KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2006年04月19日

「リーダーシップの旅」 野田智義さん

野田さんがISL(Institute of strategic Leadership)を立ち上げたのは2001年7月です。
実は、MCCがプレオープンし、夕学の前身である「プレ講演会シリーズ」というの開催したのが2001年の10月です。MCCのプログラムを企画する際に、慶應をはじめとするいろいろな先生に相談に伺うと「よく似たコンセプトだね」ということで教えていただいたのがISLでした。
世界を代表するMBAの教壇に立っていた方が作ったNPOと大学発の株式会社という違いはあったにせよ、そして対象者とプログラム内容は異なっていたにせよ、時代の閉塞状況に危機感をおぼえ「変革と創造」を目指して、新しい社会人教育機関を立ち上げたという点において共通するものを感じ、勝手に親近感を憶えておりました。
英語三文字の名称がそうさせたのか、企業にMCCを紹介にいくとISLと勘違いをされて話がかみ合わないなんてこともありました。そんな不思議な縁もあって、ISLのこと、そしてそのリーダーである野田さんのことを関心持ってウオッチしてきました。
ISLは5年間で、従前にないリーダー育成機関として社会に認知され、知る人ぞ知る存在になりました。その軌跡を野田さんがどうお話になるのか興味を持って講演を伺いました。


野田さんは、リーダーを「変革と創造を扱う人」と定義されています。
絶対にできないと思われていることを変える、これまでにないものを創る。そして事後には当たり前の存在として常識にしてしまう。それがリーダーたる所以です。
とはいえ、リーダーはひと握りの選ばれた人が担う役割ではなく、社会のあらゆるところ、階層で必要な存在です。われわれの身の回りには、皆が困っているのに「無理だろう」とあきらめて手がつけられていない問題が山積しています。そこに切り込むのがリーダーの仕事で、ティシーが「リーダーシップエンジン」と名づけたことではないでしょうか。
野田さんもキング牧師やマザーテレサのビデオを紹介しながらも、リーダーシップを語る時に一番の問題は「凄いなー。自分には出来ないだろうな。だから興味がないや」と片づけてしまう感覚だと強調されていました。
野田さんは「社長になろうと思って社長になった人間はいても、リーダーになろうと思ってリーダーになった人間はいない。リーダーは育てるものではなく育つものだ」といいます。
そして、リーダーが育つ過程を「旅」になぞらえて説明してくれました。
「リーダーシップの旅」は、けっして明るく楽しい旅ではなく、「暗い森の中、じめじめした沼地を歩き続けるようなもの」だそうです。
野田さんは「リーダーシップの旅」を3つのステージに分けて考えています。
第一ステージは「リード・ザ・セルフ」の段階で、まずは、困難な旅への一歩を自分が歩み出せということでしょうか。
沼地を歩き続けるには「なぜ歩くのか」という信念が必要で、野田さんはこれを、自分の基軸と呼んでいます。人を導こうとするのではなく、自分が自分の旅をリードして、ひとり沼地を進み、ふと振り返ったら仲間が付いてきていた。それが「リード・ザ・セルフ」が実現した状態だそうです。
続いて第二ステージは「リード・ザ・ピープル」の段階で、困難な旅を続けながらも、絶えず自発的に人がついてくる状態をいいます。
旅には予期せぬ事態や思わぬ障害がつきものですが、リーダーがその対処に忙殺され、いらだち、夢やロマンが見えなくなる。そうすると「ある日突然振り返ったら誰も人がいなかった」という不安にさいなまれるようになります。この不安と向き合いながら、旅を続けるには「無私」の精神が必要だそうです。「自分はこんなにがんばっているのになぜ分からないのか」という私心と戦い「他者に活かされている自分」という感覚をもてるかどうか。それが「リード・ザ・ピープル」の実現です。
第三のステージは「リード・サ・ソサイエティ」の段階で、自分を社会的な存在にまで高めることで、松下幸之助や本田宗一郎が到達した究極のリーダー像です。
野田さん自身の「リーダーシップの旅」は第二段階の途中だそうです。
ISLの成長と発展に伴っておきる問題と日々戦いながら、誰も付いてこないのではないかという不安と対峙する毎日だそうです。講演には、そんな思いを共有する目的で、多くのISLスタッフの皆さんを呼んでいました。悩みを赤裸々に正直にお話になる姿からは、どんな困難な道であろうと、これからも旅を続けていこうという強い意志を感じることができました。

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