夕学レポート
2007年11月28日
風を起こす 住谷栄之資さん
かつて、「新奇性を見いだす法則」という趣旨のエッセイを読んだことがあります。
人間は、自分の“常識”的部分にその説が抵触した場合「こいつは興味深い、おもしろい」と感じる動物である。
従って新奇性を打ち出すためには、なによりも“常識”に反する説や解釈を考えなければならない。
キッザニアの「エデュテインメント」というコンセプトは、まさにこの法則にあてはまります。
「エデュテインメント」とは、エデュケーションとエンタテイメントをくっつけた造語ですが、「学び」と「遊び」という二項対立要素を結びつけた点に、“常識”に反する新奇性を感じさせます。
ディズニーランドに代表されるように、エンタテイメントには、ファンタジーや冒険など現実世界とかけ離れたイメージの世界が必要だ、という先入観に囚われがちですが、よく考えてみれば、実は子供にとって「働くということ」は、ファンタジーや冒険と同じくらいに未知の世界です。
料理次第で、素晴らしいエンタテイメントに仕立て上げることができるということを、キッザニアの成功は教えてくれます。
住谷さんが、キッザニアの存在を知ったのは3年前。
「カプリチョーザ」「ハードロックカフェ」などで有名な、フランチャイジング型外食産業のWDIの社長を退いた翌年のことでした。
何かを面白いところはないかと海外の友人に尋ねた際に教えてくれたのが、メキシコで話題になっていたキッザニアでした。
早速メキシコを訪れた住谷さんは、即座にその可能性を見抜き、ライセンス獲得を決断しました。
それからわずか2年の準備期間で、昨年秋に豊洲にキッザニア東京のオープンを実現させました。
控室でお聞きしたところでは、キッザニア東京のマーケティングやオペレーションは、ほとんど日本独自のものだそうです。
「ツールやマニュアルもたくさんありましたが、自分たちでやった方がいいことが何かはわかりましたから。ライセンス料はコンセプト購入代金と割り切っています」とのこと。
フライチャイズビジネスのプロ経営者ならではの慧眼かもしれません。
現在、キッザニア東京は、一日2回転で3000人を収容することができるそうですが、休日の予約は半年前の解禁と同時に一杯になり、満員状態が続いているそうです。
2009年の9月には、西宮市に国内第二号店の開設も決まっています。
世界展開では、ジャカルタ、ドバイ、リスボン、マドリッドなど各地でのオープンが予定されているとのこと。
根っからの起業家である住谷さんが問題意識として持っていることは、日本初のサービス業のグローバルモデルがあっていいのではないかということです。
高度経済成長以降、製造業での日本企業は、世界を席巻してきました。
しかしながら小売、ホテル、金融などのサービス業ではグローバル展開に成功していません。
日本初の世界フランチャイズがあってもいい。
マンハッタンの高級日本旅館があってもいいのではないか。
住谷さんは、そう考えているそうです。
ロマンスグレーの髪型がよく似合う水球で鍛えた大柄な身体は、64歳の年齢を感じさせません。
「“風を読む”のではなく、“風を起こす“ことが重要ではないでしょうか」
講演をお聞きになった方はお分かりですが、住谷さんの頭の中には、既に新規ビジネスのイメージが明確に浮かんでいるようです。
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