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夕学レポート

2008年02月05日

いまこそ日米関係の意味を問い直そう 阿川尚之さん

最新のニュース速報(2/617:00時点)によると、米大統領選の天王山、スーパーチューズデーの結果は、
共和党は、マケインが優位に経ち、党候補の指名が濃厚になる
民主党は、オバマはクリントンを上回る12州を制して勢いを示し、クリントンはニューヨーク州、カリフォルニア州の大票田を押さえ、激戦が継続する
ということになりました。
「このタイミングで結果予想をして、もし外れたら大恥をかきますね」
と苦笑しながら、披露してくれた、阿川先生の直前予想とほぼ一致しました(笑)
共和党は、ほぼ決まったとはいえ、史上稀にみる混戦はまだまだ続き、次の大統領のメドは、11月の本選挙ギリギリまで見えてこないのかもしれません。


ここまで混戦になった理由を、阿川先生は「アメリカが将来像を模索しているからだ」と分析しています。
レーガンからははじまった30年近い保守化の流れが、イラク戦争のつまずきで混迷期を迎え、保守かリベラルかというイデオロギー的な二項対立に疲れてしまったという見立てです。
オバマの「ひとつのアメリカ」演説が受けるのは、中道的な道を示してくれる新しいリーダーに託したいという、アメリカ国民の心境の表れではないのかと阿川先生は見ているそうです。
さて、本論である日米関係の展望についてです。
阿川先生はブッシュ大統領の8年を振り返ることからはじめました。
8年前、好景気に沸く米国で、伝統的な保守の価値観を語る「古き良き大統領」タイプとして登場したブッシュ氏。就任まもなく直面した9.11テロを皮切りに、イラク戦争に突き進み、激動の時代を過ごすことになりました。
「史上最も苦労した大統領」と言えるだろうとのこと。
ブッシュ氏の苦労とは裏腹に、日米関係だけを切り取ってみれば、歴史上例外的とも言えるほどに良好な時代だったと阿川先生は言います。
そのど真ん中の3年間を在米日本大使館公使として過ごした阿川先生にしてみれば、人生で最も楽しかった時期になるのかもしれません。
その大きな要因は、ブッシュ-小泉の個人的な信頼関係にあったことは明白なことでした。
いち早くテロとも戦いの共鳴し、イラク戦争にも協力を惜しまなかった小泉さんに対して、ブッシュ氏は強い信頼と友情を持ち続けたと言います。
米国の危機が日米の紐帯を強くする。
日米関係は、両国を取り巻く国際関係と反比例の軌跡を描くということでしょうか。
翻っていま、日米関係には陰りがみえはじめました。
「日本もアメリカも内向きになっており、腰を据えた関係構築戦略が立てづらい状況にある」と阿川先生は言います。
北朝鮮、テロ特措法、米軍再編、米国産牛肉等々、両国間に山積する問題も、大きな文脈がみえない中で滞っているのかもしれません。
福田首相がアジア重視政策に転換をしたことも、微妙な陰を落としているとのこと。
また、新しい大統領候補の、日米関係に対する見解は、マケイン、クリントンは関係重視。オバマは未知数で予断を許さない状況だそうです。
阿川先生は、「誰がなんと言うと親米派を貫く」という信念の人なので、これからの日米関係には、心配な事も多いのかもしれません。
だからこそ、転換期にあるいまは、根源的な意味を見直すことが重要だと考えています。
日米は世界のなかで、どのような地位を占め、どんな役割を果たすのか?
日米同盟は、その目的達成にとって不可欠か?
日米にとって、日米同盟の意味は何か?
両国は利益、価値、経験を共有するのか?
日米同盟は、日本・東アジア・世界の安全と平和にとって必要か?
日米安保は世界の公共財か?

それらを問い直すことだそうです。
「互いの危機が紐帯を強くする」という地政学的な関係だけでなく、世界の平和と日米関係が好循環を生み出すような、一歩進んだ関係になるにはどうしたら良のか、そんなことを考えた夜でした。

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