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松井 道夫 「革命時代の経営哲学」

2005年06月14日

松井道夫 松井証券株式会社 代表取締役社長 >>講師紹介
講演日時:2005年5月11日(水) PM6:30-PM8:30

『夕学五十講』への松井道夫氏登壇は、今回で2回目です。前回の講演は3年前の2002年4月でしたが、当時の業績と比較すると、現在の松井証券の営業収益は3倍、経常利益は7倍に伸びています。この驚異的な成長を主導した松井氏の強烈な個性に直接触れようと、満席となった会場は参加者の熱気に包まれていました。


松井氏は、明確な目標と夢を持っています。直近年度の松井証券の経常利益は226億円、社員数は150人ですので、一人当たりの経常利益は約1億5千万円です。松井氏は、これをなんとか5億円まで伸ばしたいと考えているそうです。一人当たり経常利益がそこまで伸びれば、社員に年俸で1人1億円だって払うことができる。生涯分の収入を手にしたら、社員にはさっさと会社を辞めて好きなことをやって欲しいそうです。これが、松井氏の考える「ハッピーリタイアメント」の夢だそうです。
なぜ、松井氏はこうした夢を語るのか。それは、21世紀は、「組織」ではなく「個」の時代だと考えているからです。学校を出て会社に入り、課長、部長、役員、社長、会長と昇進し、相談役で終わるといった組織を中心とした従来の生き方は古いのです。今は、「働く」ことの意味が変わってしまったのです。松井氏は、組織に縛られない、自由な個人の生き方を尊重したいということなのでしょう。
さて、松井氏は、大学卒業後は日本郵船に入社しました。当時は海運不況のため、必死で働いても赤字が続く時代であり、コスト削減が最大のテーマでした。後に、後継者として松井証券に移りました。今から18年前のことです。バブル絶頂だったその当時、証券業界は莫大な利益を享受しており、コストに対する意識はほとんどないことに松井氏は驚きました。しかし、このような、楽をして儲けることができるような状況がいつまでも続くはずはないと感じていました。案の定、バブル崩壊で一転、証券業界も苦境に陥ります。
そこで、松井氏は、日本郵船時代に身に付けたコスト意識を松井証券に大胆に持ち込みます。当時の証券業界は護送船団方式で、お客さんからもらう手数料はもちろん、あらゆるものが決められていたので、競争というものが全くなかったそうです。しかしいずれ自由化になれば必ずコスト競争になる。そこで生き残るためには、徹底的にコストを見直す必要があると考えたわけです。日夜うるさくセールスしてくる営業マンは、実はお客さんから必要とされていないのではないか、それなのに莫大なコストがかかっているということで、外交セールスを廃止しました。さらに、低コストのサービスが可能となるインターネットの普及を見て、インターネット専業への舵を切ります。そして、手数料の大幅引き下げなど、業界にも波紋を投げかけました。こうした大胆な事業見直しは、社内外に様々な軋轢を生みましたが、松井氏はたじろぐことなく断行し、結果、お客さんから絶大な支持を得たのです。
こうした松井氏の大胆な事業革新の根底にあったのは、顧客第一主義と称した、企業主導の顧客囲い込みはもはや通用しないという思いでした。これからは、顧客が主導権を持つ顧客中心主義でなければならない。すなわち、企業の都合優先の「天動説」ではなく、顧客の都合を最優先する「地動説」を前提として事業を展開すべきであるという信念を持っていたのです。
松井氏の考える、企業の最大のコストは「時代とのギャップ」です。それを縮めようとするのが社長の仕事です。ギャップが広がってきたら社長を代えなければなりません。また松井氏がこれまで社長として決断してきた中で、成功した決断はすべて「捨てる」決断、マイナスの決断でした。反対に加える決断、プラスする決断はほとんど失敗だったそうです。まず過去を捨てなければ、未来を得ることはできないのです。
松井氏によれば、2001年に東証1部に上場してから、松井証券も見事に大企業病にかかってしまったそうです。もっと組織を大きくしましょう、事業の柱を増やしましょう、といった考えが出てきた。松井氏は、顧客中心主義の時代には、こうした「拡散・分散」ではなく、「選択と集中」が事業の基本にあるべきだと考えています。顧客はいいとこ取りをするのです。ワンストップショッピングといった、事業の拡大、総合化を目指すべきではないと考えています。そこで、松井氏は兜町から半蔵門へ自社オフィスを移転する際、賃貸面積を900坪から600坪へと削減しました。社員数もこれ以上増やさないことを社内で明言したそうです。
松井氏は、経営はある意味で芸術的なものだと言います。デジタルも大事だが、それ以上にアナログ的な「感性」も重視しているのです。つまり、組織ではなく個の時代には、「心」を大切にすべきであるということです。また、率直に自分を出すことが、人との信頼関係を作っていく上で必要だと考えているそうです。今回の講演でも、本当にためらいのない、率直な松井氏の思いをお話しいただけたように感じました。

主要図書
おやんなさいよでもつまんないよ』日本短波放送、2001年
かね よりも だ』(共著)、ベストセラーズ、2002年
みんなが西向きゃ俺は東』実業之日本社、2003年

推薦サイト
http://www.matsui.co.jp (松井証券株式会社)

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