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変化を楽しみ、変化に学ぶ

2016年04月12日

正岡 幸伸
株式会社野村総合研究所

変化を楽しむ心を持つこと。そして、自ら変化すること。

これが、慶應MCCで私が受講した「組織開発論」、そして「ラーニングイノベーション論」での学びです。
どちらの講座も回を重ねるたびに、「わたしはどうなんだ?」、を暗に問われ続けました。それは、いまも続いています。そして、おそらくこの問いが、私にとって最大の研修効果となっています。

20年あまり組織・人材マネジメントのコンサルティングを行ってきた私のテーマは、常に「変化」でした。5年前に会社の人材開発部門に異動してから、顧客が「社内」に変わりましたが、そのテーマは同じです。
でも、お金を払ってでも変わろうと意思決定してコンサルティングプロジェクトを発注する社外の顧客と、スタッフ部門のサービスにお金や時間を割く社内の顧客とでは、まったく様相が違いました。後者の顧客対応の難しさを痛感するにつれ、前者の顧客とは違う「変化」のメカニズムを渇望するようになりました。

その一つの解決の途を探して、2014年5月から翌年3月まで、神戸大学の金井教授がコーディネーターを務める「組織開発論」を受講しました。
南山大学の中村教授や八木教授らゲスト講師から組織開発の技法や理論を学び、その後、規模や歴史、業種業態の異なる企業での実践者の事例に直接触れました。それらの中に私が共通して感じたのは技法以前の、組織開発ファシリテーターの持つ秘めた信念、勇気、そして仲間とともにあるといった、ファシリテーターのあり方(Being)でした。
特に、八木教授の説く、対立するポジティブとネガティブの2分論を超えた「ぽじてぃぶ」の姿勢は、金井教授が定義する“Willingly Follow”のリーダーシップとあいまって、しなやかで強靭なファシリテーターのあり方を、強く印象づけてくれました。

「組織開発論」で組織コミュニケーションの変化への関わりを学んだ後、「学び」そのものの学び、しかも最新の理論と実務を求めて2015年5月から10月まで、東京大学の中原准教授コーディネーターによる「ラーニングイノベーション論」を受講しました。ここでの学びは、私にとって(中原講師の喩えを借りれば、“便所のスリッパで頭を引っ叩かれた”ような)大きなインパクトとなりました。

「学び」とは、学習者に「本気で考えさせること」、そして学習者が「変化すること」。そして、米国の教育哲学者ジョン・デューイの言葉、「誰も学んでいないのに教えたというのは、誰も買っていないのに売ったというのと同じ」。これは、本講座の冒頭部で中原講師が語り、その後13回に亘る講座全てを貫くメッセージでもありました。

翻って、企業内で我々が社内顧客に提供している研修をはじめとする人材開発サービスが目的化して、いかに学習者の真の学びになっていないかを、痛烈に突きつけるものでした。そしてそれは、教える内容(コンテント)そのもの以上に、学習者中心の視点から研修の前後も含めて教え方(プロセス)を大きく変革することを求めるものでした。

ここから中原講師によるゲスト講師陣のコーディネート力の妙が始まります。教授者としての我々にはスパイシー(辛口)なメッセージを突きつけつつ、学習者の視点からは自ら変わる方向へと動機付けられる、甘辛硬軟織り交ぜた実習機会が各回のゲスト講師から提供されます。つまり、ラーニングイノベーション論の受講者は毎回、学習者と教授者の間をせわしなく行ったり来たりする経験学習を繰り返すことになります。

アドベンチャーラーニング、ケースメソッド、インプロビゼーションなど、学習者は想定外の変化を受容し、それを乗り越えようと全知全能を駆使します。そこに、いままでの自分をストレッチして「変わる」経験をし、それを内省して新たな挑戦に臨めるように成長します。初回講義で学んだデビッド・コルブの経験学習サイクルが、その後の講座プロセスに毎回埋め込まれていました。

ゲスト講師の松尾教授は、学習者にとってそのプロセスがエンジョイメント(楽しみ)であることも大切と説かれました。この「楽しむ」力は、学習者本人にとっての意味づけや興味を引き出して、学習を継続自走する力にもなりえます。このように、学習プロセスに教授者、学習者が共に「あそび心」を持つことが、当て字ながら「明日備心(明日に備える力)」を育むのではと考えるようになりました。

そう言いながらまだ、いまの自分の快適ゾーンから一歩踏み出すことに臆病な私です。が、背中を押し続けてくれる強い味方もいます。それが、慶應MCCでの最大の収穫、志を共有してお互いに学び合う仲間のラーニングコミュニティです。講座が終了した後も、同報メールやSNS、そして自発的な勉強会が続いています。

職場を越えて組織や人の「変化」を語り合える仲間ができたことで、これから、変化を楽しむ心を持って、自らも変化し続けられることを期待しています。

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