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人生の半分を過ぎて、改めて考えた学びとキャリアについて

2006年02月21日

大野利晴
有限会社オープン・ジンジ・コンソーシアム 取締役社長

10年ぐらい前までは、まだ「キャリア」という言葉は、経歴、経験を指す、一般的な名称もしくは国家公務員試験I種合格者の俗称を指していたと思います。
今では、職業、特に専門的な知識や技術を要する職業に就いていることを指す一般的な言葉になってきました。そのような金融専門職を相手にしているヘッドハンターをやっているので、「今の年収は、自分のキャリアを考えると安いと思うので、もう少しいい職場ありませんか。」「自分のキャリアだと、市場価値はいくらぐらいですか」「将来を考えるとどのようなキャリアステップがいいのですか」といった、会話が自然と聞かれるようになってきました。


仕事柄当然ではありますが、10年前と比べても、社員が会社に求めるもの、組織と個人の関係、職種と給料の関係がかなり変わってきて、キャリアは自分で作るものという意識が急速に浸透してきたのも事実だと思います。ただ、金融業界においては、キャリア・デザインを自分で作り上げることを重要視するがゆえに自分の可能性を狭めている人が多いことも実感しています。
私は、今年から独立して、社外人事部(External Personal Support)としてコンサルティングと資産運用業界特化型のヘッドハンターを始めました。それまでは、20年間、事業会社で人事の仕事をやっていました。
20年前、私が、大学を卒業し就職したのは、「就社ではなく、就職という意識を持って仕事を探しなさい。」と言われ始めた時代です。私も資産運用の専門家(ファンドマネージャーやアナリスト)になる事を夢見て、その業務が出来る可能性の最も高い会社を探しました。役員・部長になることなどには関心もなく、ただ、資産運用業界でプロフェショナルになることだけを目的に会社を選び就職活動を行い、そして希望通り業界大手の運用会社に就職することが出来ました。
入社前は、金融のプロフェショナルになるという目標が、すべてが想定通りに進むと信じて疑いませんでした。ところが、入社式後の配属先発表で、早くも想定外の出来事が起こってしまったのです。つまり、同期の中で唯一私だけ管理部門である人事部配属になったのです。両親は会社の中枢である人事部への配属を喜んでいましたが、私にはショックでした。“何で自分だけが、何が劣っているのだろう”と悩んでいました。
そのころは、まだ転職が当たり前の世界ではなかったせいもあり、退職は全く考えませんでした。とりあえず、与えられた仕事を精一杯やろうという風に意識を変え、与えられて仕事をこなしながら、傍らでいつ異動になっても大丈夫なように専門知識についても勉強を続けていました。一番初めの仕事は“給与の計算”、その後、幸か不幸か、人事異動になることは一度もなく、16年掛けて採用・研修・社員窓口・異動・機構改革・人事制度策定と着実に経験を積み上げ、最後は会社の業績の悪化に伴いリストラプランを策定・実行して、ほぼすべての人事業務を経験した後、ひとつの区切りと思い退職をしました。
ただ、入社当時の夢を実現することは出来なかったですが、人事業務を行ってきた自分の経験については満足していました。今流に考えれば、キャリア・デザインをきっちり実行したと評価されるのでしょうが、自分で主体的に人事のキャリアを積み上げてきた訳ではありません。会社の置かれている環境の中では、他に発揮できる能力がなかったので、同じ職種を続けざるを得なかったと思っています。もっと能力があり、器用であれば人事異動で他の部門に移され、また違う人生を歩んでいたと思います。
退職後は、別の視点から人事の業務を見るために私の育った金融業界と対極にあるITベンチャーで人事の業務に携わりました。業界が変わっただけで、仕事に対する考え方、キャリアに対する考え方、マネジメントに対する考え方、処遇に対する考え方等にいろいろな違いが見えてきて、非常に多くのことを学ぶことが出来すばらしい経験をすることが出来ました。
通算20年で2社の人事を経験することによって、“ヒト・シゴト”に対する自分なりの考えが固まるにつれて、企業内で人事の業務を行うことの限界も感じるようになってきました。
社員は、どんな人でも必要とされない人はいない、ただ、企業がおかれているその時点での環境で必要性が大きく変化する、状況においては必要なくなる人材も生まれることがある。また、どんな職務においても優劣の差があるわけではない、すべての業務が必要であり重要な業務である。ただ、年功序列制が無くなり、成果主義が浸透する中で、職務のプロフェッショナル化が進み、人材の需給バランスやスキルに基づく市場価格が生まれつつあります。それに対して人事が出来ることは限られています。例えば、人事異動は、会社が必要に応じ決定します。よって、社内で積めるキャリアには限りがあり限界がありますのでキャリアのアドバイスも出来ません。
また、人事部は決して特別な部門ではありません。基本的には社員へのサービス提供部門です。ただ、もう一面では、採用、人事異動、制度策定、処遇決定などの戦略業務も一部行うことになります。そのような業務を補助するために、給料・社会保険・採用のアウトソーシングや組織・人事のコンサルタントが外部に存在します。この関係が必ずしもうまく機能していない部分もあるので、私は、アウトソーシングでもなければコンサルでもない、ある種その中間のような社外人事部(External Personal Support)という仕事を作りたいと思い、独立することにしました。また、その一環として、ホームページもなく業界を絞り人づてだけのネットワークに頼って、紹介する人のキャリアアドバイザーを兼ねたヘッドハンター業務も行うようにしました。
元人事マンとして、社内にいないからこそ出来ることがある。そんな荒唐無稽な目標に向かって、残り半分の人生を今後も走り続けたいと思っています。
学ぶことの重要性について書くスペースがなくなりましたが、仕事を離れ、仕事で付き合っている人から離れ、いろいろな事を学ぶことにより、非常に多くのことに気がつきます。今までの経験でお勧めは、慶應MCCの2つのプログラムです。
高木晴夫先生・高田朝子先生の「ネットワーク時代の組織とリーダーシップ
いろいろなケーススタディを通じて、多種多様な考えを持った受講生が議論を深め、高田先生には大変ご迷惑をおかけしたが、“チーム効力感”を認識し共に学び成長できたのではないかと感じています。また、高田先生の好意により毎年1回過去の受講生を交えた合同セクションが開かれているので、各期の方々との交流の機会に恵まれていることもすばらしいとこだと思います。
野田稔先生の「変革の時代のリーダーシップ
このプログラムは、非常に内容が濃いものを決められた短い時間の中で、わかりやすく説明していただいたので、今後のキャリアを考える上でも非常にためになり、貴重な経験が出来たと思っています。特にスキーマチェンジ(意識改革)のプロセスと方法論を学び、さらには自分のキャリア・デザインを見直す機会もいただけたので、私にとっては有益な時間でした。また受講生にも恵まれプログラムが終了した後も一部の方とは交流続けさせていただいています。
両方のプログラムともリーダーシップがテーマになっていますが、すべての階層の人が自分のキャリアについて考えるいい機会にもなると思います。お勧めです。

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