からすると「ん?ちょっと違うなぁ」と思う事も多いのですが、和食への既成概念が薄い創業者だからこその枠を超えた新たな視点で”日本風”を世界に発信し、流行っているのかもしれません。
最近のロンドンでは、日本のラーメンを扱う店も増えていますし、地元のスーパーには味噌や豆腐など日本食が普通に並んでいるところも目立ちます。
これら日本食を食べる時に使うのはもちろん箸。みんな、器用に箸を持ちながら、口に運んでいます。
いまやロンドンっ子にとって、箸を使うのは特別なことではなく、日常の食事風景の一部になりつつあることを実感します。
登録
オススメ! 秋のagora講座
2024年12月7日(土)開講・全6回
小堀宗実家元に学ぶ
【綺麗さび、茶の湯と日本のこころ】
遠州流茶道13代家元とともに、総合芸術としての茶の湯、日本文化の美の魅力を心と身体で味わいます。
オススメ! 秋のagora講座
2025年1月25日(土)開講・全6回
宮城まり子さんとこころの旅
【どんな時にも人生には意味がある】
『夜と霧』の著者V.フランクルの思想・哲学・心理学を題材に、生きる目的・人生の意味を語り探求します。
いつでも
どこでも
何度でも
お申し込みから7日間無料
夕学講演会のアーカイブ映像を中心としたウェブ学習サービスです。全コンテンツがオンデマンドで視聴可能です。
登録