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私にとっての学びとキャリア

2005年04月12日

高橋 栄一

ほんの数年前には今の自分の生活は全く想像できませんでした。
医学部を卒業、大学院で博士号取得、また一方、良い臨床医になることを目指して循環器専門医資格も取得してから3年間の米国留学、帰国してからも大学病院で臨床・研究・教育を何の迷いもなく続けていました。忙しく、やりがいもあり、充実した日々でしたが、ある日、ごく単純ないくつかの悩みが徐々に自分の中で大きくなりはじめたのを感じはじめた時、縁があって外資系製薬企業から、“マーケティングとコラボレーションするメディカルの仕事”という、良くわからないポジションの話がありました。


後々にやっとわかったことなのですが、弊社が言うマーケティング部の仕事は、製品の持つポテンシャルを最大化するために可能なあらゆることを行うことで、製品の生命と成長の責任部署です。一方メディカル部の仕事は、基礎的・臨床的・法律的データの収集、蓄積、管理、運用をとおして薬の安全性担保と適正使用推進をはかる部署です。私が携わることになった仕事は、メディカル部に属し安全性を最大限留意しながら、“人に貢献できる要素”を医師として可能な限り大きく発展させるというものでした。それには必要なデータを作リ出すという要素も含まれていますが、マーケティング部の仕事と重複する部分が大きいことは、徐々に実感されていきました。
さて、上司となる人と何度か話をするうちに、この新しい環境で自分を試してみたいという気持ちが強くなり転職しました。38歳の時でした。違う世界を学ぶことを“自分”という個のキャリアにはプラスにできるようにしようと思って決断したことを思い出します。
製薬企業における“メディカル”の仕事はこれまでの経験をベースにすればなんとかなるかと思いましたが(入社後すぐにそれが思い違いであることがわかり、逆に大きく戸惑いました)、“マーケティング”とは一体何なのか「現代用語の基礎知識」で語彙を繰るような状態でした。従って、“極めて早急に、具体的に、しかも好ましいレベル”で自分が欲している情報と経験とを手にいれる必要があり、そのようなプログラムを捜しました。幸運であったのは、この条件にぴったりであった慶應MCCの『マーケティング情報から顧客を「読み・解く」』第1期生募集を偶然にも発見できたことでした。慶應義塾を母体とする教育プログラムであることにも安心しました。弊社には慶應ビジネス・スクールの卒業生が多く、共通認識を得るにも都合が良さそうにも思ったからです。開講前に配布された資料や参考書「マーケティング・マネジメント論(小坂 恕著)」はとても解りやすく、講義、ディスカッション、毎週の課題、チーム毎の発表会はいずれもオープンな雰囲気ながら真摯で積極的なものとなりました。これらは我々が第一期生であったことも幸いしたのかもしれません。6週間という短い期間はあっという間に過ぎたように感じましたが、充実した時間であり、マーケティングの基礎的“態度”を学べたように思います。企業のマーケティング・チームと一緒に働きはじめるスタート点で、この講座と出会うことができたお陰で、助走期間を有意義に過ごすことができました。また、このプログラムを通してほとんどはじめて異業種の方々と接することにもなり、興味津々でもありました。第一期生はその後も数回にわたり同窓会を開き、情報交換を続けており、この年代になって実は得がたい経験である“新たな仲間をもてたこと”をとても嬉しく思っています。
さて入社後の私は、某製品について医学的・科学的にその価値を高める作業を社内外で展開しました。まるで単独行動の遊撃隊のような感じですが、一つひとつの活動が製品の価値を高めることにつながっていることを実感できるのは面白いことで大きなやりがいを感じていました。しかし、いずれもがマーケティング・プランに沿った展開であるのだと解ると、製品の将来そのものの展開にもかかわりたい気持ちも大きくなってきていました。
メディカルを含む複数部署からのマトリックス・チームの中で働いていたためか、マーケティング部に属するいくつかの仕事にも直接に関わることが増えてきていました。入社後2年半たったつい先頃、理解ある、とてもチャレンジングな何人かの上司に恵まれて、ある製品のメディカル・チーム責任者の仕事に加えて、マーケティング・チームそのもののチーム・リーダーも任されることになりました。サイドからのサポートの立場から、製品の運命まるごとを預かる立場になりました。いかにグローバル企業でもこういう例は世界的に稀であり、チャレンジングな会社であることに自分が所属しながら驚いています。
自分への投資と考えた“新しい事を学ぶ”ことから、予想だにしなかったキャリアが自分の目前に拓かれたのですが、さらに必要なことを学ぶことで積極的に踏破しようと思っています。また、貴重な刺激を与えてくださった『マーケティング情報から顧客を「読み・解く」』第一期生の皆さん、講師の高橋先生、清水先生に私の感謝の気持ちを伝えたいと思います。

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