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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2005年06月14日

背中を押せる人になる 「営業のテクニックはいらない」 和田裕美さん

300回近い「夕学五十講」の実績の中で、営業をテーマにした講演は、きょうが初めてだったと思います。だからでしょうか、早々に満席マークが灯り、皆さんの期待の高さが伺えました。和田裕美さんは、ブリタニカで英語教材の営業として記録的なセールス実績を残した方です。フルコミッションの成果報酬で、20代前半で3,800万円の年収があったというから驚きです。
和田さんのお話は“空気をつくる”ことからはじまりました。和田さんが歩んできた営業の世界は「話せばいい人なんだよね」という甘えが許されません。第一印象でマイナスイメージを与えたら、次回は会ってもらうことすらできません。だからこそ、まず目の前の相手から好かれる人になるための“空気をつくる”ことが重要なのだそうです。
「場の空気を作るのは、私一人ではないのです。皆さんとの相互作用が必要です。皆さんも、明日は営業として取引先の方と商談するかもしれませんよね。営業の場であろうとなかろうと、いつも“空気をつくる”ことに慣れていなければ、必要な時に空気はつくれませんよ。」 和田さんは、そう語りかけながら聴衆に協力を仰ぎ、味方に引き込んでいきます。


空気ができたあとは、一気に和田ワールドが展開します。
明るくハッキリとした口調、流れるような話術、笑顔・ボディランゲージ・アイコンタクト等、聴く人を惹きつけるプレゼンテーションの基本をきっちりと押さえています。
英語教材販売時代の逸話や、部下を持ってからの苦労話も臨場感十分です。世界No2のセールスウーマンの片鱗を垣間見た気がします。
和田さんによれば「営業は人から断られることが仕事」だそうです。だからこそ断られた時に気持ちの切り替えができるかどうかがコアコンピタンスとのこと。
売れない時にメゲない、落ち込まない、前向きに自分を動機づける。テクニックやノウハウよりも、そういった感情制御の能力が最も重要なことだそうです。
和田さんは、そのために「陽転思考」をすることを推奨します。事実はひとつしかないが、考え方は前向きと後ろ向きの二つがあるという前提に立ち、前向きな考え方を選ぼうという思考法のことです。売れなかったという事実はひとつ、でもそれを「これだけ売れないのだから次回は売れるだろう」と前向きに捉えるか「次もきっと売れないのでは」と否定的に理解するか、クヨクヨ悩まず、前向きな方を選択するように心掛ければ、自ずと気持ちは切り替わるというわけです。
私には、良い意味でのセルフマインドコントロールのように聞こえました。気持ちを切り替える技術というのは、スポーツ選手、芸術家、経営者など緊張感の高い世界で生きている卓越したプロフェッショナルが等しく大切にすることですよね。
ブリタニカで最初に営業教材を買ってくれたお客様が言ったという「背中を押してくれてありがとう」という言葉も印象に残るフレーズでした。新しい道を踏み出そうとして躊躇している方に、未来を信じて、少しだけ背中を押してあげる、そんな前向きなお節介こそが営業の使命だと喝破する和田さん。
人を惹きつける、人を動かすことに卓越したその才能は、1年前の夕学で触れた藤巻幸夫さんのパッションに相通ずるものを感じました。営業の世界だけでなく、企業再生・再建のトップとして白羽の矢を立てられる日も近いかもしれませんよ。
和田さんの最新刊「人に好かれる話し方」が木曜日に発売になるそうです。皆さんも是非どうぞ。
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