学びの体験記
2016年06月14日
医療現場の縦割りの弊害を打破するチーム開発
私は昨年、慶應MCCの「チーム開発リーダーシップ」に参加しました。医療業界に長く身を置いて痛感するのは、多くの医療のプロフェッショナルによりチーム医療が推進されている最近の医療機関の臨床の場において、組織全体の運営という観点では、なかなか縦割り組織の弊害を崩すことができず、閉塞感さえ漂うことがあるという残念な状況が散見されることです。私は医療法人の役員として、この弊害を当院で取り払い、そして部署間の利害を超えた全体最適な病院組織運営を、自分自身の仕事の目標の一つとしてきました。
そのため、自分自身のリーダーシップ開発に主眼を置いて、近年、慶應丸の内シティキャンパスにて年一回程度のリーダーシップ関連講座に参加しておりました。その段階を一歩進めて、自分が組織のトップとしてリーダーシップを発揮することはもちろんですが、一緒に支えあって活動するチームメンバーをどのように啓発し、共に成長していくか、そして将来病院組織を運営していくうえで核となるチームを構築していくかに興味を抱くようになり、今回の「チーム開発リーダーシップ」参加に至りました。
なんといってもこのクラスの醍醐味は、ロールプレイを中心とした演習です。それぞれの学びのポイントを津村先生に論理的に分り易く解説頂いた後に行われます。まずその設定や手法が毎回私の想像を超えるもので、ワクワクしながらも頭をひねり取り組むのですが、クラスメイトをお互い受け入れる素地が醸成されるようにクラス構成がされており、自分をさらけ出して全力で取り組むことができました。自分の当初の想像と演習結果との大きなギャップと、信頼関係からくる安心感と共感により、学びの腹落ちが非常に大きいのもこのクラスの特徴です。
学びの腹落ち感を促進するもう一つの仕組みが、DLAP(Do, Learning, Action, Purpose)と呼ばれる成長のプロセス焦点を当てた学習方法でした。具体的には、毎回クラスで学んだことを職場で実践し、それをクラスメイトとメーリングリストで共有することです。学んだことを即座に職場で実践するということは、躊躇しがちで決して簡単なことではありません。その点このクラスでは、学んだことの深さとクラスメイトとの一体感が自然と背中を押してくれます。また、課題報告に対する津村先生やクラスメイトのフィードバックも大きな励みとなりました。
この実践課題を通じて、私は職場で大きな成果を実現することができました。タックマンモデルでは、チームは「形成」→「葛藤」→「構成」→「協働」という成長過程を辿るのですが、それぞれの過程で課題やアプローチの仕方が違います。この分析によると、当院で多部署からメンバー構成されている委員会の幾つかは「形成」過程に留まっていることに気づきました。そのうちの一つである10人ほどの物静かな企画関連の委員会で、チーム成長の促進を目的に学んだことを最大限活用してみました。殆ど積極的意見も出ず、私の発言にも受動的だった「形成」段階の委員会に、次第に大きな変化が見られました。委員からの意見も活発になり、そして内容も前向き、協力的になってきたのです。
現在では葛藤期を無事克服し、相互理解や尊重、補完関係が進み、「構成」と「協働」の間といったところでしょうか。葛藤期から構成期への移行がリーダーの力の見せ所です。この大変な時期は避けられません。ただ多くの場合、我々は誤解しがちです。この葛藤期に不満などをぶちまける人がいると、和を乱す問題児とみなしてしまいます。しかしクラスでは、この不満の裏には、その人が持つ希望や願いがあり、それを十分に理解して、真摯に話を受け止めることが非常に有効であり、それがチームを次のステップに成長させていくことを学びました。この学びは大変役立ちました。現在はリーダー役を務めていて非常にやりがいを感じますし、何より各委員への信頼感を感じています。
このチームのメンバーは現在、院内スタッフ間で気持ちよく笑顔でお互い挨拶をする「Good Smile運動」や、院内の誰もが参加できる草の根型職場改善運動「みんなで提案、みんなで改善」、病院トップと気軽に誰でも懇談できる「理事長と語り隊」など、今まで当院では全く存在しなかった斬新なアイディアや活動の推進役になってくれています。この様な新たな試みがどの程度のインパクトを成果としてもたらしてくれるか、また、中長期に継続できるかというのはまだ始まったばかりですので予測不可能ですが、可能性の大きさに期待しながら、このような変化を院内で起こせたことに私は感動を覚えています。このきっかけを同志となったスタッフと一緒に大切にし、個々のメンバーが成長しながら、チームの輪を院内で広げていきたいと考えております。そして、より良い病院組織運営の土台になるよう強く願っています。
最後にこの場をお借りして、多くの学びを授けてくださった講師の津村先生、クラス運営に御尽力下さった鈴木様、中原様、そして多くのことを一緒に学びそして語り合ったクラスメイトに感謝を述べさせて頂きたいと思います。皆様、有難うございました。
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慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
日本経営倫理学会常任理事
稲盛経営哲学に学びながら、人間性を尊重し、利潤追求と社会貢献の統合をめざす経営学理論を構築する、新論が真論となり、不易流行の経営学として結実することを目指して。
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福澤 克雄
(株)TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部、演出家・映画監督
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